開かれた新しいゲート
図書室では、アミがジン、アキラ、レナに召喚器のデビライザーについて話している所だった。
マサキが図書室に入り、レナ達のところへ近づいていくと、ジンが気がついた。
「あ!おかえりー、…あれ、もう一人の友達は…?」
「あぁ、タカハルは、妹が原宿タワーにいるみたいで、迎えに行ったんだ。」
「そっか。今アミから、話の続きを聞いていたんだ。俺とアキラは、デビルの力を持つデビルチルドレンっていう特別な存在らしいんだぜ!」
ジンは目を輝かせている。
アミはマサキを一瞥した後、ジンやアキラに話し出した。楽しそうなジンとは対照的に、どことなく深刻そうな表情をしていた。
「ジンさん、では話を続けますね。こちらが先ほどもお話しした、デビライザーという、デビルの召喚器です。
仲魔になったデビルを呼び出したり、場に出ているデビルを入れ替える時にも使います。
…詳しくは、パートナーのデビルがそれぞれ教えてくれるでしょう。
これからは、いつもデビライザーを持ち歩いてください。
そして、こちらも大切な物です。」
そう言って、ジンとアキラの前に、楕円形の形のノートパソコンのような物をそれぞれ差し出した。
(もしかして、これ、ヴィネコンか…?)
とマサキは思った。
マサキの持っているヴィネコンは、長方形型のもろにノートパソコンの形をしているが、
ジン達の前に差し出されている物は、だいぶコンパクトな印象である。
「こちらはヴィネコンと言って、主にデビルの事を調べる事ができる機械です。
他にも、ヴィネセンターという仲魔にしたデビルが送られる機関があるのですが、そこにアクセスして、デビライザーの方に戦う仲魔をセットしたり、並び替えをしたりできるのです。」
アミは、そう言いながら、ヴィネコンの一つを起動させて、カチカチとキーボードを打ち、何かの画面を出そうとしているようだった。
「そして、これも大事な機能です。
デビダスというのですが、デビルのデジタル図鑑のような物ですね。
これでデビルの属性、使える技や魔法、デビルの詳細も知ることができます。」
アミは、ヴィネコンを触りながら、ジン達にその画面を見せている。
画面には、先程戦ったガーゴイルの姿と詳細のデータが映っていた。
「これは、さっき戦ったガーゴイル…」
アキラが呟く。
「…はい。一度戦ったことのあるデビルなら、認識します。」
アミがそう言った後、ふぅ、と軽くため息をついた。
マサキはナタナエルから預かった黒いチップの事を思い出し、早速話す事にした。
「あの、アミさんって言うんですよね?
実は俺も…デビルチルドレンなんですけど、
ナタナエルっていうデビルから、この黒いチップを預かっていて…新しいデビルチルドレンが現れたら、渡してほしいって。」
「ええ!?」
ジンは驚いている。
マサキに襲いかかってきたガーゴイルは、デビルチルドレンと叫んでいたが、その時ジン達は別のガーゴイルと話していたため、耳に入っていないようだった。
アミは落ち着いた様子だった。
「えぇ。図書室に入ってきて、すぐにわかりました。デビルチルドレンはパートナーを従えていて、特有のオーラを持っている。それが私にはわかるのです。」
マサキは黒いチップを取り出し、アミに渡した。
「前にタカハルが、天界で未知のデビルと戦ったんだ。そのデータをナタナエルが持ってて、何かのヒントになるって言ってたけど…」
「ありがとうございます。」
アミが受け取り、ヴィネコンに近づけていったところで、ブゥン…と音がし、デビダスの画面が変化した。
画面にあったガーゴイルの姿の部分が、緑色で単眼の、人型のような二足歩行したデビルに変わる。その横には詳細の文が書かれていた。
(!俺のデビダスには反応しなかったけれど、こうなるのか…)
マサキは心の中で呟いた。
アミが話し出した。
「!これは…、バロールというデビルです。
詳細を読み上げますね。
バロール…睨んだだけで人を一瞬で殺してしまう『魔眼』という恐い目を持つ悪い神」
「え!!デビルって、まさかそんなヤバいのがうじゃうじゃいるの!?」
レナは身を乗り出した。
アキラも驚いた表情で画面を見つめている。
「皆さん…、私は、ヴァルハラという世界からこの地上へやって来ました。
私の世界は、前は平和に暮らしていたのですが、急に帝国軍と名乗るデビルの集団が現れ、私達の世界を征服しようとし始めたのです。
そして、私を含め、それに抗おうとしている集団が反乱軍。
今、ヴァルハラは帝国軍と反乱軍に分かれて戦っているのです。
…そして、このバロールは帝国軍側によくいるデビルです。」
「そんな…」
マサキはそう答えるしか出来なかった。
アミがヴィネコンのボタンを押すと、再び画面が変わり、また新しいデビルの絵面が出てきた。
今度は白いライオンに乗った少女だ。
アミが、
「このデビルは私も初めて見ます…」
と呟いている。
そして、詳細を読んでいった。
「キュベレ…大地をつかさどる動物達の女王。戦争が大好きで、ライオンに乗って戦場を駆け回る」
「え…つまりどう言う事だよ!?
こんなデビルがいてすげーって思うけれど…戦争…!?」
ジンは初めて見るデビルに興奮しつつ、混乱しているようだった。
「わかりません…何かの暗示かもしれませんね。
現に、ヴァルハラは戦争の状態になっています。」
アキラが口を開いた。
「さっき初めて戦ったガーゴイルも、時の歪みが何とかって話してたな…
それも関係しているのか?」
アミはそれを聞いた瞬間、はっと何かに気がついたかのような表情になった。
「!そうだ、時の歪み……。
アキラさん、すみません。ヴァルハラの戦争と、時の歪みについての関係は、今のところ私にはわかりません。
…みなさん、ちょっと私と一緒に来てくれませんか?
もし、本当に時の歪みが出現したのであれば…大変な事になってしまう…。この建物の中に、もう出ているのでしょうか…」
ジン達は了解し、マサキが最後に図書室の鍵を締め、アミと共に学校内を歩いていた。
学校の廊下の中央近くまで来た時に、ジンのクラスメイトらしき人が話しかけてきた。
「お!ジンー!まだ学校にいたんだな。
そうだ、さっきちょうど面白い物見つけたんだぜ?
不思議クラブのネタにできそうだなって思ってさ!」
「面白い物…?」
ジンはそのクラスメイトの後に着いて行き、アミ達も一緒に向かった。
「ほら〜、見てみろよ、なんか初めて見る感じだろ?」
クラスメイトの少年が靴箱近くで入り口の方を指し示した先に、藍色の球体があった。
その中を、薄い黄色、薄い紫色、はっきりした水色の火の玉のようなぼうっとした存在が、それぞれ自由にぐるぐる動いている。
「最初はデジタルの映像?かと思ったけれど、それにしちゃあよくできてるよな〜。なんか気味が悪いから触ってないけど。」
とクラスメイトは感心して見つめていた。
レナがアミに話しかける。
「アミ、もしかして…」
「えぇ。これが時の歪みよ。
火の玉みたいに見えるのは、光と影で、こういう風に渦みたいになっていて…この世界の時間の流れが流れなくなった時に現れてくる、時間の歪みなのよ。」
作品名:開かれた新しいゲート 作家名:きまま