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照観地獄八景亡者戯

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  SCENE4 船着き場

「ということで、私達は再び船着き場に来てこれから船に乗って渡らないといけないのですが・・・」
「タダで乗せるわけには如何!」
「・・・とまぁ、渡し守の鬼が言うように、船に乗るにもお金がいるわけです。先生、お金持ってます?」
「地獄で使える金などもっていないぞ」
「棺桶に、冥銭を入れてもらってないですか?」
「自分が死んだことすらさっき知ったところだぞ。棺桶の中のことまで知る由もないな」
「ちょっと、袂を探ってもらえます?
「・・・ん?何か入っているようだな。今まで、重さを感じなかったから気づかなかったが」
「とりあえず、全部出してもらってよいですか」
「ちょっと待て。・・・よし、コレで全部のようだ」
「ひのふのみの・・・。かなり有りますね。先生、意外と人徳あるんですねぇ」
「ふむ。自分で言うのも何だが、他人に好かれるような人間では無かったから、人付き合いなぞ数えるほどしかないぞ。これは、おそらく嶺井戸の当主だろうな」
「嶺井戸の当主、ですか」
「ああ、あそこの当主はなんだかやけに俺の絵を気に入っておってな、終いには神格化しおって付き合うのも億劫だったが、金が必要だったから仕方なく付き合っていたな。そういえば、何時だったか『親類縁者もいないから、俺が死んだらあとは頼む』と言っていたことがあってな。それを律儀に守ってくれたのだろう」
「なるほど。まぁ、誰が冥銭を入れたのかはともかく、これで渡し賃はどうにかなりそうですね」
「渡し賃など六文でよいのだろう。現代だと幾らになるのだ?」
「聞いてみましょうか。船頭さん、お支払い幾らになりますか」
「なんで死んだのか、死因を言え。それで、渡し賃が決まる」
「死因で変わるだと。六文ではないのか」
「昔はそれでよかったんだがな。最近は亡者の数も減ってきているんで時価、じゃない死価になっているのさ」
「世知辛い世の中だな」
「えーと、先生の死因はっと・・・。あー、コレですね」
「ん、どれ。・・・おおう、コイツはどんだけ恨みを買ったんだ。最近は見掛けなくなったが、今の時代コレは引くわぁ」
「あー、やっぱりですか」
「何だ?オレはなんで死んだんだ」
「ああ、いえなんでもないです。そんな珍しいものでもないので」
「しかし、鬼が引くような理由なのだろう。珍しいのではないのか」
「ああ、いえまぁ、最近では珍しいだけなんで。ええ、死因としては特に珍しいものでもないので」
「む、そう言われると余計にに気なるだろうが。言え。オレはなんで死んだんだ」
「ジュサツ、ですね」
「ジサツ?。自殺ならば自分が死んだことに気づかないことはないだろう」
「いえ、ジサツでなくジュサツです。『呪い殺す』の呪殺です」
「呪殺!? オレが? 呪われるようなことをした覚えなどないぞ。誰だ!俺に呪いをかけたやつは誰だ!」
「いやー、そこまでは・・・」
「くそ! 何処のどいつだ! 俺はまだ描き切っていないというのに」
「まあ、今更そんなこと気にしても仕方ないですよ。で、幾らになります?」
「普通、呪殺は四苦八苦の苦しみがあるので三十六と七十二で百八になるんだが、コイツは記憶から消したいくらい苦しんだんだろうからそれに百掛けて一万飛んで八百だな」
「いい加減な計算だな。ボッタクリじゃないか」
「まぁ、死価なんてそんなものですよ。それじゃ、コレで」
「おう、毎度。よし、それじゃ船を出すぞ。早く乗ってくれ」
「さぁ、先生行きますよ」
「だから、押すなと・・・」

  SCENE5 六道の辻

「さ、先生降りますよ」
「だから押すな、危ないだろうが。足を踏み外して落ちたらどうする」
「いやー、なんか癖みたいになっちゃって」
「まったく・・・。それで、これから何処へ向かうのだ。というか、川を渡ったということは、オレはもう生き返れないということか・・・」
「先生、三途の川まで気たら渡ろうが渡るまいが生き返れませんよ」
「しかし、世の中には三途の川で、祖父や先祖に『帰れ』と言われて生き返った者もいるではないか」
「あー、そんなの全部夢ですよ。妄想ですよ。死ぬ予定のない人を三途の川に連れてくるわけ無いじゃないですか。そんなこと死たら、閻魔様にものすごく叱られますよ。尋常じゃなくらい怖いんですから、閻魔様」
「ふむ、そういうものなのか。まぁいい。それでここはどこだ。なんだか賑わっているところだな」
「ここは『六道の辻」と呼ばれていまして、観てください。船着き場から六方向に道が出ていますでしょう」
「おお、確かに六本道があるな」
「ええ、それで『六道の辻』と呼ばれているのですが、ここには寄席や芝居小屋、映画館、百貨店にレストラン、バーやキャバレー等々、色んな店がありまして、常に亡者や鬼たちで溢れているところなのです」
「なるほど。つまり銀座や仲見世のようなところか。それは賑やかだな」
「ええ、それに芝居や寄席なんかは出ている人が豪華でなんですよ。特に、歌舞伎座の看板見てください」
「どれ、浅野内匠頭に市川團十郎、大石内蔵助が市川團十郎?、吉良上野介、市川團十郎・・・って、全部市川團十郎じゃないか!」
「ええ、初代から十代目までのオール市川團十郎の忠臣蔵』。夢の共演ですよねぇ。あと、寄席なんかも」
「五代目古今亭志ん生、八代目桂文楽、三代目三遊亭金馬、六代目三遊亭圓生、五代目柳家小さんか。ん?春風亭柳好?あいつはまだ生きているだろう?」
「え?どれどれ。ああ、よく見てください左肩に『近日来演』と書かれてますよ」
「ああ、なるほどな。地獄ともなれば死に時もわかるか。しかし、これはなかなか楽しめる場所のようだな。まさか地獄にこのような場所があるとはな」
「地獄の鬼も娯楽に飢えていたようで、最初は『出雲の阿国』が踊っていただけなんですが、芸達者なものが増えてくるにしたがって今の様になったそうですよ。どうです、何処か寄って行きますか」
「いや、やめとこう。人が多いところは苦手でな。それよりも、さっさと閻魔のところに行こう。面倒なことは早く済ませたい」
「そうですか。では、先に進みますか」

  SCENE6 閻魔庁

「次の亡者、入れ!」
「大王、今の亡者で今日の裁判はおしまいです」
「なに? 手元にはもう一枚書類があるぞ?」
「ああ、すみません。連絡がいってませんでしたか。其の者の行き先は地獄から外れまして」
「そうか。では、今日はもう上がって良いのだな」
「はい、お疲れ様でした」