特別への一歩
「ぁ……、う…」
ウェアから逸物が引き摺り出され、外気に触れると尋常でない羞恥心が襲ってきたが、何か文句を口にする前に手のひらにそれを包み込まれて上下にゆるゆると扱かれ、言葉は吐息に変換されてしまう。
既に先走りが溢れ出ていて、もっと触ってくれとばかりにネツァワルピリの手を濡らした。
びくびくと大袈裟なほど腰が震え、膝が崩れそうになる。
「んんっ……く、」
「…ガウェイン殿、声を…聞かせてほしい」
頭上にやや掠れ気味の色気のある声が降ってきたが、そんな恥ずかしい頼みを聞いてやれるわけがない。
片手で口を覆ったまま、拒否の意思表示のため顔を横に背けると、顔を向けた側の壁にネツァワルピリが肘をついてきた。
そして一歩、こちらに近づき更に身体を密着させてくる。
反り返った雄が相手に当たってしまうのではと、ガウェインが慌てて視線を下にやったとき。
目に飛び込んできた光景に顔が引き攣った。
ネツァワルピリもいつの間にか雄の象徴を取り出しており、己のもの以上に立派に成長している。
…なんだか、色も形も違うそれが、まったく異質な別物に感じられてたじろいでしまう。
目を逸らすことができず硬直していると、ネツァワルピリはそれを手で支えてこちらの裏筋に亀頭部を擦り付けてきた。
「な……あっ、やめっ…」
…まずい。
視覚への刺激が強すぎる。
ならば見なければいいと理屈ではわかっているのだが、あまりの衝撃にそこまで頭がまわらない。
自らの先走りを潤滑油に見立ててぬるぬると擦り上げられると、もどかしいほどの弱い刺激に腰が捩れる。
が、刺激に耐えかねていたのは自分だけではなかったようで。
ネツァワルピリが苦しげに吐息を漏らし、更に一歩、互いの距離を詰めて壁に突いた肘に体重を預けた。同時に身体も密着し、雄同士が重なるように触れ合う。
気づいたときには彼の大きな手にふたつの肉棒は捉えられて、一緒くたに抜き上げられていた。
「ひっ、…ぁ、やっ」
「ッ…」
ごりごりと生々しい感触に腰が引け、立っていることが難しくなってくる。咄嗟に顔の横にあったネツァワルピリの腕に手を伸ばし、両手で縋り付くようにしてそこに顔を埋めた。
直後、何かを堪えるように眼前の男が息を詰めて全身にぐっと力が入るのがわかる。
「……あまり、煽ってくれるな」
「そっ、それは…こっちのセリフだ…!」
耳元に余裕のない悩ましげな息遣いと凄絶な色気を孕んだ声が流れ込んできて、下腹部が絞られるように切なく疼いた。
次第に欲を追い上げる男の手つきは遠慮のないものに変わっていく。ぐちゅぐちゅと淫靡な水音を立てながら、否が応でも快感を突きつけてくる。
…あいつが、俺のを……。
あの、誰にでも等しく平等で、全体を俯瞰しているような達観した余裕を崩さないネツァワルピリが。
眉間に男らしいしわを寄せ、猛禽類の如く鋭い双眸を妖艶に伏せ、他の誰でもない、俺の逸物と自らの逸物を扱いて快楽に溺れている。
信じられない光景に、釘付けになる。
高められていく射精感に必死に抗い、可能な限りみっともない姿は見せまいとガウェインが奮闘していると、不意に鈴口にぐっと指先が突き込まれた。
「うああっ、それ……やっ…め、」
感電したように腰が大きく跳ねる。同時にがくんと体勢を崩して膝が折れたが、すかさずネツァワルピリの膝が脚の付け根を内から支えた。
それをいいことに、ぐいと足を広げられて更なる羞恥が襲ってくる。じわりと目に涙も滲むが、仮面のおかげで相手には露見していない。
そのまま先程よりも激しく雄を扱かれ、ぴくぴくと痙攣する下腹部はいつ達してもおかしくない状態で。もう相手の腕にしがみつくだけで精一杯だった。
「もっ…もう嫌だっ…!やめ…ッ」
「ガウェイン殿…」
甘い声が己の名を口にするだけで、身体が熱くなる。
呼吸は浅く、吐息と一緒に声が出てしまう。
「ん、ぁあっ…!やだっ……嫌、だ…っ、ネツァ…ワ…ッ、」
「…愛している、ガウェイン殿」
どこまでも淫らで。
極上に甘くて。
どうしようもないほどいやらしい声音で囁かれる愛の言葉に、ガウェインは膨れ上がる欲を抑えきれずに果てた。
そしてそんな痴態を目に焼き付けるように見つめていたネツァワルピリも、数秒遅れて自身の手に白濁を放った。