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恩送り 飛ぶ鳥・飛鳥―2011~2023―

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 〈レストラン・エレベーター〉とは、地上の一般住宅に扮している〈リリィ・アース〉に近隣する住宅に扮している数軒に連なる住宅が、実は〈リリィ・アース〉と地下の精巧なエレベーターで繋がる専用調理場となっており、24時間あらゆる要求にも応えるべく、常時シェフ達が常備されている。〈リリィ・アース〉の各階と繋がる調理場の地下エレベーターの事を〈レストラン・エレベーター〉といった。
 二千二十三年四月三十日(日)――。今宵PM23時には、乃木坂46四期生の金川紗耶と北川悠理、黒見明香と佐藤璃果、清宮レイと筒井あやめ、田村真佑と賀喜遥香、松尾美佑と弓木奈於が仕事終わりに集まっていた。
 松尾美佑は嬉しそうに話す。
「飛鳥さんって存在が私にとってはずっとずっと遠くて、きっと永遠に話せないし、眼も合わせられないままなんだろうなぁと思ってたんだけど……、でもこのリハ期間に、ちょこっと眼を合わせられる瞬間が増えて……、お話できる隙を見つけては『飛鳥さん今日もいい匂いです!』と伝える事に成功しました。乾杯」
「乾杯、そうなんだよ~、飛鳥さんいい匂いするんだよ~」佐藤璃果は糖質ゼロノンアルカンパリオレンジで乾杯した後、そのままグラスを傾けて喉の奥に炭酸を流した。「リハで飛鳥さんと……。挨拶したいし、聞いておきたい事も沢山あるな~、ああ~、飛鳥さん、最後の最後まで、私達を東京ドームに連れて行って下さって……。なんてキラキラした方なんだろう」
風秋夕はにやける。「璃果ちゃん酔ってる?」
「ノンアルですよ」佐藤璃果は口角を引き上げた。「どう酔えっての?」
風秋夕は微笑む。「ノンアルにも何パーかアルコールって入ってんだよ、ふふん。実際にノンアルで酔う感覚を楽しむ奴はいるし」
「酔ってな~いもん」佐藤璃果は頬をふくらませた。
 〈BARノギー〉の薄暗く広い店内に、アッシャーの『ユー・リマインド・ミー』が流れていた。
 こちらでは弓木奈於は熱弁している。
「飛鳥さんっは、ほんっと、ほんっとに! お優しい方で、あの…ちょおっとぉ、照れ屋さんなところとかもあるんですけどぉ、でも心のお優しい方なんです。奈於はい~っぱい、そんな飛鳥さんに贈りたい心があります、想いがある。あ? 言葉、か? とにかく、いっぱいある。でもダメなの奈於……、どうせ飛鳥さんの近くに行ったら、ダメなの言えないんだよまた……」
 松尾美佑はからあげをフォークで切り分けながら、弓木奈於を一瞥した。
「いや~、リハで会えてるうちに絶対行った方がいいよ。いい匂いするよ」
 弓木奈於ははにかむ。
「いい匂い、ふふちょ~言うじゃん、あでも、そんぐらいいい匂いするよね、飛鳥さんは」
「するのよ~」
「わあっかる。わっかりすぎる」
 金川紗耶は深刻な面持ちでカクテルを呷った。
「……。飛鳥さんにはたくさんの恩を返さないとならないのに、何も買えず事ができず、行動にも移す事ができず、悔いが残らないようにしようと思っても、なぜか顔を見るだけで泣いてしまう……。ほんっとうに、大好きなの、飛鳥さんが」
「俺もだぞやんちゃん! 飛鳥ちゃんの写真集がでたら毎晩離さなねえからな‼‼」
 風秋夕は磯野波平に向けて、ストローからラム・コーク砲を発射した。
「ちめて……、つぅめてぇだろうが馬鹿か!!」
「純粋さが違うの、あんたとやんちゃんとじゃ。黙っとれ!!」
 金川紗耶はまだ俯きながらしゃべっている。
「それでも、飛鳥さんは優しく聞いて下さったり、写真撮って下さったり、素敵な存在です。正直、飛鳥さんがメンバーと仲良くしてるところを、遠くから見ることしかできないのは、私は……。飛鳥さんの幸せそうな顔を見ているだけで充分って思ってましたが、本当はもっともっと話したいです……。もっともっと飛鳥さんの事を知りたいです。おかわり!」
 風秋夕は囁く。
「のび太君、あま~い、柑橘系のカクテル、コリンズでおかわり一つね」
 電脳執事の【野比のび太】が答える。

『うん、わかった。ドラえもぉ~~ん‼‼ あねえ、カクテルおかわりだってさ~~! 僕ちょっと今手が離せなくてぇ~、新作の漫画なんだよ~、ねえドラえも~~ん』

「お前がやるんだよっ‼ 馬鹿者‼‼」風秋夕はそれから落ち着いて、ラム・コークを呑んだ。「リハがあるうちに甘えちゃいなね。やんちゃん」
 姫野あたるは腕組みをして、笑みを浮かべた。
「やんちゃん殿は、初期から飛鳥ちゃん殿推しでござったからなぁ~……。そういうのも、飛鳥ちゃん殿に届くとよいでござるな」
 田村真佑は駅前木葉に笑った。
「え~、飛鳥さんちに? 突然? 来ちゃいました~って!?」
「自宅は知っていますか?」駅前木葉は赤ら顔できいた。
「知らないもん」田村真佑はくすくすと笑う。「それいっちばん嫌がるやつじゃん飛鳥さん」
「ですが、飛鳥ちゃんさんのテリトリーに脚を踏み入れることを躊躇していたら、飛鳥ちゃんさんも一人きりのままですよ。昔、じょうさんとちーちゃんさんが、飛鳥ちゃんさんを強引に遊びに誘うという作戦に出ましたが、結果、飛鳥ちゃんさんは、もう誘わなくて大丈夫ですと笑っていたけれど……、幸せそうに、その行動には感謝している感じでしたね。ああ、じょうさんとは能條愛未ちゃんの事で、ちーちゃんとは今はアナウンサーの斎藤ちはるちゃんの事です」
「ふう~ん、あでも、勢いって大事かも」田村真佑はグラスを持ち上げる。「おかわりイーサン! じゃなくって…、えt-と、のび太君、おかわり!」
 電脳執事が応答する。

『ドォラァえぇもぉぉ~~ん!!』

「だからお前がやれよ馬鹿者ぉぉ‼‼」風秋夕は、首を振って溜息をついた。「のび太、人格をしずかちゃんと変われ」
 電脳執事の人格が【野比のび太】から【源静香】へと代わった。

『はい!』

「まゆたんの。おかわりしてくれる? しずかちゃん」風秋夕は言った。

『りょうかーい!』と元気で素直な返事が返される。

 九十年代風の洋風居酒屋の店内には、サマンサ・マンバの『アイム・ライト・ヒア―』が流れている。
 磯野波平はテレビならモザイクがかかるだろう表情で、電脳執事に言う。
「風呂の途中だろ? へっへ、わりぃなぁしずかちゃんよう、ケツが見えちゃってんぜ?」

『のび太さんのエッチ!!』

「誰がのび太だっつうの!!」磯野波平は、座視で溜息をついた。「ぜんっぜん俺の方がハンサム・イズ・ベストだろうが‼‼ ここのコンピュータ、ほんとに頭良いのかあ?」
賀喜遥香は磯野波平を見る。「なんか、あれみたいよ。ユニーク人格? ユニークスキル? なんだって、ドラえもんの五人は。リクレーション、ていってたかな」
「誰が?」磯野波平はアサヒ・スーパードライを持ちながら言った。
「イナッチ」賀喜遥香は、そう言って稲見瓶を一瞥する。
稲見瓶は、テーブル席のこちらに背中を向けて、カウンター席で北川悠理と会話していた。
 店内にアシャンティの『フーリッシュ』が流れ始める。
「ああ、そうだ。改めてまだ言ってなかったかな。アンダラ完走、おめでとうございます」
「ありがと~~……」北川悠理は快くはにかんだ。「先輩方も同期も後輩ちゃんたちも、みんなかっこよくて可愛くて最高のライブでした」