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セブンスドラゴン2020 episode GAD 3

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「まさかドラゴン!?」
 シュウは警戒した。
「いや、違うよシュウちゃん。ドラゴンの気配がないもの」
「じゃあ一体……?」
 三人が話し合っていると、再び音がした。
「あっちから聞こえたね」
 リアンは音のした方向を捉えた。しかし、その方向を見ても何もいなかった。
「うん?」
「どうした、四季」
 シュウは何やら視線を感じていた。
「何だか見られている気が……」
 視線を感じたのは、音がした先であった。その先にあるのは、ドラゴンの力によって巨大化した木の根である。
 シュウはより注意深く視線の先を見た。
 良く見るとそこには、ごみ箱があった。
「四季……?」
 シュウは警戒しつつも、ごみ箱に近付いていった。
ーーごみ箱……?ーー
 シュウはごみ箱の蓋に手をやった。
 開くとそこには、なんと人がいた。
「きゃあああ!」
「うわあああ!」
 シュウは、驚きのあまり悲鳴を上げてしまった。同時にごみ箱の中にいた髭面の男も叫んだ。
「どうした、四季!?」
「シュウちゃん!?」
 トウジとリアンも、ごみ箱へと駆け寄った。
 ごみ箱の中の男は、逃走を図ろうとしたが、ごみ箱から出るのに失敗し、ごみ箱ごと地を転げた。
「ひいいい! ワタシは何も持ってないヨ!」
 男は独特の訛りで命乞いをする。
「おカネも食べ物もない、あるとすればこのごみ箱くらい! ワタシはゴミにまみれたゴミ男だヨ!」
 ごみ箱に隠れていた男は、激臭を放っていた。
「うっ、クサ……!」
 リアンは思わず顔を背ける。
「このクサさ、剣道の小手よりひどい!」
 シュウも鼻をつまんだ。
「落ち着け。何も引剥をしようと言うつもりではない」
 トウジが臭いに耐えながら言うと、隠れていた男はひとまず落ち着き、三人の顔を順繰りに見回した。
「キミたち、SKYの仲間じゃないのかイ?」
「違う、俺たちはムラクモ機関の者だ。お前たち生き残りを捜している」
「ムラクモ機関って、都市伝説で語られるやつだヨネ?」
 男の耳にもムラクモ機関の噂は届いていた。
「ああ、都市伝説ではなく実在する組織だ」
 トウジは答えた。
「都市伝説じゃなく実在して、生き残り捜ししてるって事は、ワタシ助かったんだネ!?」
「あ、ああ……」
 トウジは男に手を取られ、不快な臭いに顔をしかめた。
「ドラゴンだったら、このごみ箱に隠れてやり過ごせていたんだけど、SKYに見つけられるのが怖かったヨ」
 男の言うSKYとは、渋谷を根城とする不良集団であり、集りやカツアゲと、好き勝手している若者の集まりであった。
 それだけ聞けばただの不良集団かと思われたが、妙な能力を持つ若者によって構成されていた。
「ワタシとしては、彼らの特殊な能力には興味があるんだけど、それで近寄るのはさすがに怖すぎるヨ……」
 男はシュウたちを見回した。
「このドラゴンの闊歩する中、大した怪我をしていない、ワタシはキミたちにも興味がわいたヨ」
 男は、飽くなき異能力への興味に浸っていた。
「能力についてはあとだ。まずはお前を救助する」
 トウジは脱出キットを組み立てた。
「ん、それはなんなんだネ?」
「触れれば都庁まで一瞬にして移動できる装置だ」
「ああ、それじゃワタシは助かったんだネ! さようなら、九十リットルの隠れ家!」
「さあ、キットに触れて都庁に行ってシャワーを浴びろ。臭すぎるからな」
「はは、ごみ箱にずっと隠れてたからネ。しかし、シャワーまであるなんて、都庁はこの世の天国だネ」
「早く行け、ドラゴンが来んうちにな」
「うん、分かっているヨ。ドラゴンに食われて本物の天国にはまだ行きたくないからネ」
 男は、脱出キットに触れた。キットに触れた瞬間、男の体が光に包まれ、キットに吸い込まれていった。
『ええ! あの人ここに来るんですか!?』
 激臭を放つ男が向かってくることに、ミイナは嫌悪の驚きを見せた。
『消臭剤を用意するわよ、ナビ。一番効くやつをね』
 ナツメも嫌悪感を示していた。
「……さて、ドラゴン退治に戻ろう。約束のDzはまだ集まっていないからな……」
 本来の目的に戻ろうとした三人だったが、不意に籠手から警報が鳴った。
「何事だ!?」
「ドラゴン反応みたいよ、トウジ君!」
「ここからそう遠くないよ。急ごう!」
『コール十三班、反応はドラゴンのものだけではありません』
 ミイナの通信が入った。
「ひょっとして、生き残り!?」
 シュウが訊ねた。
『恐らくは。生体反応は二つあるのですが、そのうち一つは常人の反応ではありません』
「どういうことだ?」
 トウジは思い付かなかった。
「行けば分かるよ、きっとね。ミイナ、その反応があるのはどっち?」
『そこから二時の方向に反応があります。急ぎましょう!』
「オッケー、走るよ二人とも!」
 シュウを先頭に三人は駆けていった。

 Phase3 新たな能力者

 間もなくたどり着いた先には人が二人、ドラゴンが一体が睨み合っていた。
「見つけたぞ!」
「大変! ドラゴンが! 急いで加勢するわよ!」
「ちょっと待って、ふたりとも。なんだか様子がへんだよ」
 リアンがシュウたちを引き止めた。
 良く見ると、人二人はどちらも女性であり、内一人がドラゴンと対峙していた。
「もうダメ! 私たちこのまま死んじゃうんだわ!」
 ナース服姿の女が、目の前に迫る死の予感に恐怖していた。
 対してドラゴンを目の前にする、サイドテールが特徴的な女は、余裕すらも窺えた。
「ナミさん。ここは私に任せて逃げてください」
「で、でも相手はドラゴン。逃げきれないわ」
「時間稼ぎならできますから。大丈夫、さっきおにぎり食べたんで戦えます!」
 こう言うサイドテールの女であったが、勝てる可能性はかなり低く感じていた。
 四足歩行で、頭に角を持つ牡牛のようなドラゴンであり、唸りを上げながら地を蹴っていた。
ーーこいつ、全然隙がない……ーー
 少しでも動きを見せれば、一気に近寄られ、その角で突き貫かされそうだった。
 ドラゴンの方も、どういうわけか仕掛けて来ず、女を威嚇するだけである。
ーーあのドラゴンには分かってるのかな。私に不思議な力が宿ってるってーー
 女の能力は、柔よく剛を制す、返し技に特化した能力である。そのため実戦においては、当身で相手の攻撃を誘い、返し技を食らわすというものだった。
ーー仕方ないね。逃げられない以上戦うしかない……ーー
 女は半身に構え、ドラゴンに向かった。そして呼吸をととのえ、力が充実した瞬間、女は右手で渾身の当身を打った。
「えーい!」
 渾身の一撃であったが、ドラゴンの硬い皮膚にはダメージがあまりなかった。
ーー当身が無理なら技で……!ーー
 女は、ドラゴンの腹に向かってスライディングをしてドラゴンの下に潜り込み、前足に当身を打って前身を崩れさせ、ドラゴンの腹を蹴り上げた。
「必殺巴投げ!」
 女の投げ技が効いた。ドラゴンは地を転げた。
 ドラゴンは地面に転がったまま起き上がれずにいたが、やがて立ち上がり、再び地面を蹴り始めた。
ーー技も今一つか。さて、どうしよう?ーー
 戦況は芳しくなかった。ドラゴンの突進攻撃を食らえば無事では済まないであろうと言う時だった。