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鈴木蓮一郎
鈴木蓮一郎
novelistID. 68389
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永遠につづくきせき (v1.1)

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小「まさか仁太郎さんアナタ一人で乗り込む気じゃないでしょうね?」
仁「あんなの俺一人で十分だろう。なんなら今からでも退治しに行ってくるぜ」
小「いやいや仁太郎さんアナタそんな無茶ですよ何考えてるんですか馬鹿なんですか」
小「あなたはまだ未成年者なので鬼の始祖との戦闘を開始させるわけにはいきません。」
 じっ 仁太郎は未成年者(小鉄)を見る。
小(まずは大人の眷属を募らないと。)
小「第一、」
小「鬼の始祖というのはですね、星の鍵継承者が精鋭の眷属たちを引き連れて討伐するのが理想なんです 本当は!」
小「可能な限り日中に!」
仁「そんな悠長なこと言ってて、奴に逃げられでもしたら、どうする」
小「それは心配ないはずです。なぜなら、この宇宙の鬼の始祖は鬼になってからの日が浅く、まだ配下の鬼をそれ程は増やしていなくて、逃走に適した部下もいないからです」
仁「奴はいつ鬼になったんだ?」
小「ほんの70年程前に過ぎないと考えられます」
仁(70年は長いと思うが…?)
小「だいたいアナタ奴の居場所をご存じないでしょう」
仁「おやァ、小鉄君、もしやキミ 奴の根城を知っていたりするのかなァ?」
小「!」(しまった。鍵継承者には原則として嘘を言えない規則になっているのに。意図せずに質問を誘導してしまった。)
小「俺は鬼の始祖の居場所を知っていますが…」
小「いや、本当に! 今、行くのは絶対に駄目なんですよ!! しかも、今から行ったら、夜になってしまいますよ!!」
仁「わかった わかった。今はまだ行かないから教えてくれ」
小「本当ですか?」
仁「おうともさ!」
仁「念の為、頭に入れておきたいだけだよ☆」

〇町並み(夜)
 仁太郎が歩いている。
仁(奴の居所がわかってんなら俺のやることは一つだけだ)
仁(必ず奴に落とし前をつけさせる)
仁(しかし小鉄との約束があるからな。ひとまずは偵察だけにしておいて、あとで小鉄と相談するべきだなぁ。どうせ俺が勝つに決まっているけどな。小鉄は少し慎重すぎるんじゃねえかな。)
 ふと仁太郎は見覚えのある男性が前方を歩いていることに気づく。
仁(鬼の始祖!!)
 鬼(鬼の始祖)は人混みの中を歩いている。
 ジャリッ 仁太郎が走り出そうとする。しかし、
A「お母ちゃん!」
 はっ
仁「!」
 仁太郎のすぐ近くを女児Aとその両親が通りかかる。
 スー フーッ 仁太郎は怒りを抑え込むために深呼吸する。
仁(この人混みでは巻き添えが出る)
 近くには巡回中の警察官の姿も見える。
仁(警察じゃ手に負えない)
《「返り血で服を汚したくない」》
仁(ここで奴を引き止めても、会話が通じないだろう)
 通行人で隠れていた鬼の全身が見える。
 鬼は1人の女児を抱いて1人の成人女性と一緒に歩いている。
仁(最初に見た あいつの姿から何となく想像していたが、あの野郎 やはり人間のふりをして暮らしていやがる)
仁(あれだけのことをやっておきながら、なぜ何事もなかったかのように過ごしていられるんだ。)
 鬼は家族とともに車に乗り込む。運転手がドアを閉める。

〇鬼の始祖の屋敷・正門前(夜)
 車が敷地内へ入って行く。
仁(でかい屋敷だな)
 仁太郎は電柱の町名を確認する。
仁(小鉄から聞き出した住所とも一致している)
《「お母ちゃん!」》
 ぞわっ 仁太郎は鬼の始祖が市井の人に混じって平然と過ごしていた様子を思い出す。
仁(やはり鬼の始祖をこのまま放置するのは危険すぎる。予定変更だ。退治しよう。)
《「可能な限り日中に!」》
仁(せめて夜が明けるのを待つべきか)
仁(鬼の始祖が抱いていた あの女の子も鬼なんだろうか。そうは見えなかった)
仁(最悪、鬼の始祖以外の全員が鬼でなかった場合、人質にとられるおそれがある)
仁(鬼の始祖は日中は屋敷から出られないはず)
仁(一方で、家族は(鬼でない場合)外出する可能性がある。そうなれば人質を減らせる)

〇鬼の始祖の屋敷・正門前
 仁太郎は通行人Aに挨拶する。
仁「おはようございます。いい天気ですね」
A「おはようございます。ええ、今日は一日中 晴れるでしょうね」
仁(絶好の鬼退治日和ってわけだ)
A「こちらのお屋敷にご用ですか?」
仁「ええ。使用人として雇っていただけないかと」
A「ああ、それでしたら、ちょうど今1人募集していますよ」
A「1週間程前になるでしょうか。1人故郷に帰ったとかで」
仁(あるいは喰われたか…)
A「今、女中1人と運転手1人の合計2人しかいないので、きっと雇っていただけると思いますよ」
 屋敷から車が出て来る。運転手、女児、成人女性の合計3人が乗車している。
仁「こちらの旦那様はお子様がいらっしゃるんですね。ご子息はいらっしゃらないのでしょうかね?」
A「そうなんです。跡取りがまだなんです」
仁「ご息女がお一人いらっしゃるだけなんですねー」
A「ええ、今、奥様と一緒に乗ってらっしゃった」
仁「旦那様は一緒じゃなかったですねェ」
A「旦那様は皮膚が弱くて日中は外出を控えていらっしゃるんですよ」
A「雇っていただけるといいですね。ごきげんよう」
 ペコリ 通行人Aは会釈し、去って行った。

〇鬼の始祖の屋敷・正門前
B「ごきげんよう」
仁「ごきげんよう」
 通行人Bは去って行った。
仁(今、屋敷にいるのは鬼の始祖以外は女中1人だけってことで間違いなさそうだ)
仁(そんじゃ…)
仁(いっちょ行ってみっか!)
 タンッ 仁太郎は正門を飛び越える。

〇鬼の始祖の屋敷・前庭
 仁太郎は錬成機能により2つの鉄塊を1本の日本刀に作り変えながら走り抜ける。
仁(奴と対峙してからじゃ間に合わねえからな)
仁(銃刀法のない時代だったら、普通に鞘に収められるんだが)

〇鬼の始祖の屋敷
 玄関は広々とした吹き抜けになっている。
 カチャッ 両開きの大きな扉を開け、仁太郎が屋内に入ってくる。
 ちょうど仁太郎の正面の階段に鬼(鬼の始祖)がいる。
鬼「おや、どちら様でしょうか」
仁(この野郎)
 ミシ ミシ 仁太郎の握る柄が軋む。
鬼「お前は、あのときの小僧か」
 ミシッ 仁太郎が鬼に斬りかかろうとする。しかし、
と「お客様でございますか、旦那様」
 はっ
仁「!」
 女中の山田とめ(50)が来る。
 スッ 仁太郎は日本刀を背後に隠す。
仁(この女中も鬼でない可能性がある)
鬼(この剣士(仁太郎)は今すぐにでも私に斬りかかりそうだ)
鬼(一方で私は山田とめがいるので容易には手出しできぬ)
鬼(この屋敷に住み続けるならば、山田とめを喰わないでおいた方があとあと面倒が少ないだろう)
鬼「ああ、とめさん、丁度いいところに来た」
鬼「会社に荷物を受け取りに行ってもらえないだろうか」
鬼「会社に行けば分かるようにしてあるからね」
 しげしげ とめは仁太郎の様子に違和感を覚え、観察している。
鬼「こちらの御仁(仁太郎)のことは私に任せなさい」
仁「…………」
と「かしこまりました」
 とめは玄関の外へ出た。
鬼「それで? お前は何をしに来たんだ?」
 とめは陽光の下を歩いている。
仁(女中も鬼ではなかったな。人質にとられなくて良かった)
仁「……俺は宿海 仁太郎」