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冬の梟

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俺と友達にならない?とばかりの軽い口調に赤葦は木兎の言葉を聞き流しかけていた。特に耳を塞ぎかけていた赤葦には聞き間違いか?とさえ思わせた。しかし言われた内容を反芻し、背中に感じるベッドの柔らかさに押された赤葦は漸く意味を理解する。
『はぁっ?』
『だってお前は忘れられない人がいるけど付き合わないんだろ?で、俺は好きな人にフラれてる』
『だからって何で』
『報われない相手を思う間の寂しさとか埋まればいい、とか思わねぇ?』
それが木兎以外なら確かに当てはまるが、よりによって本人にそう言われても頷けない。しかも木兎にも好きな人がいると解った衝撃から赤葦はまだ立ち直れていないのに。その本人からセフレとか言われても……セフレって、セフレってどこまでする仲だっけ?などと赤葦の思考が迷路に入りかけた隙に木兎は自身もベッドに乗り上げていく。
『いや、木兎さん…ちょっと落ち着いてください。ご自分が何を言ってるのか解ってますか?俺ですよ?男ですよ?酔いが醒めたらまた考えましょ…ぇ、んん?』
懸命に説得を試みていた言葉が木兎の口に吸い込まれる様を赤葦は瞬きもせずに見ていた。
『赤葦が男なの知ってるし、落ち着いてる』
『はっ…ちょっ、待ってくだ……んぅっ、んっ』
二回目はかなり長いこと口を塞がれていたので赤葦は息苦しさに木兎の肩や背中を叩いていく。が、その手首をあっさりとベッドに縫い付けられてしまい抵抗など無いも同然だった。鼻で息をすればいい、など初心者の赤葦に解る筈もなく、木兎の肺活量に無理矢理付き合わされていく。そうやって赤葦が呼吸を求める度に、何か言葉を発しようとする度に何度も奪われてしまえば身体の力は抜け落ち、思考も使い物にならなくなっていく。
やっと解放されても元々慣れないアルコールが入っていた身体だ。ベッドに深く沈み、息を整えるだけで精一杯である。
眩む視界に自分の手がうっすらと映り込むが、余り力は入らなかった。それはきっとアルコールだけのせいだけではないだろう。長年片想いを募らせてきた相手から与えられた突然の熱に身体と意識が追い付いていないのだ。
ぼんやりとしていた赤葦の意識をちりつく熱と痛みが引き戻したのは、その時だ。
首筋に鋭い何かが食い込む感覚、それが木兎の犬歯だと理解する。血が滲む一歩手前で離され、そこを舐め取られては吸われていく様はまるで吸血行動のよう。剥き出しの首に幾度も刻まれ、その都度跳ねる身体は難なく抑えられていく。
『っっ、木兎さん!待っ、てください!』
首元に顔を埋める木兎を引き剥がそうとするが力の差は元より歴然だ。木兎は現役のスポーツ選手だが赤葦は高校卒業と共に現役からは退いている。赤葦が現役だったとしても木兎との力には到底敵わない筋力差があったのだから尚更だ。普段の戯れではどれだけ加減されていたかを今更に思い知らされる。
想い人を忘れる。それを為すには、相手が木兎であってはならない。逆効果もいいところだ。なのに木兎はそれを知らない。
事実を告げるか、このまま事の成り行きを甘受するかで迷う赤葦だったが木兎の掌が服の隙間に差し込まれ、ゆるく下腹を撫でられた時に覚悟を決める。
『木兎さん!聞いて、くださっ……っ、俺の好きな人は』
『聞きたくない』
これほどに冷えきった木兎の声を、赤葦は聞いたことがなかった。怒気に一番近い声色だろうか、でもこんなにも静かで人を従わせるような声を木兎が使ったところを見た事がない。
それは赤葦の喉を凍らせるには充分の──。
しかし、ここで引けばお互いに取り返しのつかない所へ行ってしまう確信が赤葦にはあった。目の前にいる木兎も怖いが、今のこの立場すら失う可能性の方が赤葦には恐ろしかった。
震えそうになる喉を叱咤しつつ、赤葦は何とか声を絞り出していく。
『でも木…兎さん俺は、痛っ』
『聞きたくないってば』
カリッと軽い音が自身の鎖骨ら辺から聞こえ、微かな痛みを覚える。強めに噛まれたのか、と何処か冷静に考えていた赤葦の素肌を冷たい空気が撫でていく。いつの間にかシャツのボタンが数個外されている事に気付いた赤葦は木兎の手首を鷲掴む。
『少しは人の話を聞いてください!』
木兎の金色の瞳が掴まれた手首を見て、ゆっくりと細められていく。赤葦がその隙に次の言葉を紡ごうとした、その時、視界がいきなり反転する。
『……え』
掴んでいた手を支点に身体を引っくり返された?
そう認識したのは視界が全てベッドのシーツに埋め尽くされたからだ。背中で感じていた柔らかさが今度は顔や腹の下にあり、無防備となった背中は今や猛禽類の前に差し出されている。
『う、わっ。木兎さん、やめ…ぁ、待ってくださっ』
うつ伏せの状態の赤葦を抑えるのに片手だけで事足りる木兎はもう片方の手で器用にシャツの残りを脱がしにかかってきた。見る間に項や背中が露になれば今度はそこが喰われていく。また自由となった手が好きに赤葦の身体をまさぐり、吐息を殺す為に唇を噛み締めていた。それでも合間に木兎への説得を続けようとしたが徒労に終わる。

作品名:冬の梟 作家名:さえ