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トキトキメキメキ

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 蓮加は立ち上がって、返事を聞く前にキッチンの冷蔵庫へと歩き始めた。

――●▲■君達ヒーローが悪と闘う異次元空間も同じさ。あれは神様が創り出したフェイクの世界なんだけどね、つまり、その中で、悪、つまりは未来において起こりうる可能性のある悪行や災害や災厄だね、その悪と、ヒーローが闘う。どちらが勝つか、わからない状態が「重ね合わせ」だ。その場合、地球の未来にも、その悪のもたらす、起こる可能性の高い災厄も、起きるか起こらないかが、わからない状態。起こるか起こらないかが、どちらの可能性も含む運命、つまり「重ね合わせ」の状態にあるわけだ■▲●――

 蓮加は鼻歌を歌いながら、冷蔵庫で冷やしておいたスターバックスのメロン・オブ・メロン・フラペチーノを取り出した。
 脳内に響く話は半分だけ聞いている。

――●▲■君達ヒーローが悪に勝利した瞬間に、地球の運命は「量子もつれ」の状態になる。つまり、君達が勝利し、特定の悪が滅んだ、といういち結果に、収束するわけだね。箱の中の夢と同じで、結果はふたを開けるまでわからない……。君達ヒーローが勝つのか、悪が勝ってしまうのかは、赤い異次元空間にしまわれているうちには、わからないという事だ。ねえ聞いてる?■▲●――

 蓮加はソファに寝転がって、リモコンでテレビの電源を入れた。
「てか蓮加……、いつからヒーローやんの?」

――●▲■今日からだよ■▲●――

「ええっ!!」
 蓮歌はソファから飛び起きて、天井を見上げた。
「マジか………。」

――●▲■そうそう、蓮加君。赤い世界に入ったら、悪の出現している世界に入ったという事だよ。そしてね、赤い世界が終わり、風景がいつもの通常の色彩を持つ世界に戻ったら、その時出現した悪が全滅したという証拠だ■▲●――

「ふうん……」

――●▲■悪の出現ポイントから半径二キロ、直径四キロが赤い世界。そして、変身後は、周囲の人間達の時間は静止し、悪から直径二キロにいる人間達は変身を解くまで消えている。だから、民間に被害は出ない。赤い世界が終わった後も、変身を解かない限りは、人のいない、又は、時間の静止した世界のまま。思う存分に、戦うといい■▲●――

「つまり、動いてる奴は、全員が敵、ってわけね」
 蓮加は天井を見上げる。

――●▲■ヒーローも動いてるから、間違わないようにね。まあ、悪の特徴はしっかりと教えるから大丈夫、安心してね■▲●――

「はあ~い」
 蓮加は無表情で片手を上げた。

――●▲■蓮加君。言ってる間についに悪が出現したぞ。君の獲物だ。今君の頭の中に悪の発生ポイントを詳細的に送ったから、場所はわかるね?■▲●――

 蓮加はテレビを消した。服装を気にし始める。
「靴とか、どうして…、てかスニーカーとかでいっか? あ、スキニーから靴まで、ちょっと脚の肌が出てるんだけど、足首んところ……。靴下はいた方がいいのかな? 防御力的に、上がったりするの? 靴下で」

――●▲■靴下なんかどうでもいいからさ、蓮加君、急いでくれたまえ! 敵は君のマンションのすぐ下の公園付近だ……。三人いる。最初の任務である今回の敵は、怪人のようだ。黒いコートを着ているのが怪人だ、蓮加君。戦えるかい?■▲●――

 蓮加は片方の口角を引き上げて、無表情で天井を見つめる。
「戦えるも何も、やらなきゃなんでしょ………」

――●▲■そうさ‼ さあゆけ、僕のヒーロー蓮加マン‼‼■▲●――

 蓮加はベランダへと出て、「変身」と唱えた。――次の瞬間、岩本蓮加の身体をプラズマのような白い発光体が帯状に巻きつき、一瞬ではがれて消えたと認識し終えた時には、蓮加の視界に広がる世界が、真っ赤な景色に染まっていた……。
「あっかぁ……、なにこれ、地獄ぅ?」

――●▲■蓮加君、それが赤い異次元空間だ。君は悪の出現した世界に見事入り込む事に成功したんだよ。そして、僕は少し通信ができなくなる。どうやら夕ご飯の時間みたいだ。じゃあね、がんばってね■▲●――

「おいそんなのある? おぉい!!」
 蓮加は、ふっ――とスイッチが切り替わったかのように冷静になる――。背中に四角いバッグを背負っている事を手探りで確認した。そこから、後ろ手で器用に拳銃を取り出した。
 拳銃を右手に持ち、蓮加はベランダの柵に上り、そのまま、倒れ込むようにして下へと落下する……。
 走馬灯(そうまとう)のように、拳銃の使い方や、弾の補充の仕方を思い出していく……。
 怪人は三人。
 やるしかない。
 やらねば、夢は叶わない。
 負ければ、地球が危うい。
 というか、負ければ死ぬだろう。
 ならば、
 撃つべし――。
 ドカン――。と、地響きを立ててアスファルトへと着地した蓮加は、すぐに超越的なジャンプ力で、公園のある道路まで、マンションの植木の木々を跳び越えて跳躍した。
 研ぎ澄まされた視線で周囲の状況を鋭く観察する。
 小さな緑地公園のベンチの上に、片脚を乗せた怪人が一人と……、南西の方角の路地に怪人が一人いる……。どちらも黒いコートを羽織っている。
残りの一人は、おびき出すか。
 冷静沈着にそう思考しながら、緑地公園の入り口のアーチの上に着地した蓮加は、しゃがみ込んだその体勢のまま、右手の拳銃を伸ばして構えた。
 黒いコートの怪人はこちらに気づいていない。
 蓮加は気配を消していた――。卓越した集中力で、標的(ターゲット)を定めた……。
 ダンダダダンッ――と、連射された銃弾は、十八メートルは離れている黒いコートの怪人に全弾命中した。

「オッ……グお……」

 蓮加はアーチから飛び降りた。
「まだ生きてるな……」
 次の瞬間、超人的な脚力で駆け出し、ベンチの前に倒れ込んでいる怪人の背中の上に立った。
 蓮加は無言で拳銃を下へと構える。
 ダンダンダンッ――と、超至近距離で、黒いコートの長い髪の怪人へと三発、銃弾を撃ち込んだ。
 怪人は動かなくなった……。
「あと二人……」
 蓮加は、その時に響いた何者かの絶叫に、ふと南西の路地があった方角を見つめた。
 緑地公園へと続く細い一通道路の方だった。
 蓮加は動かなくなった怪人の背から下りて、夕闇に包まれている暗い園内をゆっくりと歩き、緑地公園の出口へと向かう。
 また、別の方角から、何者かの断末魔のような悲鳴が聞こえた……。
 緑地公園の出入り口のアーチをくぐろうとした時、今度は三回目となる何者かの断末魔が耳に飛び込んできた……。
 次の瞬間、真っ赤だった景色が、通常の世界の景色へと変わった――。
「え……、敵が全滅したの?」
 蓮加は咄嗟の判断で、その場から大きく飛び退いた……。
 投石――。誰かが石を投げつけてきたのだと瞬間的に理解する。その石は道路を挟んで向こう側にあるマンションの外壁を破壊している。破壊力的にはもう投石ではないが、石が飛んでいるのを蓮加の超絶視力は確かに確認していた。
 蓮加は驚きながら、その方向を眺める。
 黒いコートを羽織った長髪の怪人が、よろよろと立ち上がり、こちらへと歩いてきていた。
作品名:トキトキメキメキ 作家名:タンポポ