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【Buddy Daddies】1.FOR YOUR SMIL

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 物件は、先代のオーナー夫婦が二人で長く営んできた店で地元の人にも愛されていた場所らしい。
 ただ、そのごご夫婦が高齢になり息子と同居することになり、後を任せらる人を探しているということだった。
 
 「まだ約束まで時間があるから、少し砂浜に降りてみるか?ミリ」 
 「え、いいの!」 
 「ああ、これからお客さんに会うんだから服は汚すなよ」 
 「はぁーい」
 一騎は、海沿いの駐車場に車を停め、砂浜に向かって駆け出していくミリと零の背中を見ていた。


 
 
  数日前の夜、久太郎が物件について話があるとマンションに訪ねてきた。 
 「いいか、お前たちの関係は外から見たら異例だ」
 「それはわかってるよ」 
 「ただ、異例ということは、逆に言ったら平凡ではないということだ」
 「何を言ってるの久ちゃん」
 「つまりだ、ストーリーの持っていき方によって、この関係性を武器に周りを味方につけることができるってことさ」
 「関係性を武器に?」零が怪訝そうな顔をして尋ねた。
 「ミリは、一騎の姉さんの子ということにする」
 「え?姉さんって、俺施設育ちだし兄弟なんていないけど」
 「だから、その施設で姉弟同然で育った、姉の子だということにするんだよ」 
 「なーる」
 「零、何がなーるだ!そんな簡単な嘘、すぐにばれるに決まってるだろ!」
 「何を言ってるんだ、その簡単な嘘をつき続けてるのは誰だ?」
 久太郎がジロっと一騎をにらむ。
 
 ミリと初めてあったクリスマスパーティーの会場で、思わず一騎の口から出た「俺がお前のパパだ!」という嘘。その嘘をつき続けているには、まぎれもない一騎自身だ。
 「そ、それはそうだけど……」
 「いいか、これからミリも大きくなる。いつか、自分とお前たちとの関係に疑問を持つような時も来るだろう。その時に、お前の父親はお前達が始末して、母親は零の実家の組織が殺したって言うのか?そんなことを伝えて一番傷つくのは誰だ?ミリだろう?」
 あまりの正論に二の句が継げない一騎と零は、青い顔をして俯きギュっとこぶしを握り締めた。

 「だから、一騎と姉弟のようにして育ってきたのがミリの母親だったってことにするんだ。父親はミリが小さい時に亡くなって母親が一人で育てていたが、母親も病気になってしまい他に頼れる親族もなかった母親が一騎に託した。そして一騎の同僚だった零が、一騎一人じゃ大変だろうと手伝うことになった」
 「これなら、お前らとミリの名字が違ってもおかしくはないだろう。それに、周りにこう話しておけば、万が一お前たちがミリに親の話をする前に誰かからこの話が耳に入ったとしても、ミリの受けるダメージは少なくて済むだろう?」
 「でも、そんな嘘をつき続けるのは……」
 「いいか、嘘も貫き通せば真実になるんだよ。お前たちが守りたいのはなんだ?ミリに対して親代わりとして誠実でありたいとうお前たちの気持ちは立派かもしれない。でも、時には嘘もひつようじゃないか。例えば、いつかのサンタクロースのように」
 一騎が顔を上げて零を見ると、零も真っすぐに一騎を見ていた。そして、二人でゆっくりとうなずく。
 「そうだな久ちゃん。これが俺たちにとっての真実なんだな。そして、今のミリの父親は俺と零だ!それは誰にも譲らない」
 「やっぱりお前ら似たもの親子だな」
 「え?誰の事」
 「ミリだよ」
 「……」
 「この前ミリに、ママと会えなくて寂しくないかって聞いたんだよ。そうしたら、ママと会えないのは寂しいけど、ミリにはパパ達がいるから大丈夫って言ってたよ」
 「そっか、ミリがそんなこと」一騎は泣きそうな顔をして嬉しそうに目元を緩めた。


 今の一騎は絶賛お悩み中だ。なんと今回は、机の向かい側に座る零までもが腕を組んでうんうんと悩んでいる。ま、この二人のお悩みと言えば、一においても二においてもミリの事と決まっている。


  先日3人で下見に行った物件は好感触だった。
  海沿いのこじんまりとしたダイナーは、オーナー夫婦が二人で切り盛りしてきた店らしく、一騎と零の二人でやっていくには手ごろな広さだった。
 
  店の内装や雰囲気も、木目を基調としたカウンターやエクステリアなど、穏やかなオーナー夫婦の人柄が感じられる明るく温かいものだった。
 
  近隣の商店街や、ミリが通うことになるだろう公園や小学校も見に行った。店と小学校のちょうど真ん中ぐらいの距離にある公園には、子供たちが楽しそうに遊ぶ姿がみられ、近くには交番もあり、お巡りさんが登下校する子供達に声掛けをして見守っていた。
 
  環境的には申し分ないと思うのだが……。

  二人の頭を悩ませているのは、ミリの友達の事だった。

  小さいころから、「友達」という人間関係を上手く築くことができなかった二人にとって、友達とまるで子犬がじゃれあうように楽しそうに遊ぶミリの姿は、とてもまぶしくて、ミリにとって友達が掛け替えのない存在なんだと容易に理解できた。

  それだけに、今回のような大人の事情で友達と引き裂くようなことをしてしまってもいいのだろうか、と悩んでいるのだ。

  「やっぱ、友達と同じ学校に行きたいよな」零がつぶやくように言う。

  「そりゃあ俺だって、同じ学校に行かせてやりたいと思うけど……」

  二人が今のマンションからあのダイナーに通って店をやっていければいいのだろうが、それは距離的にかなり難しい。

  「どうしたもんだか……」

  「あ、一騎お迎えの時間! あと、今日保育園で面談じゃなかったっけ?」

  「そだ、やば!遅れちまう、急ぐぞ!」



  

  「一騎パパ、零パパ、こんにちは」

  「アンナ先生、今日は面談よろしくお願いします」

  「ミリ、今日は一騎は面談だから、俺と一緒に先に帰ろう」

  「わかった!アンナちゃん、バイバ~イ」

  「じゃあ、一騎パパはこちらへどうぞ」

  アンナ先生に促されるまま、一騎は面談室に入った。



  「ミリちゃんは、お友達とも仲良く遊べていますよ。責任感や正義感が強いところがあって、よくケンカの仲裁とかもやってくれるんですよ」

  「そうですか……」
   
  「? 一騎パパ、なにかお困りなことでもありますか?」

  テンションが低い一騎に向かってアンナ先生が尋ねた。

  「えっと、実は……」

  一騎は近いうちに零と二人でダイナーを開こうと思って、下見に行ったことなどをかいつまんで話した。

  「でも、そうするとミリにせっかくできた友達同じ小学校に通えなくなってしまうので、それでいいのか…」

  「ご心配なのもわかりますが、大丈夫ですよ」

  「え?」

  「保育園って保護者さんの都合でいろいろな場所から通って来ている子たちばかりなので、みんな同じ小学校にいかれるとは限らないんです」

  「え?」

  「園児さんの中には、保護者さんの都合で小学校から他県や海外に行かれることもあるんですよ」

  「そうなんですか」