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【Buddy Daddies】NEVER LOST YOU

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 「ミリ?」もう一度声をかけてみるが、ミリは返事をしなかった。
 「ミリ。さっき、だって……って言ってたけど。だって、どうしたの?」
 「(もごもごもご)」ミリは布団をかぶったまま、なにか小さな声で言い訳をしているようだった。
 「ん?なに?俺はミリの話を聞きに来ただけだから。だからもう一度顔を出して言ってごらん」
 「だって、かくれんぼしてたから、影が長くなったのわかんなかったんだもん。なのにカズパパあんなに怒って、遊びに行っちゃいけないって……」 消え入りそうな小さな声でミリがいう。
  「そっか、楽しかったんだなミリ」
 零の言葉に、ミリはようやくベッドからきちんと顔をだしてベッドサイドに座る零を見上げた。
 その気配に、零もミリに向き合うように座りなおした。
 「あのなミリ、一騎は怒ってるんじゃないんだ」 
 「うそ、怒ってたもん」
 「そうだな、怒ってるいるように見えたかもしれないけど、心配してるんだよ」
 「しんぱい?」
 「うん。もしもミリになにかあったら、ミリのママが心配するだろう?」
 「うん」
 「一騎は、ミリのママが心配しないようにしなくちゃと思って、ミリにあんな風に言ったんだよ」
 「うん……」
 「ミリは何をしなくちゃいけないかわかるか?」零に静かな声で言われて、ミリはしばらく考え、
 「ミリ、カズパパのところに行って来る!」と勢いよくベッドから出て行った。
 リビングには反省しきりのカズパパ。 一人にされて、ミリに言われた「大嫌い」の言葉が、じわじわっとボディに来ていた。
 「だって、そんなこと言っても、何かあったらどうするんだよ」一人ごちてみるが、口に出してしまった言葉はひっこうめようもなく。ミリに謝りに行こうかとと思っていたところ……。
 ダダダッと足音がして、一騎にミリが抱き着いてきた。
 「カズパパ、心配かけてごめんなさぁ~い(泣)。今度からちゃんと約束守るようにするから、ごめんなさぁ~い(泣)」
 「ミリ!俺の方こそ、遊びに行くの禁止なんてきついこと言ってごめんな! ミリほんとごめんな!(泣)」
 ミリに遅れてリビングに戻ってきた零は、二人の様子に苦笑いを浮かべて見守っていた。


朝からすっきりと晴れた日曜日、ミリは今日も公園で遊ぶ約束をしているらしい。
 そして今日のミリのミッションは、『お昼になったら帰ってくること!』
 朝ご飯をもぐもぐと食べているミリの横で、一騎が一生懸命に説明をしている。
 「いいかミリ。公園の真ん中にある時計あるだろう?お昼になるとオルゴールが鳴るから、それが鳴ったら帰ってくるんだ。できるか?」
 「うん、わかった!」
 「もう一度聞くぞ、オルゴールが鳴ったら?」
 「ミリはお家に帰ってくる!」
 「よしそうだ!守れるか?」
 「うん!がんばる!」
  一騎は昨日の教訓として、ミリが遊びに夢中になってしまっていても、帰る時間がわかりやすい目安を決めるようにした。
 早く公園に行きたくてウズウズしているミリは、食べ終わるや否やまだ口がもぐもぐと動いているにも関わらず席を立とうとする。
 「だめだミリ、口の中のものをきちんと飲み込んでからだ!」慌ててミリの肩を抑える一騎。
 「……(ゴクン)食べ終わった~!」
 「ごちそうさまは?」椅子から立ち上がろうとするミリの肩をまた一騎が抑える。
 「ごちそうさま!」両手を合わせて軽く目をつむってミリがいうと、
 「よし、OK!いいぞ、行ってこい!」
 「うはぁ~!パパ達行ってきま~す!」ミリは店から飛び出していく。
 「あ、ミリ忘れもの!…えと、ハンカチ!」と、その後を零が追いかけた。



 「え?ミリ、ハンカチもってるよ?」
 店のドアの外で零につかまったミリが首をかしげる。すると零は、シッっと唇に指をあててウインクした。
 「???」 
 零がポケットから取り出したのは、零のスマートウォッチだ。
 「この曲わかる?」零がなにか操作すると、スマートウォッチが曲を奏で始めた。
 「うん、知ってる!保育園のお帰りの歌」
 「そう。この歌がオルゴールが鳴る少し前になるようにしてあるから。この歌が聞こえたら遊ぶのをやめてみんなにバイバイして、公園のオルゴールが鳴ったら帰っておいで。できるか?」
 「うん、わかった!」  
 なにかとミリに甘い零は、小さなお守り袋にスマートウォッチを入れてその紐をミリの首にかけて外から見えないように服の下に隠した。
 「これがあれば大丈夫だから」
 「うん。零パパありがとう!行ってきま~す!」
 零に手を振りながらミリが駆け出して行く、その後姿を見送っていると。
 「お前ばっかりずるいぞ!」と一騎の恨みがましい声が後ろから聞こえて、零は首をすくめた。




  
 一騎と零の作戦は大成功!オルゴールのある大きな公園から少し離れた場所でで遊んでいたミリは、零のスマートウォッチの音で友達とバイバイし、公園のオルゴールの音に見送られながら家路につく。
 すると、公園を出て少しした路地の植え込みからから、かすかにすすりなくような声が聞こえてきた。
 大き目の植え込みの陰にすっぽりと隠れるようにして、白い大き目のつばが付いた帽子をかぶった少女がうずくまって泣いていた。
 「どうしたの?」よく見ると泥だらけのスカートから出た膝が擦り剝けている。
 「転んでけがしちゃったの?ひざ痛いの?」少女の顔は見えないが、帽子がコクンと大きく揺れる。 
 (どうしよう、このままここにいたら帰るのが遅くなっちゃう。でもこの子をおいていくのもかわいそうだし……)
 悩んだ末ミリは、少女の手を取る。
 「ミリのお家がすぐそこなの!だからパパに怪我の手当てをしてもらおう!」そのまま少女の手をひいて店に向かった。




 「ただいまぁ~」ミリが店のドアから顔を出して声をかけた。
 「おお、ミリ。今日はちゃんと帰ってこれたな!約束守ってえらいえらい!」 満足げに笑って一騎が声をかけるが、ミリは店に入ってこようとしない。
 「ん?どうしたミリ?」零が声をかけても、ううんと首をふる。
 「あ~さては、洋服を派手に汚したんだな!しょうがないな~。ほら、早く入ってこい」そう言いながら一騎がドアのところまで迎えにくる。
 「えっとぉ。お洋服汚したのミリじゃないの」 
 「え?もしかして友達の洋服汚しちゃったのか?」
 「そうじゃなくて…」とオズオズっと横にずれると、後ろに大きな白い帽子をかぶり、泥だらけのワンピースを着た少女が立っていた。
 「誰?その子」 後ろから零が覗きんできて尋ねる。
 「わかんないけど、怪我してて泣いてたから一緒に連れてきちゃった……」
 「そか、わかった」と一騎はいうと、少女を促して椅子に座らせる。「ミリ、救急箱持ってきて。零、おしぼり」とてきぱきと指示を出して手際よく手当てを始める。
 「家の中だし帽子ぐらいとれば?」警戒を滲ませた声で零が言うと、少女は一瞬身を固くしたが、ゆっくりと帽子を取った。 
 「あれ?、昨日公園にいた子だろ?俺の手を「無礼者!」って振り払った」少女は小さくうなずく。