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恩送り 飛ぶ鳥・飛鳥―2011~2023―

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『そして、久しぶりに皆さんから声援を受けて、いつも以上にキラキラしているメンバーの子達を見て、ああそっか、この子達には、皆さんの声が、とっても必要なんだなと思いました。乃木坂46には、本当に素敵な、才能あふれるメンバーがたくさんいますが。やっぱり皆さんの声が無いと、それは外には届かないと思っているので、これからもどうか、皆さんのその声で、私達の後輩をどんどんどんどん押し上げていってほしいなと思っています』

 沸き上がった盛大なる拍手に、齋藤飛鳥は笑顔で小さく一礼をした。

『ありがとうございます――。まだまだ、乃木坂には、伸び盛りの、魅力がたっぷりあるメンバーがたくさんいますので、どうか、こんなに可愛い子供達を、とっても、おっきいおきい世界に、乃木坂46を連れて行っていただけたらなと思っています』

 齋藤飛鳥の背後に並び立つ乃木坂46が、霞のような白い靄の中から姿を現し始めた――。

『これからも、乃木坂46のことをよろしくお願いします――』

 盛大なる拍手が鳴り響き――。背後に整列する乃木坂46へと、齋藤飛鳥は振り返った。

『そして……、』

 乃木坂46と向き合い、言葉に詰まる齋藤飛鳥の背中に、がんばれ――と、齋藤飛鳥を支え続けたファンという名の勇士達の大歓声が上がる……。

『乃木坂をよろしくね……』

 拍手喝采が起きる――。

『ええそれでは、次は……、この曲を一緒に歌わせてもらいたいなと思います。それでは聴いて下さい。人は夢を二度見る』

 ざわめきを開始として、巨大な大大大歓声が上がった――。

 『人は二度夢を見る』が齋藤飛鳥と山下美月、久保史緒里のトリプルセンターで始まった――。
 銀河系の宇宙空間を映像化したような光の粒子が遡上するバックスクリーンに、齋藤飛鳥からのメッセージが浮かび上がっていく……。


 これからの乃木坂
 とっても楽しみ!
 それなりに大切なことも
 もちろんあるとは思うんだけど大丈夫!
 しんどいときは まわりを頼ろう
 とにかく頼って甘えまくろう
 支えてくれる人 案外 身近にいる!
 ひとりじゃないんだし 絶対に絶対に
 いつかどこかで誰かが助けてくれる!
 だってそれが 乃木坂だもん
        さいとうあすか


 『帰り道は遠回りしたくなる』が齋藤飛鳥のセンターで始まった――。西野七瀬の残したこの名曲のセンターというバトンを、齋藤飛鳥の最後が受け取る。バックスクリーンには、齋藤飛鳥とメンバー達の記念写真が映し出されていく。

 姫野あたるは、拝むように、その光景に感謝を記すかのように手を組む。


 飛鳥ちゃん殿……。いいや、飛鳥ちゃん……。小生は、いいや。僕は……。
 1人だと悟った時、とてもとても、寂しかった……。
 暗い夜ののような日々が永く永く続き、僕はとうとう、命を終えようと考えたんだ。
 でも、かっこ悪いけれど……。僕は、生きていたかった。
 この世の中が、とてもとても、大好きで、一度たりとも、嫌いになれなかったから。
 僕を毛嫌いして徹底的に無視する学校の生徒たちも、いじめをする生徒たちも、それを知っても見ぬふり、知らぬふりを決め込む先生たちも、僕が知ってる限り、どこかでは優しく笑っていた。
 僕は、人の中の、そんな温かな真ん中の心だけを、見つめていこうと心に決めたんだ。
 だけど、現実は残酷でね。僕は、友達のいない自分に、お小遣いをもらったことのない自分に、一日中、一言もしゃべる時間が無い自分に、親のいない夜に、僕を嫌う妹に、自分で自分の髪を切る習慣に、登校拒否をする自分に、とうとう、家から一歩も出られなくなった自分に、愛の無い日々に、潰されそうになってしまった。
 そんな時だった……。
 君が、僕の手を強く掴んでこう言った。
 乃木坂46です――と。

 姫野あたるは、顔面をゆがめて、涙を手のはらでふき続けながら、まぬけのように声を出して、唸るように泣いた。

 応援して下さい――と、君はそう言った。
 死ぬほど、心の奥底から手が出るほど、欲しかった言葉だった。
 好きになっても、いいのか……。
 誰も好きになっちゃいけない人生。嫌われ者の人生。嫌われて当たり前の僕。
 そんな僕に、好きになってもいいと、君は僕に微笑んだ。
 何度も何度も確認した。
 涙が溢れてきて、心がじわっと熱くはじけていく……。
 恋をしたんだ……。そして、時が経ち、やがてそれが、愛だとわかった。
 飛鳥ちゃん、君の名を呼んだ僕の時間は、永遠に、僕の誇りなんだ。
 君と出逢えて、好きになれて、好きなまま、いさせてくれて……。
 僕の人生は変わったよ――。
 上手になんてとうてい言えやしないけれど、僕の心が、君が乃木坂である今日の時間の中で、伝えたがっている言葉がある。
 本当は、たくさんあるよ。
 だけど、1つにしておくね。
 それじゃあ、
やっぱり、
これしかないや。

「あぁぁりがどぉぉぉうぅぅ……、飛鳥ぢゃぁん、んくぅ……、ありがどう、っ、で、ござるぅぅ‼‼」
 姫野あたるは深く強く、ぎゅっと眼を閉じて、その温かな涙を頬に流していく……。


 『サヨナラの意味』が始まった――。橋本奈々未の残したこの伝説的な楽曲センターのタスキを、齋藤飛鳥の最後が受け取った。齋藤飛鳥に、寄り添い、代わり代わり、入れ替わっていくメンバー達。壮大な夕焼けを背景に、エモーショナルに染まり果てた乃木坂46……。
 グリーンのサイリュウム一色の会場……。
 オーディエンスからの拍手喝采――。

 宮間兎亜は鼻水をすすり上げながら、齋藤飛鳥へと手を伸ばした……。


 あたいは家出をして、幾度も過ちを犯したわ……。生きていくためによ……。
 強く生きるために必要だったぶん、あたいは悪さもした。悪さを自然と学んだわ。
 だけど、いつからか、それは自分と合わないんじゃないかと、そう思い始めたの。
 あんたを知ったからよ……。
 あたいは弱い自分を隠すように、強い自分で生きていた。だけど、それは脆い自分を壊していくような作業で、とてもじゃないけど、あたいみたいな弱者が歩んでいいような道のりじゃなかった。
 どうしようもなく、来た道をひきずりながら、行ったり来たりを繰り返していたあたいに、あんたは……。
あんたは……、泣くのを嫌がるそぶりを見せたの。何度も、何度も、見てきたわ……。
泣くのが日常茶飯事で、それしかできないでいるあたいは、本当の強さで生きている飛鳥ちゃんを見つけたのよ。
なんとなく買ったCDで。
なんとなくできた推しだった。
けど、それが全てになった……。
あんたは、あたいのうわっつらの強さを、引きはがしたのよ。
 強がって、なんでもやった。陰で泣きながら、弱さを隠しながら。
 あんたは、いつだってつんとしていて、でれで、とてつもなく魅力的だった。
 まっすぐ生きてる奴が、どうどうと強がって、ちょこっと泣くから、惹かれるんだと思った。人間らしいんだと思った。それが何よりも魅力的だと思った。あたいの母親がそうだったみたいに……。
 まっすぐ、陽の下で、強がってやろうと、腹に決めたの。
 あんたの笑顔に、誓ったのよ――。