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セブンスドラゴン2020 episode GAD 3

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「連れていこうにも、この人といっしょじゃあまともに戦えないよ」
 リアンの言う通り、手負いの男を連れては、戦いに支障が出る事が目に見えていた。マモノとの戦いならいざ知らず、ドラゴンとの戦いになれば守りきれる余裕がなかった。
「大丈夫だ。こんな時の為に用意してる物がある」
 トウジは、背負っていた物入れから、なにやら組立式の機械のような物を取り出した。
「なにそれ?」
 リアンは訊ねる。
「脱出キットだ」
 トウジは答えた。
「脱出、キット?」
 シュウも頭に疑問符を浮かべる。
「うむ。説明しよう」
 トウジは説明を始めた。
 ダンジョン化した都庁の時にも使われた、脱出ポイントの異次元移動を可能にするのがトウジの出した脱出キットである。
 今の東京では、あらゆる場所がダンジョン化しており、同時に異次元が発生する異世界になっていた。
 異世界となり、マモノ、ドラゴンといった異生物の蔓延る危険な世界となった東京は、同時にオーバーテクノロジーを持つ場所になった。
 そのオーバーテクノロジーというのが、異次元移動能力、いわゆるテレポートする事であった。
 特定のポイントとポイント同士を繋いでいるのが転送ポイントであり、異次元移動を可能にしている。触れれば一瞬にして繋がった場所に移動できる。
「そんな便利なものがあったんだね」
「うむ、便利なのは間違いないが、このキットには弱点がある」
 脱出キットは、特定のポイント外から半ば無理矢理アクセスするので、一度使えば機能停止し、そのまま壊れてしまうのである。
「キットは使い捨てだが、開発班で量産することができている。少ない資材で作ることができるからな」
 言いながらトウジは、脱出キットを組み立てた。
「百聞は一見に如かず、だ。実際に使ってみるとしよう。ミイナ」
 トウジはミイナを通信を飛ばした。
『はい。ポイント三百二十、渋谷道玄坂、チューニングオーケーです』
「よし、おいお前、腕は動くな? この機械に触れるんだ」
「ごほ……そんな事をしてどうなるんだ……?」
 苦しみながら、生き残りの男は訊ねてきた。
「都庁の医療班の所まで行ける。さあ、どこでもいい、機械に触れるんだ」
 生き残りの男は、疑ってなかなか手を触れようとしなかった。
「大丈夫だ、悪いようにはならん。キットに触れろ」
 それでも男は触れようとしなかった。
「仕方がない、強制送還だ。悪く思うな……」
「なにを……!?」
 トウジは男の腕を取り、脱出キットに触れさせた。その瞬間男の体が光に包まれ、キットに吸い込まれていった。
 男の体が完全に消えると、脱出キットの光っていた部分がひび割れ、光を失った。
「ミイナ、要救助者を転送した。そちらの様子は?」
『転送成功です。医療班の所へ送られました』
「よし……!」
「すっごい、ほんとうに人を一瞬で運べるなんて……!」
 リアンは驚いていた。
「でも機械は壊れちゃったね。もう使う事はできないの?」
「四季、さっきも言った通りだ。一度使用した脱出キットは壊れて二度と使えなくなる。まあ多少勿体ないがな……」
 トウジは、壊れた脱出キットを完全に破壊した。
「さあ、ここにいても仕方ない。この調子だとまだ生き残りがいそうだ。隈無く探すぞ」
『コール十三班』
 突然ミイナの通信が入った。
「どうした、ミイナ?」
『そこから十二時の方角に、ドラゴンとは違った生体反応を感知しました。恐らく生き残りです』
「それは本当、ミイナ!?」
 シュウが驚きつつ訊ねた。
『本当です。ですが悪いことに、その付近にドラゴン反応もあります。襲われかけているのかもしれません。急ぎましょう!』
 シュウたちに躊躇っている時間はなかった。
「行くわよ二人とも!」
「ああ」
「うん!」
 三人は一斉に反応のある所へと駆けた。
 少し駆けた先に、ミイナが感知したと思われる場所へとたどり着いた。
「あれって!?」
「ケミカルドラグ……それと生き残りか!?」
 ドラゴンが、生き残りに襲いかからんとしていた。
「い、いや……来ないで……!」
 襲われていたのは、看護師の格好をした女であった。
「四季、本宮、さっきの戦術で行くぞ!」
「オッケー、トウジ君。誘導よろしく!」
「まっかせてー!」
 リアンが駆けていくのを確認し、トウジは、揺動の魔法を放った。
「燃え尽きろ!」
 炎の魔法はドラゴンの頭に当たった。しかし、ダメージはほとんど見られない。
 ダメージは薄いが、ドラゴンの気を引くことに成功した。
ーーよし!ーー
「四季! 合わせていくぞ!」
「うん、行くわよ!」
 トウジが炎を放ち、それを追うようにシュウは駆けた。
「燃え尽きて倒れろ!」
 シュウは、トウジの炎を刀に纏い、右斬り上げでドラゴンに斬りかかった。
 今回の作戦も上手く行き、生き残りをドラゴンから救うことができた。
「リアン! その人の様子は!?」
 シュウとトウジが駆け寄り、シュウが訊ねた。
「大きな怪我は無いみたいだけど、ミイナちゃん!」
『はい、メディカルスキャンを開始します』
 スキャンの結果はすぐに出た。
『軽い裂傷が一部、骨折はなし。身体には大きな異常は見られません』
 女は、ドラゴンに襲われていたというのに、ほとんど無傷であった。
「あたし、助かった、の……?」
 女は誰にともなく訊ねた。
「うん、もう大丈夫よ。怖かったよね?」
 シュウは、女の後ろに回り、両肩をさわった。
「……ひっく……ぐすっ……」
 女は、緊張の糸が途切れ泣き出してしまった。
「大丈夫、怖くなーい、怖くなーい……」
 シュウは、女の肩を擦りながら落ち着かせた。
 数分間女は泣き続けたが、やがて落ち着きを取り戻した。
「ぐす……ごめんなさいね、あたしの方がお姉さんなのに、こんなに泣いちゃってて」
「気にしないで、悪いのは全部ドラゴンなんだから!」
 シュウは、努めて強気に振る舞っていた。
「ところで、あなたは何て言うの?」
「あら、ごめんなさい。名前、言ってなかったね。あたしは桧山有希(ひやまゆき)」
 ユキは名乗った。
「ユキ、ね。私はシュウ、四季秋って言うの。よろしくね」
 シュウも名乗った。
「トウジ君、例のあれは準備できてる?」
 シュウは、脱出キットが完成しているか訊ねた。
「無論だ。もうすぐにでも都庁まで飛ばせるぞ」
 トウジは答えた。
「ありがとうトウジ君」
「ユキ、彼が用意した機械に触れて。そうすれば一瞬で都庁まで行けるわ」
 ユキはやはり、すぐに脱出キットに触れなかった。
「都庁は安全なの?」
「最初はこの樹海のように、ドラゴンやマモノが練り歩く場所だったが、今はいない。帝竜を倒したからな」
 トウジが答えた。
「てい、りゅう……?」
「話すと長いから皆まで言わんが、ドラゴンの親玉みたいな存在だと思ってくれ……」
 トウジは、脱出キットを持ち上げ、ユキに差し出した。
「恐れることはない、このキットに触れろ。ここよりよっぽど安全な場所に行けるぞ」
 ユキは尚も悩んだが、ついに触れる覚悟を決めた。
「……分かったわ。あたしがここにいても足手まといだろうし、本当に安全な場所に行けるなら……」