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自分らしく
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彼方から 第四部 第九話

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 研ぎ澄まされた『感覚』が、震えがくるほどの『敵意』と『殺気』を感知する…………

 強化された己の『能力』に悦の笑みを浮かべ、ケイモスは頭上から迫る【天上鬼】の気配に面を上げた。
 ……良く『見える』。
 奴の瞳の形が、変わっているのが――
 口の端から覘く牙が――
 己もまた、同様に変容しているのが分かる…………
 身が軽い。
 奴の放った『気弾』を、紙一重で飛び退き避ける。

「ひゃーーはっはあ! どこ見て打ってやがる!!」

 攻撃が空を切り、地を穿つ……その様を眼にした奴の顔に、焦りの色が濃く浮かぶのが愉しくて仕方がない。
 刃へと剣気を変化させ飛ばし、奴が追い打ちを掛けてくる。
 ……震えがくる。
 凄まじいエネルギーが篭められた攻撃を前にしても、『恐れ』など、微塵も感じぬ己自身に……


     キン……―― キュイィィー……ィン


 奴の『技』を、同じ『技』で迎え撃つ。
 地上へ……そして空へと、互いの放った剣気の刃が弾かれる。
 …………犇々と伝わってくる、『奴』の驚き、焦りが。
 それが解るほどに、満たされる。
 『ケイモス・リー・ゴーダ』――――その名を持つ、己の存在意義が…………


     ――  キンッ……  ――


 地を蹴り、再び剣を交える二人。
 幾度も響く、かち合う刃の音。
 一人は守るべき者の為に己の力を御しながら。
 もう一人は己の為に御する必要のない力を揮いながら。
 剣を振り、戦いに身を投じてゆく……

 打ち合い、弾かれる剣。
 隙を狙い刃を振る。
 剣身で攻撃を受け、虚を突き、切り返す。
 息を吐く間もないほどの攻防を繰り広げ、『男』の鋭い剣先を紙一重で躱し――
 イザークは返す身で『男』の顎先を蹴り上げ、一旦距離を取るかのように、その体躯を飛ばしていた。


          **********

 
 ――――――風が……
 対峙する二人の間を吹き流れてゆく。
 湿り気を失い乾いた地表を撫でるように、土埃を伴い、風が流れてゆく。

「――へへ……」

 息が、少しだけ上がっている。
 だが『男』は平然と、薄い笑みを浮かべている……

「――きさま……」

 『男』を見据えるイザークの面に、呟く声音に――解せぬ思いと焦りが、色濃く表れている。
 ……徐に、『男』が首を鳴らす。
 その『首』に、わざとらしく手を宛がいながら、『男』は明らかに見下し、憐みを籠めた瞳を向け……


「……こんなもんだったっけ? おまえの力」

 冷笑と共にそう、吐き捨てていた。

 ……『挑発』だと、分かっていた。
 だが、募る焦燥がイザークから『冷静さ』を削いでゆく。
 『男』を睨み、見据え、挑発された苛立ちに奥歯を噛み締め――
 イザークは凄まじい量の『気』を、『男』に向け一気に放出していた。
 
 恐ろしいほどの威力が篭められた『遠当て』を前にしても、『男』は、避ける素振りすら見せない。
 嘲りの籠った不敵な笑みを浮かべたまま、己の剣を眼前に立てるようにして構え、剣身にもう片方の腕を宛がう。
 ……自信と、確信があるのだろう――自分の『強さ』に。
 『当たれば』、ただでは済まない攻撃を前にしても、その威力を『無効』にできる自信が……
 剣身に『気』を籠める――――
 イザークの放った『遠当て』が何の抵抗もなく綺麗に、『気』の籠められた剣に因って両断されてゆく。

「――――ッ!!」

 不意に感じる殺気。
 視界の端に捉えた影に『男』は即座に反応し、身体ごと、剣の向きを変える。

     ――  カァンッ!!  ――

 耳を突く金属音。
「目くらましかい――――やるじゃん」
 イザークの渾身の一撃を受け止めながら、『男』は余裕の笑みを、浮かべていた。


          ***
 

「目くらましかい――――やるじゃん」
「――く……」

 ――止められた……!!

 『男』の、自信と余裕に満ちた嘲りの笑みと挑発……
 絶対に避けない――そう確信しての目くらまし……だったはずが、予想を上回る『男』の反応の速さに、イザークは更に苛立ちと焦りを募らせてゆく。

 『男』の身体を押し倒すように、力任せに止められた剣を振る。
 倒れ込むタイミングを見計らい手を着き、地表を割るほどの威力の『気』を奔らせる。
 だが……
「――おっと」
 そのような単調な攻撃など、『男』には効かない。
 己に向かい奔り来る『気』を、地に手を着き、軽々と体を回転させ避け切ってしまう……

「せいっ!!」

 地を蹴り中空に身を躍らせ、剣を振り翳す。
 『男』はお返しと言わんばかりに、剣先に籠めた膨大な量の『気』を、剣を勢い良く振り下ろし、放つ。
 イザークは放たれた『気』を避け、『男』を追い……その身を『男』と同じ中空へと飛ばしていた。

 再び相見える、二振りの剣――――
 二人が纏う壮絶な戦いのエネルギーが、見えた(まみえた)剣から閃光のように迸り、凄まじい威力と共に周囲を破壊へと、巻き込んでゆく。
「ひゃーはっは!!」
 勝ち誇ったかのように響く、野卑な嘲笑……
「どうした!!」
 同等の……いや、『それ以上』かもしれない己の『力』を誇示し、
「気合のわりに、成果は上がっていないようだな――!!!」
 『あの時』……圧倒的な『力』を見せつけられた『相手』を『男』は見下し、嘲りと挑発の言葉を投げつけている――――

 ――こいつ……!!
 ――どれ程力を上げたというんだ!!

 ――それに
 ――おれと同じ瞳と牙

 ――これは、どういうことだ……!?

 迸るエネルギーの閃光の中……
 屈辱と焦燥、そして解せぬ想いに、イザークの表情が歪む。

 戦いの最中に、脳裏を巡る『あの時』の記憶。
 確かに『あの時』も『男』は強かったが、それでも『普通の能力者』であったはずだ。
 【天上鬼】の力を宿す己とは、そもそも『力の質』がその『源』が、違うはずなのだ。
 なのに……
 あまりにも短い期間での、力の激しい上昇。
 その上、己と同じ『瞳と牙』…………
 何か、その原因となる事由があるはず――――
 
 ――……あれかっ!!

 映像が、一瞬の閃きのように脳裏に浮かぶ。

 ――あの時の巨大な手が
 ――彼をここまでにしたのか……!
 
 『あの時』…………
 『男』との決着をつけようとした、あの時――――
 突として空に現れた『巨大な手』が、『男』を助け、崖を崩し、そして――消え去った……
 一体、どのような方法を使ったのか。
 どのような鍛錬を積めば、これほどまでの力を『男』に与えることが出来るのか。
 恐らく、尋常なやり方ではないはずだ。
 だが今は、『そんなこと』よりも――――


 二人から迸る膨大な量のエネルギーの閃光が、雷のように轟き、地へと落ちる。
 爆風の衝撃を避けるように、身を離す二人。
 刹那、『男』の持つ剣が細かな音と共に、罅割れてゆく。
 地に足を着けたイザークの剣もまた、弾けるような音と共に、粉々に砕け散っていた。
「――そっちもか」
 砂のように、イザークの手から零れ落ちゆく剣。