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【Buddy Daddies】NEVER LOST YOU

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 「そっか。あの時一緒にいた人はお家の人?……て感じじゃないか。お付きの人?」一騎が何を訪ねても少女は口を真一文字に結んだまま俯いている。
 「……よし、終わった!」手当てを終えた一騎は立ち上がって少女を見てから、ふぅっと小さく息を吐く。 
 「とりあえず、そのドロドロの服を着替えよう。ミリ、まだ着替えあっただろう?」昨日から泊りがけで来ているので、ミリの着替えは何着か持ってきていた。
  隣に立って心配そうに観ていたミリは、「はぁ~い」と返事をして少女の手を引いて2階に向かった。
 「誰だろう?この辺の子じゃなさそうだけど」
 「確かに、昨日の警護の様子からしてどこぞのお嬢様なんだろう」 
 着替えを終えた少女とミリは、楽しそうに何かを話しながら降りてくる、少女はストライブの長袖Tシャツにオーバーオールを身に着けていた。
 「へぇよく似合ってるじゃないか」 
 ミリは裾を大きく折って履いていたのだが、少し背の高い少女は裾を折る必要もなく、まるで初めからその服を着ていたようになじんでいる。
 多分、彼女の表情が硬さが取れて、年相応になったのもそう感じる一因なのだろう。
 「でしょ、可愛いよねエミリア」 
 「エミリア?」零が名前を口に出すと、エミリアは少し恥ずかしそうにコクンと頷く。
 「よし、じゃあ飯にしよう!ミリ手を洗っておいで!」一騎が促すと、ミリはこっちだよ~とエミリアの手を引いて手を洗いに向う。
 「日本人じゃないのかな?」
「さあな?」テーブルをセッティングしながら一騎は視線を二人に走らせた。



 

 今日はマンションに帰る都合もあり、午後は公園で遊ぶ約束をしていなかったミリは、店の片隅でエミリアと並んで絵を描いて遊んでいた。
 髪型と背格好が似ている二人は、傍でみるとまるで姉妹のようだ。
 カウンターの中には一騎と零が何かを作業をしている。零が何か言うとカウンターの上のパソコンに一騎が打ち込む。時折二人で頭を突き合わせて何かを話したりもしていた。
 エミリアはその二人の姿を見ながら、もくもくとクレヨンで絵を描くミリに素朴な疑問を投げかける。
 「どっちがミリのパパなの?」
 「カズパパも零パパもどっちもミリのパパだよ」絵を描く手を止めることもなく、ごく自然な感じでミリが答える。
 「そんなの変だよ」
 「そうかな?」
 「じゃあ、ミリのママはどこ?」
 「ママは遠くにいるの」
 「遠くってどこ?」
 「わかんない。でも遠くだから会えないんだ~」
 「……」 
 突然黙ってしまったエミリアの事が気になったのか、ミリは顔をあげた。
 「エミリアのママは?」
 「かあさまは、去年亡くなったの」
 「なくなった?」
 「病気で死んじゃったの」
 「え!」
 「ここはかあさまが育ったところなんだって」
 「ふうん」何を言ったらいいのかわからないという顔のミリに 
 「遠くにいてママに会えないんだったら、私もミリも一緒だね」
 「うん」
 「でも、ママに会えなくて寂しくない?」
 「平気だよ。だってパパ達が一緒だもん!ミリパパ達だぁ~いすき! でもね~。カズパパは怒るとすっごく怖いんだよ~。昨日だって、こぉんな感じで怒るんだよ」
 ミリは、指で目じりをクイッと上に釣り上げて、少し低めの声で『ミリッ!!』と怒って見せる。多分一騎が怒った時の真似のつもりなのだろう。 
 そのしぐさにエミリアは思わず、あははと声を出してわらった。一騎と零は作業の手をとめて子供たちの方を見た。
 「え?だってあんなに優しいじゃない。私には、零パパの方が怖そうに見えるけど」
 「零パパはいっつも優しいよ。カズパパに内緒でお菓子買ってきてくれたりするもん」
 ミリの発言を聞いてギョッとする零、「レ~イ」一騎は低い声をだして零を見た。
 「いいなぁ~ミリのパパ達はは優しくて」
 「エミリアのパパは?」 
 「え?父上は……」
 「ちちうえ?」
 「あ、パパの事」そう言ってからエミリアは遠い目をする。
 「父上はお忙しい方で、あんまり会ったことがないから、わかんない」
 「え?パパなのにあんまり会えないの」コクンと頷くエミリア。
 「いつもは教育係のハセガワと執事のジョージが私の世話をしてくれるんだけど、いっつも怒ってばっかりで怖いの」
 「怒ってばっかりなの?」
 「そう!私は何にも悪いことをしていないのに、『エミリア様!エミリア様!』ってすぐ怒るの」今度はエミリアが多分ハセガワという女性らしい人物の声真似ををする。
 「ふうん、でもね……」
 「?」
 「それは怒っているんじゃないんだって、零パパが言ってた」
 「??」
 「心配してるんだって。心配だからつい怒っちゃうんだって」
 「心配……」エミリアは思うところがあるのか、黙りこくってしまった。


 
 「ミリ、起きて。ミリ」零に肩をゆすられてミリは目を覚ました。隣では一騎がエミリアを起こしていた。二人で絵を描いて遊んでいるうちに、二人とも寝てしまったらしい。
 景色はすっかりとオレンジ色に染まり、空は少し暗くなり始めていた。
 「エミリア、悪いけど俺達そろそろ帰らなくちゃいけないんだよ。誰か迎えに来てもらうように連絡するけど、番号はわかる」一騎がスマホを見せると、エミリアは肩から下げたポーチからスマホを取り出し、電源を入れるとどこかに電話をかけ始めた。
 
 しばらくすると、昨日一騎の前に立ちはだかった女性(多分 ハセガワ)と、きっちりとスーツを着た白髪の紳士が迎えに来た。
 「エミリア様お探ししました。ご無事で何よりです!」 
 ハセガワと呼ばれた女性は、エミリアの姿を見るなり駆け寄って抱きしめる。
 「エミリア様がお世話になり、ありがとうございました。また、昨日は失礼いたしました」
 女性は、これ以上できないほどに深々と頭をさげて詫びる。エミリアはミリの洋服を脱いで泥まみれのワンピースに着替えようとするが、一騎はそれを制した。
 「エミリア、気にってるみたいだからその服は君にあげるよ。いいよな、ミリ?」一騎の足元に絡みつくようにして立っているミリの頭をなでると、ミリはうん!と頷いた。
 「エミリアまたな」零がいって手を出すと、エミリアはその手に軽くハイタッチをして応える。
 「それでは、私共はこれで失礼させていただきます。お礼はまた後程改めさせていただきます」白髪の紳士が頭を下げる。
 「いや、大したことはしていませんので」と一騎が手をふる。
 「エミリアまた遊ぼうね!」とミリが手を振ると、エミリアが帽子を手にミリの目の前に来た。
 「これミリにあげる。ご飯と洋服のお礼」
 「いいの!」
 「うん。私他にも持ってるから」
 「うわぁ。ありがとう!」
 
 走り出した車の窓から手を振りながら「また遊びに来るね!」と言うエミリアに、ミリも「うん!きっとだよ~!」と応え大きく手を振り返した。



ミリは、エミリアから帽子をもらったことがすごく嬉しかったらしい。ずっとニマニマしながら、眺めたりさすったりしている。
 「この帽子、可愛いよね~。零パパもそう思うでしょ?」
 「うん……」何回目だこの会話。
 「この青いリボンも可愛いよね~」