眩む、怪しい光
「こんにちは。」
図書室のお姉さんは、マサキやジン達を見て軽く挨拶をした。
こんにちはとそれぞれ挨拶を返し、レナが図書室の右奥の角の部分に向かって脇目もふらず早足で歩いていく。
しかし、図書室の角に隣接する棚をレナは見ていたが、少しの間上下に視線を動かし、あれ〜?と声を上げた。
「おっかしいなぁ、昨日は確かにここにあったのに…?」
「本当にあったのか?レナ。」
ジンは少し不満げである。
「ほんとよ!」
アキラが、
「もしかしたら、誰かに借りられているんじゃないか…?ちょっと俺、図書室の人に聞いてくる。」
と言って、向かって行ってしまった。
マサキが、
「俺たちも、探すの手伝います!」
とレナに言った。
「ありがとう。それじゃあ、お願いしよっかな。」
「どんな本なんだよ、レナ。」
とジンが尋ねる。
「えーっと、カバーが白で、でも光沢が若干ある感じだったわ。…でも、あちこちの部分カバーも剥がれてる感じで…」
と話したところで、
「ジン!レナ!見つけたぞ。」
戻ってきたアキラが、辞書のような分厚さの白い本を持っていた。
「あー!!これよ!」
「図書室のお姉さんが、知らない本だったからカウンターのところに持って行っていたんだ。貸し出しはできないけれど、図書室の中で読みたいならどうぞって。」
「アキラさすがだぜ!!
みんな!早速見ていいか!?」
みんな賛成し、ジンはアキラから図鑑を受け取り、開く。
「グリフォン…頭部と前脚、翼が鷲で、胴と後脚がライオンのデビル…へぇー、すごいなぁ。」
その時、図書室の入り口から、マサキのクラスメイトの子が声をかけてきた。
「あ!マサキ君タカハル君!今学校に残ってるクラスの子に少し伝言があって…ごめんね!ちょっとだけこっち来てもらってもいいかな?すぐ終わるから!」
マサキとタカハルは、少しの間離れる事をジン時に伝え、入口へと向かっていく。
ジンは最後のページを見て、目を輝かせた。
「アキラ!レナ!ここ見てくれよ。最後のページにデビルを呼び出すケイヤクの言葉が書いてある!!やってみようぜ!!」
「うーん、さすがに無理だと思うし、私はこのまま見てるわ。」
「えぇ…ダメじゃないかもしれないじゃないか!」
アキラは、その二人の様子を見ながら、
「いいぜ、俺もやってみよう。」
と言った。
二人は、ケイヤクの言葉を唱えた。
『ケヤガ・カ・リカヒ
レフ・アチミ・ミヤ
イニシエの ケイヤクに従い 姿を あらわせ
……コーーーーール!!』
レナは、少しの間、何も変わらない図鑑の様子を、ほらやっぱりと思って眺めていた。
…のだが。
急に、明るいところから暗いところに入った時に何も見えなくなる暗順応のような感覚で視界が一瞬遮られた。その後、視界が戻ったかと思えば、またすぐに一瞬、その現象に視界を遮られた。
色は赤外線のような暗さを含んだ赤のそれだ。
そして収まったかと思えば、また二度、その現象が起こった。
そしてわかった。とりわけ濃く、発光の度合いが強い赤が、その図鑑から発せられていることに。
起こった最初の方は、目が眩んだ時のようにちゃんと見えていなかったのだ。
「….えっ、変よ!!なんか光ったわよ!?」
そして、その後、その光はだんだん間隔を短くして数回起こっていく…
そして、急に図鑑から少し離れた場所に、青白く、エネルギーがぐつぐつと煮えたぎるような球体のものが現れ、その下にあたる図書室の床からは、水色、緑、ピンク、赤が混じる火のような形状の光が円状に出ていた。
その後、青白いエネルギーの球体は、独特の形に変わる。
ロールシャッハテストに使われてそうな形で、それは開店祝いに使われていそうなスタンド花のようにも、二足歩行で両側にツルのような、鎌のようなものを垂らしたモンスターのようにも見える。
そして、それはすぐに消え、地面から急に何者かがバサバサバサバサッという音を立てながら、滝が地上から天に逆流しているかのように、数多く出てきた。
青い翼を生やした、両腕両脚がついた鳥のようなドラゴンのような生物が、たくさん図書室の空中で留まっていた。
身体の色は全体的に青く、首元から腹、尻尾の先まではオレンジ色の部分が連なっている。
それらは、空中からジン達を品定めするように見ていた。そして、先頭にいた一匹が話し出す。
「我らは帝国軍第一部隊ガーゴイル。
…俺達を呼び出したのはお前達か…??
お前達のようなひ弱な人間共に関わっている暇はないわ!!
わざわざヴァルハラからやって来たというのに…余計な手間を取らせるな!!」
ガーゴイルと呼ばれる生き物は敵対心を持っているようだったが、ジンは興味を持って見ていた。
「すげえ…!見たことのないデビルだ…!!
しかも俺たちが呼び出した…」
レナも驚きながら話す。
「えーっ、マジ?これってチョー怪しいよ!」
図書室のお姉さんは、突然のことに驚きの表情で固まっている。
アキラが、
「みんな、気をつけろ」と言っている。
そこへ、ちょうどマサキ達が入り口から入ってきた。
「おーい!お待たせ…って…!?デビルか!!」
後ろのクレイもすぐ反応する。
「マサキ!見たことのないデビルだ!!」
そしてガーゴイル達は、パートナーを連れているマサキとタカハルを見ると目の色を変えた。
「ヌアアアアア!!!
ヴァルハラだけでなく、この世界にもこんな忌々しい存在がアアア!!!…ッ!排除!!排除を望む!!!こいつらは排除しなければアアア!!!」
その後、ブツブツとほんの少しの間、ガーゴイル達は何かを話し合い、その後、お互い頷き合い、ジン達の前に一匹、
図書室のお姉さんの所に一匹、それ以外はマサキとタカハルの方に二手に分かれて集団で向かって来た。
「行くぞ!!デビルチルドレェェェェェェン!!!我らが帝国の為に!!!ゴミは邪魔で不要な存在でしかないのだ排除する!!!」
マサキは、ジャカッとデビライザーを構える。
「クレイ!!久しぶりに…暴れるぞ!!」
「ああ!!俺達の力を見せてやる!!」
図書室のお姉さんの所に向かって来たガーゴイルは、ひゅっとお姉さんの首元に手の爪を至近距離まで近づけて、正面に向かい合い、尻尾をお姉さんから少し離れた位置でくるりと、お姉さんを中心に円状に巻くように位置させ、逃げられないようにしていた。
「おいお前!!今すぐこの世界の全人間に伝えろ、この世界はもう終わりだと!!未来は無い。諦めろ。破滅の瞬間まで、せいぜい絶望の檻の中で過ごせばいい。ハハハハハハハハハハ!!!」
お姉さんは、固まったまま歯をガチガチと鳴らしていた。
「お前はデビルとは若干違う力のオーラを感じる…が、こういうパートナーを連れた人間は俺らにとって碌なことない。…つまり、排除対象、だ。」
タカハルはエンゼルライザーを構える。
「また未知のデビル…。」
レイは挑戦的な眼をしていた。
「はぁ、また下品なデビルとの戦いってわけ……いいわよ。エタニティパレスの時みたいに、返り討ちにしてあげるわ。」