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トキトキメキメキ

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 ミノタウロスの攻撃から身をずらすようにして後方へとジェット噴射で逃れた佐藤楓は、そのまま梅澤美波の立つ場所まで飛ぶ。
 ミノタウロスは久保史緒里にターゲットを絞った様子であった。その牛の口から大量の涎が垂れだし、赤い寒空の下、その獰猛な息は荒く白く染まっている……。
 久保史緒里は、赤い布を右側に広げ、ミノタウロスを睨みつけた。
「怖くない……、ううう怖くなぁい‼ …何でも来い、全部よけてやるから……、牛野郎なんか恐くなぁあぁい‼‼」
 梅澤美波は佐藤楓に説明し終えると、空間に〈空扉〉を創り、佐藤楓に片手を向けたまま、息を潜めてミノタウロスを凝視していた。
 久保史緒里は一撃、一撃が重厚な重さを持つミノタウロスの攻撃を、一流の闘牛士のような身のこなしで全てよけきっている。
 梅澤美波は、拾い上げた石をミノタウロスへと投げつけた。
 石はミノタウロスの頭部にぶつかり、地面へと転がった……。息を切らすミノタウロスの意識は、完全に久保史緒里だけに絞られていた。
 梅澤美波は〈空扉〉を開き、叫ぶ――。
「出番だよでぇぇん‼‼ 空扉をくぐって、中で開いた扉を信じて全力で攻撃してっ!!」
「え…、あ、わかったぁ!!」
 佐藤楓は〈空扉〉の中へとジェット噴射で飛び込んだ――。青空の空間の中、もう一つ、出口となる扉が開いていた。微かに赤い世界が見える――。
 佐藤楓は、ジェット噴射で飛び込みながら全力で刀を振り下ろす――。
「刻糸牢(こくしろう)ぉぉーーっ‼‼」
 ミノタウロスの頭部の眼前に開かれた〈空扉〉から、佐藤楓の蜘蛛の巣状のバラバラの斬撃が飛び、ミノタウロスの頭部が肉塊のように切り刻まれた――。
 首から上を失った六メートル強もある図体から、血飛沫(ちしぶき)が飛び散った……。
「やった……」梅澤美波は、溜息をついた。
久保史緒里は肉塊と化したミノタウロスの醜(みにく)さに、悲鳴を上げて、気絶する……。
 首を失ったミノタウロスの巨体は、大きな音を立てて、ズウウン、と地に伏せたのだった。
 佐藤楓は、地面へと着地し「ふう」と汗を拭きながら、生身の身体へと戻った。
 梅澤美波は、膝から崩れ落ちている久保史緒里の元へと駆け寄りながら、佐藤楓を険しく振り返った。
「今日最後の任務、本番ってやつがまだあるっ! 気ぃ抜かないで次行くよ‼‼」
 今夜、赤い世界はまだ終わっていない……。

       5

 伊藤理久杏と阪口珠美と中村麗乃をてこずらせているロック鳥は、巨大な白い怪鳥であった――。大きな羽根を広げると40メートルは体長があり、怪力の鍵爪と鋭利な嘴(くちばし)で攻撃してくる。その羽ばたきは怪風を巻き起こし、一枚一枚が巨大な羽根がアスファルトを割ってしまう勢いで礫(つぶて)となって飛んでくるのだ。
 伊藤理久杏は片腕で怪風が巻き起こす砂嵐から眼を守りながら、悔しそうに声を大にして叫ぶ。
「くっそう‼ っ……全体攻撃ばっかしてくんじゃんか‼ これじゃこっちは防ぐばっかで攻撃するタイミングが無いよっ!!」
 阪口珠美は眼を隠しながら、ロック鳥を睨んで言う。
「ちょっとでも隙があれば違うんだけど……うわあっ、……これじゃあ、いつかやられちゃう!!」
 中村麗乃は赤く染まる世界の天を見上げる。
「マスターっ!! ロック鳥の攻略法を、どうか教えていただけないでしょうかっ‼‼ わわ、わああっ‼‼」
 ロック鳥は三人の頭上で、その巨大な羽根を羽ばたかせ、怪風を巻き起こす――。

――●▲■うむ。ロック鳥の起源は明らかになっていないんだけどね、マルコ・ポーロの「東方見聞録(とうほうけんぶんろく)」の中に、『マダガスカルにいた』という記述が残ってる。おそらくは、昔マダガスカルにいた鳥、エピオルニスがモチーフになってるんじゃないかと言われてるよ。昔いた鳥類ね■▲●――

 中村麗乃はロック鳥の攻撃を防ぎながら、驚いた顔を天に向ける。
「エピオルニスってそんなに大きいの?」

――●▲■象くらいかな。ロック鳥は中東の様々な物語に登場するんだけどね、最も有名なのは「千夜一夜物語」のシンドバッドの物語だね……■▲●――

伊藤理久杏は驚いた。
「シンドバッドに出てくんのかい、こいっつ!! 超メジャーじゃんじゃあ、わわ!!」
ロック鳥は奇声を上げて、羽根を羽ばたいた。上空へと高く昇っていく……。

――●▲■シンドバッドが谷底に落ちてしまった時に、巨大な肉を背負ってロック鳥に引き上げてもらうエピソードがある。まあ、狂暴なとこだと、卵を割られた事に激怒して、大岩を船に落として沈没させたエピソードもあるよ……。ロック鳥はね、虚無の悪だ。うん、弱点というか……、弱点は君が作りなよ、珠美君……。君の能力は【才能変化】と【流行(トレンド)】だよ。そして動きを止めるんなら、麗乃君の【心を奪うもの】があるし、弱点に攻撃するんなら理々杏君の【幻獣憑依】があるじゃないか■▲●――

 阪口珠美は「あ、なぁるほど!」と人差し指をぴんとロック鳥へと伸ばすと、【才能変化】の能力を発動させた。
「ん~と、じゃあ~……、電気にめちゃくちゃ弱い水属性になれし‼‼」
 阪口珠美の能力発動で、七割の確率でロック鳥の属性が指定通りの水性生物属性へと変わる……。
 ロック鳥の巨体が一瞬だけ白く発光した。
 阪口珠美は叫ぶ。
「れのちゃん! たのんだ~っ!!」
 中村麗乃は「おうっけえ‼」と叫び返すと、【心を奪うもの】の能力を発動し、ロック鳥と己を一定時間、身動き不能状態にした――。
 中村麗乃は強く眼を瞑って叫ぶ。
「りりあ~~~~んっ‼‼」
「ボォルテッカァァーーっっ‼‼」
 伊藤理々杏の身体中が金色の電撃に包まれ、電光石火の素早さで地面を駆け抜ける――。充分にスピードを味方につけた状態で、身動きを封じられて地面へと墜落してきたロック鳥へと、渾身の体当たりで突撃した――。
 血反吐を吐いたロック鳥に、更に伊藤理々杏は全身にパリパリと静電気を立てて追撃する。
「10万ボルトォォーー‼‼」
 幾重にも分かれる発光した電撃が、伊藤理々杏からロック鳥の全身へと電撃を感電させる――。現在、水生生物の属性と化しているロック鳥には、電撃攻撃は通常時の二倍の効果があった。
「ボルテッカー&アイアンテール‼‼」
 眼にも止まらぬ電光石火の電撃の光芒を残影に残し、出現した鋼鉄の尻尾でロック鳥の嘴(くちばし)を叩き割った。
 奇声を上げるロック鳥は、まだ動けずにいる。中村麗乃の【心を奪うもの】の効果で、身動きだけではなく、その視線さえ中村麗乃以外には向けられずにいた。
 阪口珠美はロック鳥を指差した。
「今の流行りは、自分の心臓を抉(えぐ)り取る事っ‼‼」
 阪口珠美の【流行(トレンド)】の能力で、流行り風邪のように、流行というウィルスに感染したロック鳥は、身動きが取れぬまま、己の心臓を抉り出したくて仕方が無くなる……。
 ロック鳥は高らかに奇声を上げた……。
「いいみたい、解いても……」阪口珠美は、中村麗乃にはにかんだ。「動けるようにしていいと思う……」
「マジ?」中村麗乃は、決心する。「おけ!」
 次の瞬間、ロック鳥と中村麗乃は動きを取り戻した――。
作品名:トキトキメキメキ 作家名:タンポポ