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【Buddy Daddies】NEVER LOST YOU

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 「青じゃなくて、ターコイズブルー」
 「たーこ…いず?」 
 「そう、ちょっと緑っぽいだろ、ターコイズブルーって色だよ」 
 「へぇ~~」リボンの色が聞き覚えのないものだったことが帽子の特別感を一層引き上げたのだろうか、ミリはキラキラと瞳を輝かせて たーこ、たーこ…と言いながらリボンをさすっている。
 確かに、白くてつばの広い帽子とそこに巻かれた色鮮やかなターコイズブルーのリボンは、見た目にも印象的だ。
 「ん?……」よく見ると、リボンにのところに紋章のようながものが彫られた金色の小さな飾りがついている。
 「なに?」帽子をかぶったミリが尋ねた。
 「こら~ミリ!車の中でその帽子かぶるな!後ろが見えないだろう!」
 「ほらミリ、あんまり触ってると帽子よれよれになるぞ」帽子を外して膝の上に置いてやると、ミリはえへへと笑いながら大事そうに手を添えた。


  エミリアは、開けることができない窓に打ち付ける雨の粒を眺めていた。
 ここはどこかのビルの高層階。ミリのところから帰ってきてから外出禁止にされてしまい、ずっとこの部屋で過ごしていた。
  雨は嫌いだ。大好きだったかあさまは雨の日に亡くなった。悲しくて、悲しくて……、ハセガワが止めるのも聞かずに、外に飛び出して雨の中で泣いた。 
 窓の外の雨粒がキラキラっと光ってつぅーっと流れ落ちる。
  「ミリは元気にしてるかな?」  
 思い出すのは、おひさまみたいなミリの笑顔とミリを見守る一騎と零のあたたかな視線。あれは夢のような時間だった。

 日本から遠く離れた異国の地に嫁いできたかあさま。かあさまはよく、日本から取り寄せた絵本を読んでくれた。エミリアは誰にも聞かれたくない内緒話を日本語でかあさまと話した。日本語はかあさまと自分だけがわかる秘密の暗号のような言葉だった。そのかあさまが亡くなってしまい、もう日本語を話すことなんてないと思っていた。それが寂しくて、仕事で日本に行くという父上に無理を言って同行させてもらったのだが。
 日本語でミリという友達とあんなに楽しいおしゃべりができるなんて思ってもみなかった。日本語はエミリアにとって、秘密の暗号から魔法の言葉に変わった。


 
 雨の休日。今日も3人で開店前のDinerに来ている。
 今日のミリのミッションは、お使いに行くこと。フレンチトーストの材料の買い出しを頼まれたのだ。
 零はフレンチトーストの材料を厳選(?)し、牛乳と卵は地元の農家さん達が出店している特売所のものを使い、パンは昔からやってるパン屋さんの食パンの組み合わせにした。
 「ミリ、お店の場所わかる?」心配そうな零。
 「大丈夫だよな、俺と何回も行ってるし。一応確認な、牛乳と卵は?」
 「農家さんのお店で買う!」
 「じゃあパンは?」
 「パン屋のおばあちゃんのお店で買う!」
 「よし合格!ここにお金を入れておくから落とすなよ」
 一騎はお金と買うものが書かれたメモが入った小さな小さなポーチを肩から下げてやり、仕入れ用のトートバッグを持たせると、ちょっと眉根を寄せてミリを見た。
 「で、どうしてもその帽子はかぶっていくのか?」 
 「うん♪」
 「雨降ってるけど」と零。
 「傘さしていくから大丈夫」
 「普通は雨降ってるときは、そんな大きな帽子はかぶらないんだぞ?」
 「いいんだもん、かぶりたいんだもん」ミリはむすっと膨れた。
 「汚しても知らないぞ?」
 「大丈夫だもん」
 「わかった。じゃあ気を付けて行ってこい」
  行ってきまーす!と元気な声とともに、雨合羽に大きな白いつばの帽子をかぶり、体に見合わない大きなトートバッグを肩から下げてビニール傘を差すという、一見するとなんともちぐはぐな格好のミリが意気揚々と出かけて行った。
  ミリは帽子をもらってからずっとかぶりたがっていた。でも、あんな真っ白な帽子を保育園にかぶっていくわけにもいかず、今度こっちに来た時なと我慢させていたのだ。まさか雨の中でかぶっていくことになるとは思ってもみなかったが、本人が喜んでいるのでまあいいか。ミリの後姿を見ながら一騎は思った。


  ミリはミッションを順調にこなしていた。 農家さんのお店では、いつも一騎と買い物に行ったときにちょっとおまけをしてくれるおじさんが、卵と牛乳をトートバッグに入れてくれる。 
 「はい、これレシートとおつり。落とさないようにポーチにしまいな」
 「はーい」
 気を付けて帰れよ!というおじさんの声に送り出されてミリはパン屋さんに向かった。
 いつもの公園の角を曲がって少し行った先に、パン屋さんが見えてくる。そのミリの少し後ろをゆっくりとついてくる影があることなど、ミリはみじんも気づいていなかった。


 「こんにちは、パンくださ~い」
 「あら、ミリちゃん。今日は一人?石油王のパパは一緒じゃないのかい」
 「うん。今日は一人でお使いに来たの」
 「あらえらいね。パンはいつもの食パンでいいの?」
 「うん!」
  パン屋のおばあちゃんは、カウンターを回ってミリの横にくると、トートバッグに焼き立てホコホコの食パンを入れてくれた。
 「う~んいい匂い」
 「焼き立てだからね!あとこれおつりね。……おや、ミリちゃんステキなお帽子かぶってるね~」
 「えへへ……」
 うん!やっぱりこのこの帽子をかぶってきてよかった!帽子を褒められたミリは上機嫌でバイ~バ~イと手を振って店を後にした。




  親ばか過保護Daddiesは、ミリの帰りを今か今かと待っていたが、想定の時間を過ぎてもミリは帰ってこない。
 「遅くないか?途中で寄り道してるのかな?迎えに行ってみるか」
 「信じて見守るんじゃなかったのか一騎」
 「そうだけど。……それでも、時間かかりすぎじゃないか?……あ~、そぉ言えば、買い忘れたものがあったんだ~。俺ちょっと買ってくるわぁ~」
 「あ、一騎!」
 言い終わらないうちに店を飛び出して行く。
  一騎が店を出て少し歩くと、視線の先に道に放り出されたビニール傘がゆらゆらと揺れていた。
 よく見るとさっきミリの持たせてやったトートバッグも転がっている。
 「ミリ……」心臓がドクンっと大きく鳴り、嫌な予感が駆け上がる。

  零の実家に襲撃をかけたあの日から組織の事は頭を離れたことはなかったが、それからなんの音沙汰もなかったし、最近は新天地での準備に忙しく過ごしていて……。すぐにでもミリを探し出さなくてはいけないのに、言い訳と反省ばかりが頭をよぎる。
 「油断してたな……」(やっぱり一緒についていけばよかった)


  一騎が店を出て5分もしないうちに零に電話がかかってきた。
  「零!至急久ちゃんに連絡してくれ!ミリが攫われた!」
  「☆?!!」
  「攫われてからまだ時間が経っていないと思うから俺はこの辺りを探してみる」
  「わかっ…た」
  零は久太郎に電話を掛けながら、嫌な汗が背中を流れるのを感じていた。



 「今のところ、組織に怪しい動きはないと思う。それに、あれから何カ月経ってると思ってるんだ、今更だろう?」
 「それはそうだけど。でも、可能性はゼロじゃないだろう?……あ」
 「なんだ?」