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恩送り 飛ぶ鳥・飛鳥―2011~2023―

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「五期生は、もうなんだか完成してるよね」稲見瓶は、隣の席に座る、風秋夕を一瞥して呟いた。「ああいうグループなんだと、そう認識すれば、少しも可笑しくないし、大物としてどうどうともしてるし、初々しくもある……。なんだか、新しい乃木坂、て感じだね」
 風秋夕はクリアアサヒを握りしめながら、口元を引き上げた。
「五期も一年だよ……。一年間、乃木坂として早くに色んな経験を積んだ五期生は、そりゃもう立派な乃木坂だよ」
 巨大スクリーンには、時折、乃木坂46のコンテンツなどを紹介したCMが流れる。その他としては、ロゴ入りの白い画面がフリーズしていた。絶えず乃木坂46のインストが流れてきている。
 磯野波平はおっさんの声で、優しく言う。
「のび太」

 電脳執事の【野比のび太】が応答する。
『なにぃ? パパ』

「があ~はっはっ!‼」磯野波平は大笑いする。「こいつものまねに反応すんぞ‼‼ おいのび太、ジャイアンの奴、なんとかしろよドラえもんの道具かなんかで」

『ど、どど、どうにかしろって……、あのジャイアンをぉ?』

 磯野波平は更に大笑いする。
 風秋夕は座視で磯野波平を見つめている。
「そういうのでおおはしゃぎすんのは、赤ちゃんか子供だけだぞ……」
 稲見瓶は姫野あたるに言う。
「夏男さんは、もう秋田に帰っちゃったの?」
 姫野あたるは訝(いぶか)しげに首をひねった。
「さあ……。夏男殿は、ダイアモンドパレスという、元サファイア・タワーであった場所にある、巨大な建造物の中に、東京に住まう時の自分の部屋があると言っていたでござるからして………。この大雪の時期には、まだ秋田には帰らぬのではないでござろうか」
「そう、だね」稲見瓶はコーラを飲んだ。「というか、ダイアモンド・パレスを知らないような言い草だったけど、知らないの? ダイアモンド・パレスは世界的に有名な建造物で、港区に建つ巨大テーマパークだけど……。まあ、遊園地とかの類(たぐい)じゃなく、買い物や食事や宿泊や観光を楽しむ場所だけどね。六本木で言うところの、ヒルズのような」
姫野あたるは難しい表情で腕を組んだ。
「いやあ、小生、行った事も見た事もないのでござるよ……。聞いた事はもちろんあるんでござるけど……」
 稲見瓶は無表情で言う。
「ダイアモンド・パレスのオーナーは、ファースト・コンタクトCEOの風秋遊(ふあきゆう)氏だよ。夕のお父さんだね」
「なんとっっ‼‼」
 御輿咲希はスーパードライを、宮間兎亜の持つクリアアサヒに軽くぶつけた。
「乾杯……。いやね、わたくしったら、何回乾杯すれば気が済むのかしら、んふ」
 宮間兎亜はごくごくとクリアアサヒを吞み込んでいく。
「ぷはあ………。い~のよ乾杯しましょうよ、めでたいんだから~ん。開演まであと17分間ぐらいよ、ちょうど。アルコール入れとこ」
「そうですね、恥を捨て、悔いの無いよう応援いたしますわ」
 駅前木葉は比鐘蒼空に微笑んだ。
「もうすぐ開演ですね……。比鐘さんは、大人しい方なんですね、普段は何をしていらっしゃる方なんですか?」
 比鐘蒼空は駅前木葉の美しさに、恐縮して答える。
「おいらは……、乃木オタ、それ以外は、書店の定員です。バイトルで見つけたアルバイトをしてます……」
「バイトルで」
「はい……」
「五期生も、箱推しの方ですか?」
「はい」比鐘蒼空は、うっすらと笑みを浮かべた。「五期も乃木も、基本箱推しです……。ただ、神推しがいて、なぁちゃんと、まっちゅんが、神推しです」
「そうなんですね」駅前木葉ははにかんだ。「今日は、五期生のパフォーマンスを存分に楽しみましょうね」
「はい」
 来栖栗鼠はアップルジュースを飲み干した。
「ぷあ~……。天野川さぁ~ん、どうするぅ、五期生の誰かが泣いちゃったら~」
 天野川雅樂は鼻を鳴らした。
「そんときゃあ、俺も一緒に泣く……。そういうもんだろ、繋がり、てよ……」
 来栖栗鼠は大きくはにかんだ。
「今日は五期生の新しい姿が見られそうだね~、きっといつか、伝説になるんだね。今日という日の、この時間が!」
 風秋夕は左手首に巻いた愛時計のヨットマスターで、現在の時刻を確認する。
「さあ、いよいよ開演だ……。みんな! 今日は楽しんじゃおうぜ! 五期生の新しい魅力、発見しまくろう!」

 五百城茉央と小川彩が影ナレを開始すると、オーディエンスの大きな『はい!』が呼応した。『盛り上がる準備できてますか~? 五期生のフレッシュなパワーで今日は盛り上げていきたいと思いま~す‼‼』という煽りには、オーディエンスのパワフルな歓声が湧いた。
 会場に紫色のスポットライトが幾つも点灯し、会場は歓声と拍手が度々巻き起こっている。
 暗闇になると、オーバーチャーがかかり、オーディエンスのコールが封を切ったかのように一斉に始まった――。
 交差するフラッシュライト。飛び交うスポットライト。
 『絶望の一秒前』がコーラスと共に静かに始まった――。一列に並び立ち、バックスクリーンが光る。そこに、5期生の名前が浮かび上がっていく……。センターを井上和として、5期生はこの5期生代表曲でライブを開始した――。
 手拍子と歓声が自然発生する……。
 『ジコチューで行こう!』が菅原咲月のセンターで始まる――。会場中に広がりを見せて、これを全員で歌う。菅原咲月と井上和が間奏中に楽し気に会場を煽りながら会話し、会場は一気にボルテージを上げる。
 『君に叱られた』が奥田いろはのセンターで始まる――。奥田いろはが煽る。何年間のロスがあったとは考えられぬほどに、オーディエンスのコールは抜群であった。巨大なクジラが会場の宙を泳いでいた。
 『アクチュアリー』が中西アルノのセンターで開始する――。しっとりとした質感で開始したこの曲は、サビの部分で大爆発する――。火花飛び散る中、舞い歌う5期生……。中西アルノの強烈な叫び声が会場に轟(とどろ)いた。

 一ノ瀬美空のMCでトークが始まる。皆さん今晩は――。乃木坂46です。
 5期生のほのぼのとしたMCが始まる。メンバーにマイクが渡る度に、オーディエンスから盛大な歓声が上がった。
 まだまだ未熟な私達ですが、5期生11人で精いっぱいがんばります――。
 これは単独ライブであり、一人一人の魅力を楽しんでほしい。
 コールを聴かせてくれたら嬉しいです――。
 今日はたくさん、皆さん盛り上がりましょう――。
 オーディエンスが声を揃えて冨里奈央に『なおなお~‼‼』と叫んだ。
 5期生のトークは見事なもので、デビューして一年とはとても思えないほどに会場のオーディエンスの心をがっしりと掴んでいた。
 VTRが流れる――。五百城茉央は語る。木と写っている五百城茉央の子供の頃の可愛らしい写真が写る。ライブでこのカップリング曲をしたら盛り上がるなど、想像を膨らませながら観るのが好きだったと語る。レジェンドは偉大過ぎるとも語った。小学生だった自分が、乃木坂46になるとは、あの頃の自分からしたら考えられない。