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ドリーム・キャッスル

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 そんな楽しい買い出しの帰り。確か、PM7時頃だったかな。その安いスーパーから美波の家までの道のりには、駅を越して行くの。そこで、そのラッキーは起こりました。
「あ、宝くじじゃん」僕がその小さなボックスを発見したの。小さな小屋に、あの小さな窓口があるやつね。「当たらないかな~」
「当たらないよ~」そう言ったのは美波なんだけどね、まあ、この手の会話はみんなこんな感じだと思う。「絶対当たらないようにできてるんだって」
「買ったことないでしょ?」
「私ない……」
「買わなきゃ絶対に当たらないよ」美波の反応がおかしくって、僕は笑った。「だって僕小学生の時に当たったことあるもん」
「うっそ! ……え? 小学生の時に買ったの?」
「いや、それは親が買ったんだけど、ほら、僕にこすらせてくれたのよ」
「いくら当たったの?」興味津々に美波がきく。僕たちは買い物袋をぶら下げたまま道の端っこで立ち話をしてる。
「300円」
「なんだよ~」
 こんな会話で盛り上がった僕たちは、その宝くじの話題を、2人の共通の話題、オーディションの話題に絡みつけたの。
「いちかばちか、ってところが似てない?」僕が言った。
「ああ~、夢ってのも一緒だね」美波が何とも言えない顔で頷く。この共感は僕たちじゃないとわからない。
 僕たちは少しその話題を話し込んだ。2人ともオーディションを何度も落ちた。夢ってそうなのかもね? オーディションも宝くじも、現実はそう甘くないよ。会話の内容はそんな感じ。
「500円ずつ出し合って、1枚だけ買わない?」僕が言った。
「何、夢を買うの?」美波は軽く笑う。「別にいいよ」
 そうして、僕たちは1枚だけ宝くじを買った。500円で儚い夢を買ったの。しかも、冗談交じりで。
何ヶ月か経ってね、美波が変な電話を僕によこしたのさ。「ちょっと大変!」とか言って、なかなか内容を話そうとしないイライラする電話だった。僕はすぐに携帯にかけ直して、って言って一度電話を切った。今度携帯にかかってきた美波からの電話は、少し落ち着いた様子の電話だった。
 でも、その内容はさっきと段違い。
「5000万、当たってるの……」電話の向こうの美波。
「はいはい」僕はそう言いながら、もう胸は不思議とドキドキしていた。「何、5000円くらい当たってた?」
「そこに新聞、ある?」
「え、ちょっと待ってて……、え? 本当に?」僕はもうすでに驚いていた。
「いいから、持ってきて」
「分かった……」
 僕はすぐに新聞を持ってきたんだけど、電話の向こうで番号を読まれても、こっちは確認のしようがないんだよ。美波が読んだ番号を新聞で確かめるだけだから宝くじを見なきゃわからないじゃない?
「今からそっち行くわ」
「お願い、すぐ来て」美波は怯えてるのよ。もうびっくりしすぎちゃってて。「はぁ~……」
 僕は駅までそのまま美波と電話してたけど、電車が来てからはすぐに電話を切った。
 その電車の中にいる時が一番修羅場だった。オーディションの緊張感とは全然違っていて、もうなんて言っていいか、超絶気持ちがふわふわしてるの。間違いだったら後でショックを受けすぎちゃうから、基本的に間違いのつもりで行こう、とか思ってるのに、頭の中ではすでに欲しかった者たちが「こんにちは」している。
 美波の駅に着いてからはもう猛ダッシュ。上げ底はいてたから、お馬鹿な子に見えたと思う。もう宝くじのことが気になっちゃって、見苦しい走り方をしちゃったわよ。
 美波とは携帯で繋がってたんだけどね、もう僕は「ハア、ハア」言ってるだけで、 美波は美波で携帯を耳につけたまま「ははは」とか笑ってたわ。多分テレビだね。
 美波のマンションに着いた時にはもう汗びっちょりで、くったくた。走ってくる 距離じゃないんだから、それはもう疲れたよ。
「ごめん……、水をおくれ……」
「あ、うん」美波はすぐにキッチンに向かう。「大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ……」僕もリビングに到着。美波のマンションはキッチンとリビングが一緒なのね。「あんたが急かすから、もう急ぎで来たわよ……」
「だってさあ、……ありがと」
  とにかく、ここまで来たらまずは一休み。肺が爆発しそうだったから。宝くじは逃げないからね。
「言いづらいんだけどね……」美波がかしこまって言う。上目遣いでもじもじ。「な無くしちゃったの……」
「はいはい」
 こんなお決まりの冗談も入りつつ、僕は例の問題物を見せてもらった。もちろん、片手には新聞。
「………」
「ね?」僕の顔のすぐ近くで、美波が言う。「そうでしょ? 当たってるでしょう?」
「うわぁーー‼‼」
「やぁっばくなぁ~い?」
「やっばぁ~い‼‼」
 その後の記憶が吹っ飛ぶぐらい騒ぎました。
 本当に、僕たちは5000万円を当てたんです。

       3

 実際に5000万円を目にすると、もう貴族が犯罪者になった気分だね。銀行に受け取りに行った時なんて、僕たちは超怪しい人だったよ。面倒だから一括でもらったの。分割でも大丈夫って言われたんだけど「やっぱりいっぺんに見たいよね?」の一言で一括は決定した。言ったのは美波。
 銀行で受け取り作業が始まってから後悔したよ。まさかそこまで大掛かりだとは思ってもみなかった。僕たちの想像では、個室なんかに呼ばれて「おめでとうございます」って感じだったんだけど、実際は窓口で全部受け取り。周りの視線が怖かったわよ。意外とそのままポンポンもらって帰ってきちゃった。
  帰りはタクシー。もう銀行の前にずっと停めて待っててもらったの。タクシーの生産がぴったり1万円もかかってたけど、僕たちがその時抱えていたバッグには、ふふふ、って感じだったからね。2万円出して「あ、お釣りはいいです」とか意味のわかんないサービスをしちゃったよ。
 美波のマンションに戻った僕たちは、まず、そのバッグをテーブルの上に置いて、お茶を飲んだ。和紅茶ね、気持ちを落ち着けるため。
「はあ……」思わずため息をついてしまう僕。
「ふう……」僕の心境とそっくりの美波。
 こんな感じ。「とりあえず出して並べよっか?」の意味わからない言葉が僕から出るまで、そのため息は続いていた。
4千995万円の山は度迫力だった。札束で頬を叩くっていうあの例のお約束はやらなかった。5000万を部屋中にばらまいて「わっはっは~!」ってやつもやらなかったね。もう、僕たちは感動してた。ブルーなの。超ブルー。
「今日は出前だね……」
「高級寿司だよ……」
 どっちが何を言ったのか、もう忘れ、。
 とにかくその時は僕たちがピザを注文したことだけは覚えてる。お寿司は夜にしようってことになったの。
「どうしよっか……」
「どうする?」
 僕たちが悩んでたのは、そのお金の分配。まあ、使い道ね。
 すぐに決定したのは、お互いの親に1000万円ずつプレゼントしようってこと。受け取り人は美波だったから、僕は実際にそのお金をもらうまではこのことを親に言っていなかった。黙ってたの。
作品名:ドリーム・キャッスル 作家名:タンポポ