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恩送り 飛ぶ鳥・飛鳥―2011~2023―

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 間奏中、あれから泣いたままの与田祐希の頭に、齋藤飛鳥は、優しく穏やかなキスをした――。与田祐希の頭に、小さな唇を当て、与田祐希のことを優しく抱きしめた。与田祐希は更に泣き崩れる……。

 11年間、本当にお疲れ様でした――。
 飛鳥さんずっと、幸せでいて下さい――。ありがとう――。
 皆さん本当に、ありがとうございました――。伝統である深い一礼をみせた乃木坂46は、会場に集まった幸運の持ち主であるオーディエンスへと大きく大きく手を振り、帰っていく。

 ステージに残った齋藤飛鳥は、幸せそうな微笑みを浮かべて、オーディエンスと改めて向き合った。

『皆さん本当にありがとうございました。昨日も今日も、平日なのに、がんばって来て下さったり観て下さったり、本当にありがとうございます――。11年、がんばって良かったというか、別になんも私のおかげではないんですが、最後にこんな景色を見られて、もう人生大満足です。本当にありがとうございます』

『では私は……、これで……、天使ちゃんになって、皆さんの元を去ろうと思いますが、私は、明日で卒業? いや、今日で卒業なので、明日からは、恋とかもするかもしれませんね』

 悪戯に微笑んだ齋藤飛鳥へと、大大大歓声が湧く――。

『ねえ! お前らのぉ、誰かの嫁が、飛鳥になるかもしれませんねえ!』

 大大大歓声が応える――。
 齋藤飛鳥は笑っていた。

『俺の嫁ですね!!』

 大大大歓声――。

『じゃあ! さよなら‼‼』

 齋藤飛鳥は、東京ドームに集った幸運的な運命のファン達に手を振る――。

『ありがとう~!』

 そのまま、背に大きな羽根をはやした齋藤飛鳥は、ゴンドラに乗って、高くへと昇っていく。

『ありがとう~、ありがとう=、すごい、上からだから、めちゃくちゃよく見える~! ありがとうみんな~! 端っこも後ろも、上の方も、全部ありがとう! ありがとう~‼』

 天使の羽根を背中に宿して、齋藤飛鳥は空を飛んでいく――。
オーディエンスが、メッセージボードをかかげる。

 そこには『いってらっしゃい』の文字が綴られていた……。
 齋藤飛鳥は、最後、涙を浮かべながら『またね――』と、そのステージから見えなくなっていった――。

 終焉のアナウンスが流れる中、オーディエンスの着火しままの魂、東京ドームの躍動は止まらない――。
 齋藤飛鳥の名を叫ぶもの。乃木坂46コールを叫ぶもの。クラップするもの。
 アナウンスが聞こえない状態が続いた……。

「ありがとう皆さん」

 齋藤飛鳥が再登場した。

「ほんとにありがと、端から端まで、ありがとう」

 笑顔で「ほんとにありがとう」を繰り返し、齋藤飛鳥は、また最後、伝統である深い一礼をみせた。
齋藤飛鳥らしい軽快なトークと、爽やかな「ありがとう」「またね」「おやすみ」「ありがとうございました」を最後の贈り物として残して、齋藤飛鳥は、乃木坂46としての約12年間に偉大な幕を下ろした。


      エピローグ


 梅雨入り前の低気圧が珍しくもなくなってきた頃、齋藤飛鳥は〈リリィ・アース〉の地下十階の〈プラネタリウム・パーティー会場〉に招待されていた。ドレスコードの指示があったが、彼女は今夜、私服でパーティー会場へと登場した。
今宵招かれている招待客は、乃木坂46やOG、乃木坂46プロデューサーの秋元康先生や、小室哲哉氏、〈乃木坂46合同会社〉代表の今野義雄氏やその職員達。〈KeyHolder〉代表の大出悠史氏やその職員達。〈ゼスト〉代表の高田裕充氏やその職員達。〈allfuz〉代表の勝憲司氏やその職員達。〈A.M.Entertainment〉代表の村山隆弘氏やその職員達。〈FA Project〉代表の倉田将志氏やその職員達。〈UNITED PRODUCTIONS〉代表の森田篤氏やその職員達。〈ノース・リバー〉代表の北川謙二氏やその職員達。〈ソニー・ミュージックエンタテイメント〉代表の村松俊亮氏やその職員達。などなど、そして各業界の英雄達である。
 150名のプラネタリウム・専用シートが並ぶ観覧席を背景に、豪華絢爛な御馳走が並ぶ大型のサークル上の円卓(えんたく)テーブルが、460卓用意されている――。テーブル一卓において、クッションの利いた装飾の施された椅子は、十二脚用意されていた。
 秋元康先生が、マイクを通して、会場にてまだ立席で会話を楽しんでいた招待客に齋藤飛鳥の来場を告げた。
 スポットライトが当てられて、齋藤飛鳥は「はあ」と溜息をついてから、「どこ? どこ行けばいいの?」と笑顔で辺りを見回した。


スペシャルサンクス・乃木坂46合同会社


 秋元康先生は、自身も小室哲哉氏のいるサークル席に着席しながら、「好きなところに座りな。じゃ、皆さん、着席していただけますか」とマイクを続ける。「あれ、今野しゃべる?」
 今野義雄氏は、苦笑して両腕でバッテンを作った。
 秋元康先生は、「じゃあね、今日は、ま。齋藤飛鳥の為にお集まりいただいて、感謝しております。彼女の、今後のね、未来といいますか、次のステージへの挑戦と、乃木坂46としての功績を植福致しまして、ただいまから、乾杯の音頭をおとらせていただきたいと思います。こういうの苦手なんだよ……」

「じゃあ、飛鳥、卒業おめでとう」

 齋藤飛鳥は美しく苦笑して、低く一礼した。
 パーティー会場が、グラスをかかげる。
 秋元康先生は、マイクを口から外して言う。

「かんぱい!」

『かんぱい‼‼‼』

 大きな祝福の声が重なり合い、喜びのアルコールが歴戦の勇者達の喉の奥に流れていく。
 齋藤飛鳥も、シャンパンかスパークリング・ワインなのかもわからずに、帽子が印象的なボーイから大きめのワイングラスに注がれた光る液体を、ごくん、と呑み込んだ。


スペシャルサンクス・秋元康先生


 カルティエの焦げ茶色の細いストライプの入った上品な黒のスーツを着込んだ風秋夕は、グラスを手に持って、齋藤飛鳥の元へと、さっそく軽い足取りで歩き始める。その長い頭髪には、珍しくジェルがつけられていた。
 ハマ・オカモトはビールジョッキを片手に〈ハマスカ放送部〉のスタッフ達と笑い声を上げていた。
 風秋夕に連れられた齋藤飛鳥は、グラスを片手に、ハマ・オカモトに照れくさそうな挨拶と、出席へのお礼を口にした。
「おお、飛鳥さん……。それ私服?」
「うん、はい、私服です」
「衣装と全く同じ感じじゃん……。俺これ、どっかで撮ってんのかと思った」
「ふっふっふ、撮ってません」
 風秋夕もはにかむ。
「ハマさん初めまして、風秋です、説明があった通り、この秘密の花園の、オーナーです」
「どうも、あ、初めまして……」
「ここは、秘密の場所なので、それを約束として、今度からいつでも遊びにいらっしゃって下さい。オカモトズの大ファンなんです、俺」
「ああ、ありがとございます。飛鳥さん……、こんなとこにいたんだぁ……」
 齋藤飛鳥はくしゅ、と小悪魔のように美しく笑った。


スペシャルサンクス・今野義雄氏


 風秋夕に連れられて、齋藤飛鳥はバナナマンの設楽修氏と日村勇紀氏の座る円卓へと移動した。