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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 アリアハン編

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今はそんな場合じゃないからね……」
 
「俺も休みてーけど、アイシャを早く探してとっ捕まえねーとな、
行こう!」
 
「ひ、ひいい~……」
 
休む暇なく、男衆は再び塔の中を走り出す。彼方此方走り回り、
塔の中を探索していると、ある場所を発見する。
 
「何だ?……宿屋か?こんな所に……」
 
塔の中で、宿屋を経営しているらしかった。塔を探索する冒険者の為に
用意されているらしい。
 
「ジャミル……」
 
又足を止めそうになるジャミルをアルベルトが突くが。宿屋の中から
店主が出てきた。
 
「いらっしゃいませ、お疲れでしょう、冒険者さん達……、ささ、
どうぞどうぞ、中へ……」
 
「あの、折角お気を遣って頂いて申し訳ないのですが、僕達……」
 
アルベルトは折角の店主の言葉を遮ろうとし、……ジャミルとダウドは
二人してブン剥れた。
 
「それにしても、今日はよく冒険者様がおいでになる日だ、
……先程もですね、何人かの方が塔にいらっしゃいまして、
ドタドタと走って行きましたよ、何だか可愛い女の子を抱えていた様な……、
お連れの方は女の子と比べると随分とまあ対照的でまるで筋肉自慢の
集まりの様な方達でした」
 
「ジャミル……」
 
アルベルトがジャミルを突っついた。ジャミルは慌ててもう少し
店主に話を伺う事に……。
 
「そ、その一緒にいた女の子ってのは……、どんな感じだった?」
 
「はい?そうですね、赤毛におかっぱでお団子頭ヘアの女の子でしたよ」
 
「「……アイシャだああーーっ!!」」
 
男3人は声を揃えた。やはりアイシャが何者かに誘拐された
事実に、もう間違いはないと3人は確信したのであった。


その3

一方の盗賊集団共は……、アイシャを抱えたまま走るのを
止めなかった。只管、走る。走る。走る。最上階目指して。
只管突っ走る。そして、ズタ袋に押し込められた中のアイシャは
もう呼吸が限界であった。
 
「お、親分……、中の女の子、大丈夫ですかね……」
 
「何か返事しませんけど、……おーい、生きてるかあ~?」
 
子分共が心配し、慌ててアイシャを突っついてみるが、何とか
アイシャは返事の代わりにもぞもぞと足を動かしてみる。
 
「もうゴールまでんなに時間掛んねえよ、もう少しだ!オラ、
テメーら行くぞっ!」
 
「へえ……」
 
そう言いながら子分の一人は道具袋の中の煙幕を確認する。残りは一個。
 
「ところで、親分……、この塔の最上階には何があるんで?
あっしらその辺はまだ、親分から何も話を聞いてねえんで……」
 
もう一人の子分が頭に訪ねる。不安そうな顔を頭に向け。
頭はピクッと耳を動かすと、漸く走っていた足を止めた。
そして後ろからついてきていた二人の子分共を振り返る。
 
「まだ言ってなかったか?……この塔の最上階に住む爺さんが
何でもどんな扉でも開けちまう、すんげえ鍵、最後の鍵を
持ってるって話だ、俺たちゃそれを頂きに行くのさ!」
 
「へえ……、そらすげえ!」
 
「どんな扉でも開けちまうとな!」
 
(な、何よ、そんな話聞いてないわっ!この塔にあるのは
盗賊の鍵の筈よ!……それにしても……、どんどん息が
苦しくなってきたわ、あ~ん、誰か何とかしてええ~……)
 
アイシャは息苦しいズタ袋の中で、只管、必死で耐えるのであった。
 
「よし、これでおめーらも分ったろう、この塔での最終目的がよ、
んじゃ、行くぞ!」
 
「ま、待って下さい、……煙幕がもう残り一個です、……これで
最上階まで持つでしょうか……」
 
子分の一人が袋から出した最後の一個の煙幕を頭に見せた。
 
「うわあ、これが終わっちまって、もしも、つえー敵が出たら……、
俺達、乗り切れるんですかね……」
 
もう一人の子分も不安な顔を見せる。……が、頭は、もう最上階が
近いんだ、んなモン、んじゃあねえよとの一点張りで実にいい加減である。
 
(……何よっ!戦いなさいよっ!意気地なしっ!)
 
アイシャはもぞもぞ動きながら袋の中で精一杯抵抗してみる。
 
「……暴れんじゃねえっ!このガキっ!!……まだ生きてるな、よし!
ンじゃあ本当に行くぞ!もう止まらねえぞっ!!おめーら!」
 
「はあ……」
 
「へえ、大丈夫かな、本当に中の女の子は……」
 
……しかし。
 
「!お、親分っ!!」
 
「う、うぉっ!?」
 
二人の子分が悲鳴をあげ、頭も事態に気づく。目の前に集団の
モンスターが立ちはだかっていた。この塔の中でも最も厄介な
部類に入り、メラを使いこなす強敵、……魔法使いである。
 
「突破すんぞオメーらっ!煙幕投げろオーッ!!」
 
「へ、へえ……、うわっ!?」
 
だが、そんな物をほおり投げる暇なく、魔法使い達は物凄い
スピードで呪文を詠唱しメラを盗賊達に目掛け放出するのであった。
 
「……あぶねええーーっ!!おめーら散らばれーーっ!!」
 
頭はそう言うと抱えていたズタ袋を思い切り遠くに投げる。
投げられたアイシャは袋の中で何が何だか分からず地面に
叩き付けられ……、そして悲観する……。
 
(なんなのよう~、もう~!こんなのいやーっ!誰か……、
も、もう空気が……、げんか……)
 
もう駄目かと思ったその時……、漸く袋の口が開き、光が見えた。
 
「……ぷはっ!げ、げほ……」
 
「嬢ちゃん、平気か?もう大丈夫だ、ささ、早く逃げな!」
 
「あなたは確か……」
 
漸くズタ袋密封地獄から解放され、外に出られたアイシャ。自分の
目の前にいたのは盗賊集団の頭の子分の一人であった。
 
「あの、私を助けてくれたの?」
 
「んな事はどうでもいいんだよ、とにかく早く逃げな、此処にいたら
危ねえよ!」
 
「……あっ!!」
 
ズタ袋から解放されたアイシャは改めて周囲の状況を確認する。
側には魔法使いの集団、……そして、火傷を負い、倒れている頭と
と、もう一人の子分の姿であった。魔法使いは尚も倒れている二人に
にじり寄っている……。このまま燃やしてしまおうとしているらしかった。
 
「大変っ!……早く助けないとっ!」
 
「いいんだよっ!嬢ちゃんはっ!親分は俺が助けに行く、だから早く逃げな!!
心配しなくていいからっ、ささ、早く!」
 
「嫌よっ!」
 
……しかし、アイシャは折角の子分の言葉を遮るのであった。
 
「な、何でだよォォー!お前はアホかっ!?それに俺達はお前を
誘拐して人買いに売り飛ばそうとしたんだぞォっ!マジモンの
アホかああーっ!?」
 
「……あなたは私を助けてくれたもん、今はそんな事言ってる
場合じゃないのよっ!それに、あなただって火傷してるじゃないっ!」
 
「……嬢ちゃん……」
 
アイシャはそう言うと負傷している子分の手をそっと取るのであった。
 
「大丈夫、こう見えても私は冒険者なの、まだ駆け出しだけどね……、
私だってメラぐらい使えるわ、さ、行きましょう、親分さんを
助けに行くんでしょ!」
 
「……嬢ちゃん、アンタやっぱアホだぜ、……ううう~、ごめんな、
ウチの親分、本当は意気地なしなんだよォ~、……カッコばっか