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確かなもの

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「んんんNOォォォ(いいえぇ……)……」
「Is it gonna stop you?(自分を止められるのかよ?)」
「NOォォ‼‼(いいえ‼‼)」
「Yes I didn`t think so.(よっしゃ、そうこなくっちゃな!)」
「…っ……」

 坂根双葉は、両手で涙を隠して、肩を震わせる……。
 湧き上がる衝動があった。
 それは生きる力となり、また新しい明日を強く純粋に望む、温かき希望となる。
 どうしようもなく、涙が溢れてきた。
 弱音なんか、吐いてる場合じゃないだろう。
 待ってる人がいる。
 人を待たせてる。
 生きることを望んでいる。
 生きることを、共に望んでくれる愛する家族がいる。
 愛する人がいる……。

「I`m proud of you‼‼(よくぞ言ってくれたな‼‼)」
「I love you 秋月君……、After all. I feel like I need your presence(大好きよ、秋月君……、やっぱり私にはあなたが必要みたい)」
「Come on. That`s right!(おお、そうだろ)へへっへ。I`ll be by your side. So don`t make me sad. Let`s do our best together. Let`s live together.双葉(そばにいっからよ、悲しくさせんなよな、一緒に頑張ろうぜ、生きていこうぜ、双葉)」
「I promise. To live(約束するね。生きる、て……)」
「はっはっは、な~に俺ら英語でしゃべってんだかな?」
「………」

 坂根双葉は、頬を指先でふいて、はにかんだ。

「ありがとう」
「なんだよ、あらたまって……、へへ」
「ありがとう、秋ヅキ君」
「にごらねえの、そ、こ、は!」

 坂根双葉は笑顔で、大きく広げた両腕を強調させた。
 秋月奏は、ふんと、鼻息を吹いて、椅子から立ち上がった。
 坂根双葉の座るベッドまで短く移動し、そのままがばっと、坂根双葉を抱きしめた。
 坂根双葉は幸せそうに、また眼尻に涙を浮かべた。

「もう…、治った……」
「馬鹿。ほんと治すぞ……」
「はい……」
「はいは1つ!」
「……え、1つだったよ?」
「はっはっは、アメリカンジョークじゃねえか!」
「ふう……。ジョークは、いまいちのままだな~」
「んんだとぉぉ?」
「それでいいの。そのまんまで、ずっといてね……」
「I love you(大好きだぞ)」
「I love you to(私も、大好き)」

 秋月奏は、坂根双葉の髪の無くなった頭部に、キスをした。
 坂根双葉は、その唇の体温を肌で感じた。
 そのまま、秋月奏は優しく、坂根双葉を抱きしめた。レイチェル・プラッテンの『ファイト・ソング』が一曲、終わりを告げるまで――。

       4

 梅澤美波は店員に景気の良い掛け声を上げて、ビールのおかわりをした。
 齋藤飛鳥は座視でそれを見つめている。
「呑み過ぎじゃないですか?」
 軽快なテンポのクリスマス・ソングがぼんやりと暗い店内を明るく賑わしていた。
「な~に言ってんの、デザイナーになったら、急に上から口調か」梅澤美波は鼻を鳴らして笑った。「大物は怖いね~」
「私…、ですか、て敬語使いましたけど」飛鳥は座視で首を鳴らした。「あ~……、今日は疲れたわぁ~」
「新作のデザインですよねえ?」山下美月は興味津々でそう言った。「女性服、とうとうそっちに行くんですね!」
「う~ん、もともとそっちだからなあ~、とうとう、ではないよね」飛鳥はプリンを食べようとするが、スプーンからプリンがすべって食べられない。「なに、山はデザインはしないの?」
「私、私にも夢はありますよ」山下美月は眼を輝かせる。「〈アンコン〉の、専属モデルになることです! うんわ~~、言っちゃった~~」
「え? ねね、あの、ねえそれってさあ、会社を辞める、て事じゃなくて?」秋元真夏はパスタを巻きながら山下美月を一瞥した。「会社にいながら、て事ぉ?」
「そぉうです!」
 ダイニング・BAR〈スウィート〉の店内は満席で、PM二十三時を過ぎた現在でも、予約が入っている状態だと、先ほどパスタを運んできた店員が教えてくれた。
 遠藤さくらは、待ちきれずに山下美月に尋ねる。
「え、どうやって、モデルになるんですか? そのぉ、〈アンコン〉専門の……」
「専属ね」山下美月は答える。「そんなん、かぁ~んたんよぉ~、フリーのモデルやってえ、〈アンコン〉の社員も続けるでしょう? そしたらぁ、仕上がった服のコンセプトを誰よりも把握(はあく)してるのは、他のモデルさんじゃなくて、私なんだから、私にも、とりあえず私にもモデルの話はくるでしょう」
「そんなもん?」秋元真夏は人懐っこく笑った。
 与田祐希は頬杖をついて、小さな溜息をついた。その時、店員の女性が梅澤美波の注文したビールを二杯、届けに来た。
「おっそ、ふふふ。だい~ぶ混んでますねえ?」梅澤美波はビールを一瞥する。「あれ、二個あるけど?」
 女性店員は、おかわり遅くなっちゃうので、とりあえず先にもう一杯おまけでもって来ちゃいました。との事だった。
「サ~ンキュー!」梅澤美波は親指を立てて、店員を笑顔で見送った。「うし、呑むか!」
「ああ~~、また今年もこのシーズンが来ちゃいましたよ~……」
 与田祐希はそう言って、また小さな溜息を消化した。左の口角に、生クリームが付着しているが、本人は気づいていない。
 秋元真夏が不思議そうにきく。
「何? クリスマスってこと?」
「そぉおですよう!」与田祐希はだるそうに折り曲げていた腰を、しゃんとして険しい顔をする。「お客さん女の人しか来ないんだもん……、出会いがないじゃないですか! うう~!」
「出逢い……」遠藤さくらは枝豆をつまみながら呟いた。「出逢いかぁ……」
「出逢いねえ~」秋元真夏は、哀愁を浮かべて微笑む。「そのうち、がんばってれば、白馬に乗った王子様が私達を見つけてくれると信じてはいるんだけどね~」
「出会い系やれば、いいんじゃないんですか?」
 無垢な表情でそう言ったのは、営業部の賀喜遥香であった。彼女は、食後のチョコレートパフェの後に、チョコレートシロップのかき氷と、チョコレートクレープを食していた。今はまた、ミニサイズのチョコレートパフェをおかわりしている。
「出会い系って……、あ、の、ねえ……。私らのレベル、なめてる?」秋元真夏は猫のような笑みの残る真顔で、横目で賀喜遥香に言った。「社交界でもあれば、そうりゃもう、大モテの芸能人ちょい手前、みたいな存在なんだぞ、ダイヤの原石じゃなくて、もう光ってるダイヤだからね?」
「あそうかぁ……。じゃあなんで出会いがないんだろう」賀喜遥香はチョコレートパフェを近距離で見つめる。「どうしたら……」
 齋藤飛鳥は、グラスに残っていたワインをぐいっと喉に流し込み、思い切って会社仲間の皆に告白する事にした。

 森林公園での、柚飼一哉との偶然の出逢い。子猫のマッシロウの事。柚飼一哉とのショーでの再会。そして、また森林公園での柚飼一哉との再会の夜の事。告白された事。
作品名:確かなもの 作家名:タンポポ