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恩送り 飛ぶ鳥・飛鳥―2011~2023―

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 『ここにはないもの』が遠藤さくらのセンターで歌われる。受け継がれたまだ真新しいこの情熱の結晶を、遠藤さくらは深く受け止め、涙を浮かべたのだろう。バックスクリーンには、かつてのエース、齋藤飛鳥の舞い踊る姿が映し出されている……。
 映像の中で、齋藤飛鳥は、遠藤さくらの頭をなでていた……。
バックスクリーンには、舞い踊る遠藤さくらの姿が映し出されている――。
乃木坂46は、思いを継承する形で、時を動かしたのだ――。

 ありがとうございます――から、キャプテンの秋元真夏が代表して一年の思い出を語っていく。
 田村真佑はユニット曲を頂いた事が嬉しかったと語る。『与田さんの事を祐希ちゃんと呼べそう』――。ユニット曲で共になったメンバーと、かなり親交が深まったと、そう自分では感じていると微笑ましいトークを繰り広げた。
 岩本蓮加は、日産ライブを辛かったと、思い出深いと語る。雨も、やはり乃木坂だなと思ったと。そんな事もどうでもよくなるぐらいに、素晴らしいライブであったとも語った。
 秋元真夏は、みんなの為に出来る事は無いかなと、模索した一年だったと語る。梅澤美波は偉大なキャプテン秋元真夏からもらったものは一生忘れないと微笑んだ。
 秋元真夏が『ここにはないもの』のセンターを受け継いだ遠藤さくらに、齋藤飛鳥にも届いていると思いますと語ると、今も尚、涙に濡れている遠藤さくらの顔がVTRに大きく印象的に映った。

 ナレーションがここまでの20位から10位までを振り返る――。
 ここからはトップ10――。

第10位『僕は僕を好きになる』が山下美月のセンターで開始される――。深すぎるその歌詞に、胸を打つそのメロディに、記憶に焼きつくそのダンスに、ファンは魂を洗われる……。
 第9位『サヨナラの意味』が秋元真夏のセンターで歌われる――。かつて人気楽曲で第一位を獲得した事のあるこの名曲は、今のこの時代にも尚、深い爪痕を残していく。
 楽曲が終了すると、盛大な拍手が鳴った……。
 第8位『価値あるもの』が久保史緒里のセンターで開始する――。王族のサンタクロースのような金の刺繍の入った紅いドレスを身に纏って、久保史緒里、賀喜遥香、遠藤さくら、中村麗乃、佐藤璃果、柴田柚菜、金川紗耶、北川悠理、の八人がこの名曲を歌う。それはささやかなる優しさに溢れたファン心理の詰まる楽曲であった。
 第7位『全部 夢のまま』が与田祐希のセンターで始まる。フロントを飾る三人は、与田祐希、筒井あやめ、柴田柚菜、の三人である。可愛いのトップを飾るフロント三人の率いる乃木坂46は、尊い以外の何物でもなかった。
 第6位『やさしさとは』が5期生によって現代にどうどうと鳴り響く……。センターは井上和である。フロントは井上和、川﨑桜、菅原咲月の三人であった。やさしさとは、その命題にふと思いを巡らせてしまう楽曲であった。
 第5位『僕が手を叩く方へ』が久保史緒里のセンターで始まった――。中盤で、歌唱するメンバーと共に、会場のオーディエンスはクラップを開始する……。がんばれと、そう背を押し鼓舞してくれる楽曲は、一体この世に幾つぐらいあるだろうか。
 4期生は座りながら、指を鳴らして歌い始める……。
 第4位『アイ・シー』が賀喜遥香の盛大なる『横アリ、行くぞ~~‼‼ そんなもんじゃねぇだぁろ~~‼ もっといけんだろぉ‼‼』という煽りから開始される――。それに全力で応えるオーディエンス。会場のボルテージはマックスにまで引き上がる。花柄に青いストライプの衣装と、花柄に赤いストライプの衣装を着飾って、バックスクリーンに打ち上げ花火が打ち上る。

 ナレーションはVTRで語る。賀喜遥香は、ライブが好きだと語る……。心に残るようなパフォーマンスをできたらと、いつの時も胸に秘めていると語った。
 寄り添ってくれた楽曲、そんな曲が、この後にランクインしている。
 賀喜遥香は語る。――その時の先輩達の背中をめちゃくちゃ覚えているし。納得だな、と思う。

 第3位『帰り道は遠回りしたくなる』が遠藤さくらのセンターで始まる――。盛大なコールに呼応(こおう)するかのような、テンションを爆上げするパフォーマンスと軽快なメロディを囀(さえず)る歌声――。儚き遠藤さくらの表情が、あの頃の西野七瀬を彷彿とさせた。
 創作ダンスを魅せる乃木坂46……。
 第2位『ありがちな恋愛』が山下美月と賀喜遥香のWセンターで始まった――。いつか、齋藤飛鳥が二番のサビの歌詞が一番好きだと語ったこの楽曲が、ファンの好きが集った楽曲ランキングの第2位を飾る……。
 スモークの立ち昇る暗闇の中、白いスポットライトを浴びて踊り続ける彼女達に、オーディエンスの盛大な歓声が上がる……。

 ナレーションは語る。井上和はその時その時をがんばっていて、それを支えてくれる楽曲だと語った。遠藤さくらは、やっぱりなと語る。与田祐希は初心に帰る楽曲だと語り、山下美月は、この曲を聴くと乃木坂に入って良かったなと思うと語る。久保史緒里はこの曲ほど、グループの節目を見てきた楽曲はないと語った。

 ナレーションは第10位から第2位までを振り返る――。

 二千二十三年二月二十二日、総じて255曲も存在する幾数の楽曲の中から選ばれた、ファンの想う第一位の楽曲は――。
ファン投票、第1位――。

 あの曲が、一番、聴きたい――。

 乃木坂46人気投票、第1位。『きっかけ』――が、乃木坂46の象徴として、現在を走る乃木坂46によって、歌われる――。
 歴史を思わせる、一人一人が異なる歴代の衣装を着飾って……。バックスクリーンにその歴代の楽曲のタイトルが映る……。
 流れ星が音を立てて降り注ぎ、やがて大宇宙が浮かび上がった。幾つも流れ星が流れ落ちる中、乃木坂46は乃木坂46である使命を全うするかのように、美しく、華やかに、淑やかに、煌びやかに、そして儚く、『きっかけ』を歌い終えた――。

「さいっこうの、ライブだったな……。ふうい!」風秋夕は、稲見瓶に笑った。
「いつも最高」稲見瓶は無表情で立てた親指を風秋夕に見せた。
「感動すっぜ……。くう、うう」磯野波平は腕で顔を隠す。
「ああ、こんな時間が、永遠に続きますように――で、ござるよ」祈りを込めた姫野あたるの瞼(まぶた)から、涙がぽろりとおっこちた。
「やべえやべえ、泣いちゃうぜ~~、うお、な、泣ぐ‼‼」天野川雅樂は、必死で涙を我慢する。
「あははは、泣けよ~」来栖栗鼠は笑った。
「また、記憶に新しい大切な思い出ができました。ありがとう、皆さん……」駅前木葉は、深い一礼をした。
「感動するのよね~、このライブの感動だけは、映画とも漫画とも違う、なんていうのか、身体から湧き上がってくものなのよね~~」宮間兎亜は涙をぬぐい取りながら囁いた。
「命懸けの、ステージだからですわ」御輿咲希は凛々しく涙をぬぐう。「11年ですか……」
「ありがとう」そう、声を消して、比鐘蒼空は頭を下げた。