交差する通路
次の日、マサキは風の魔界にある風の神殿の前にいた。
「…久しぶりだなぁ、風の神殿。」
虹のカイトで来ることができる、そこまで広くない土地に、大きな神殿がぽつんと、しかし存在感を放って建っていた。
「コーーーール!」
マサキはインプのハーミルとキューピッドのパクを呼び出した。
「ハーミル、パク、ナタナエルが用があるみたいなんだ。」
「ナタナエル様が…?何かしら」
ハーミルは紫色の悪魔の姿をしたデビルで、面倒見のいい面がある。
「ナタナエル様に会うの、久しぶりだから緊張するッス。」
パクは白い服を身につけたテンシで、
「マジっすか!?」と「〜ッス」が口癖だ。
おっちょこちょいな面がある。
「わかんないけれど…とにかく行ってみるか。」
そして、神殿の中へ入っていった。
「…来ましたね、マサキ。」
ナタナエルはシュッとした縦長のシルエットに、光沢のある肌色のリボンを何枚も飾りつけたような姿のテンシである。
「ハーミルとパクも連れてきてくれたんですね。」
ナタナエルがハーミルとパクに目を向けると、ハーミルとパクは挨拶した。
「ナタナエル様、お久しぶりです。」
「ナタナエル様、お久しぶりッス。」
ナタナエルは頷いた。
「みんな元気そうで何より。さて、マサキ。
地上の世界で変わったことはありませんでしたか?」
「!そうだ、最近、原宿の天気がおかしくなってるんだ。原因もわからないってニュースでやってたな…。」
ナタナエルは、なるほど…と呟いている。
「マサキ、タカハルから聞いているかもしれませんが、天界のエタニティパレスが、未知のデビルによって襲撃されました。
人間界でもそうですが、今までにない事が起こり始めようとしているのです。…マサキ、ヴィネコンを出してもらえますか?」
「はい!」
マサキはヴィネコンを取り出して起動する。
ナタナエルは、黒いチップのようなものを、ヴィネコンに近づけた。
デビルの図鑑、デビダスの画面が反応するが、少しすると、
『NO DATA』の文字が画面に現れた。
「これは…?」
「前にタカハルがこちらに来た時に、ヴィネコンがキャッチした未知のデビルの波動を私の特殊な力で形にしたものです。
……マサキ、近々起こる事というのは、新しいデビルチルドレンの覚醒、でしょう。」
「……。」
マサキは、前に歩道橋で会った少女のことを思い出していた。
「マサキとタカハルのヴィネコンにはこのような表示になり反応しません。しかし、然るべきデビルチルドレンのヴィネコンではちゃんと認識するはずなのです。
マサキ、きっとあなたは、次のデビルチルドレンと出会うことになる…その時になったら、このチップを渡してほしいのです。
きっと何かのヒントになるでしょう。」
「わかったぜ!」
そうしてマサキは、チップを受け取った。
「そして、ハーミルとパクを呼んだのも、次のデビルチルドレンの事なのです。
マサキの冒険も壮大なものでした…が、今度のデビルチルドレンに与えられる冒険は、もっと壮大で、一筋縄ではいかないものになるでしょう。新しいデビルチルドレンの冒険に、ハーミルとパクの手助けが必要になるはずです。…その時が来たら、ハーミルとパクを新しいデビルチルドレンの元へ送り出したいのですが、いいでしょうか、マサキ?」
マサキは、少し間を置いた後答えた。
「…いいぜ。冒険が大変だったのは身に染みてるからなぁ…。
ヒントがないと進むのが大変だったところもあるし、その方がいいって!」
「ハーミルとパクも、いいですか。」
「わかりました、ナタナエル様。」
「了解ッス!」
「…では、その時が来たらよろしくお願いしますね。」
そしてマサキ達は、神殿を後にした。