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【Buddy Daddies】NEVER LOST YOU

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 見るからに屈強そうな男達が異国の言葉で上機嫌で話している。その中の一人だけきっちりとスーツを着こんだ男にボスと見られる男が声をかけた。
 「皇太子は妃を亡くしてから日が浅い、しかも、その忘れ形見でほとんど城の外にも出さずに大事に育ててきた娘を人質に取られたんだ。『氷の刃』と呼ばれるファラ-ズ皇太子も今回はうんと言わざるをえないでしょう?」
  話し掛けられた男は、神経質そうにメガネをさわった。
 「せ、せめて、目隠しを外してエミリア王女の顔を確認させてもらえませんか」
 「事務官殿は我々の仕事が信じられないと?」事務官と呼ばれた男は、ギロッと睨まれ肩をすくめる。「しかし私にも確認する義務が…」
 開け放たれたドアの先には、後ろ手で縛られ、目隠しをされたまま椅子に縛られた少女の姿があった。 
 「あなたも見たでしょう、帽子の王家の紋章を。それに『父親が石油王だ』と言っていたと訳してくれたのはだれですか?あなたでしょう」
 事務官と呼ばれた男は、男たちの中で唯一日本語がわかる存在らしい。彼がパン屋での会話を聞き、帽子の紋章を見てミリをエミリア王女だと勘違いをしたのだ。
 「しかしですね、王女だとしたらお召し物がいささかお粗末ではないかと……」
 それもそのはず、椅子に縛られているミリが着ているのはお風呂のおもちゃのアヒルをモチーフにした黄色い雨合羽と長靴だ。
 今は背中に隠れて見えないがフードには大きな目玉と赤い小さなくちばしもついている、ミリお気に入りの逸品だ。
 「がははは、事務官殿は流行というものに疎いですな!」
 「流行…?」
 「先日のエミリア王女の服装を見たでしょう?どこかに出かけて行ったと思ったら、靴磨きの小僧のような格好で帰ってきたじゃないですか?ここは日本ですよ。日本の流行なんですよ」
 日本人の考えることはわかりませんなぁ~などとのんきなことを言って笑う。
 「そ、そうでしょうか…」
 ボスらしき男は、いまだに納得のいかない顔のをした事務官に舌打ちすると、腹いせのように急に大きな声をだした。
 「それで、皇太子からはまだ連絡はないのか?」
 「いえ、まだなにも」
 「娘の写真は送ったんだよな」
 「はい、確かに」

 

  店を出た二人はとりあえず、零のスマートウォッチのGPSの軌跡を追って山中に車を走らせた。
 『聞こえるか』インカムから聞こえる久太郎の声に、「聞こえる」と一騎が応える。
 『車両の特定ができた。黒のワンボックスのレンタカーだ。今画像を送る』 
 車を停めタブレットを見ると、送られてきたのは犯行現場付近の防犯カメラの動画だった。 
 白い帽子に雨合羽。大きなトートバッグの紐をしっかりと持ちビニール傘を差したミリが歩いてくる。
 すると、わき道から黒いワンボックスがスッと現れて停まり中から男が現れた。そのままミリの後ろに近づくと、布のようなものをミリの顔に押し当てアッという間に車に連れ込んでしまった。 
 傘を打つ雨音のせいかミリは、男に気付いた様子はなかった。
 「くっそ、あんな小さな子になんてことを」怒りを滲ませた一騎の声が車内響く。
 「一騎、ナンバー!」零が地鳴りのような低い声で唸るように言った。
 動画の中の車は何事もなかったように動き出し、カメラの目の前を通り過ぎて行く。二人はそこに映し出されたナンバーを頭に叩き込んだ。
 『お前達はあまり見たくない動画だったかもしれないが、見た通りミリは男の顔を見ていない。つまり口封じの必要もないということだ。しかも王女だと思っているんだとしたら、手荒な真似はしていないはずだ』
 「俺にとっちゃ、あれでも十分手荒な真似だけどな」
 『一騎冷静になれ。まだ、車を借りた人物の特定ができていない。誰がミリを攫ったのかによって対応も変わってくる。悪いがもう少し時間をくれ』
 「わかった。いろいろ悪いな久ちゃん」
 『また連絡する。そっちも何かあったら知らせてくれ』



 しばらくして、山道の頂上に近い場所で目標のワンボックスが停められたコテージ風の建物を見つけた。
 「久ちゃん、アジトを見つけた」
 『GPSをフォローする。……よし、こちらでも確認した。それで、様子はどうだ?』
  二人は少し離れたところに車を停め、辺りの様子をうかがう。晴れていればかさかさと音がしてしまう落ち葉も、濡れている状態なら足音を忍ばせることができる。
 今は雨はもう霧雨になり、夜陰にうまく二人の存在を隠してくれた。
 「見張りは、庭に一人、裏手に一人、そして玄関に一人。停められている車の乗車定員から考えても少なくとも3名は中にいるだろう」
 『了解、今作戦を準備中だ。何か変化があったら報告してくれ』
 「わかった、こっちでも中の様子を探ってみる」
 通信を終えて一騎はもう一度建物を見た。コテージの窓にはぶ厚いカーテンがかけられているが、ところどころ薄明かりが漏れ、中に誰かがいること示している。
 一騎と零なら一気に倒せない人数ではないが、中の様子もわからずミリが人質に取られている以上手荒な真似もできない。
 すると、遠くからかすかにバイクの音がした、坂を上ってこちらに向かってきているようだ。



 「ハイハイ、バイクを止めて」薄暗い山中で突然ライフル銃を振りながら現れた人影に、ドライバーは慌ててバイクを停める。
 「実は細かいことは話せないが、この先は通行止めだ」
 「で、でもピザを届けないと……」
 「一般人に危険にさらすわけにもいかないんだ。だから、ここから先は俺が配達するから協力してもらえないか?」
 狙撃兵のような出で立ちで、鋭い目つきで無言で銃口を向ける零の姿を横目でみると、青年はゆっくりと頷いた。 
 「久ちゃん、中の様子を探れそうだ!奴らピザを頼んだらしい。それを届けるふりをして見てくる」
 『そうかわかった。気をつけろよ』
 「ラジャ」
 「奴らが頼んだピザじゃなかったらどうするんだ?」
 「そん時はそん時だよ!俺に任せておけって」一騎は派手なピザ屋のロゴの入った上着とヘルメットを着こみ、小さくウインクするとバイクで山道を登って行った。


 「すいませ~ん。ご注文のピザをお届けに参りました」
 ドアのところにいた見張りに声をかけると、ドアをに手をかけ無言で手招きをする。一騎は、庭と裏手の茂みの中から自分を狙う銃口に視線を走らせる。よく訓練された隙の無い動きが軍隊を相手にしているのだと実感させた。
 玄関先にいた見張りの男に続いて中に入ると、男は一騎からピザの箱を受け取って奥に引っ込み聞いたことのない言葉で誰かと話している。代わりに玄関先に出てきたのは、スーツを着て眼鏡をかけたやせ型の男だった。 
 「2箱頼んだはずですが?」
 「あ~れ~そーすか?おっかしいな~?店に確認とってもいいすか?って、ここ圏外じゃん!すんませーん電話借りてもいいですか~」
 そういうと男が止めるのも構わずズカズカと部屋の中に入って行く。
 「あ、困ります。ちょっと…」 
 リビングにはさっきの男の他にひときわ体格のいい男がいた。
 「さーせん、電話貸してくださーい」男たちにおどけた笑顔で愛想を振りまくとさっと室内を確認した。