zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 ムオル~番外編
「もしかして……、身体とか触りたくなった…?」
「……わ、わーっ!わーーっ!!」
「何の話……?」
「……わああーーっ!?」
いつの間にかアルベルトが起きて側に寄って来ていた。
「……あれだけ騒げば起きるよ……、あふ……」
アルベルトはぼーっとしながらも半目で欠伸をした。
「つまり……、少しだけジャミルが大人になったって言う事
なのかなあ?」
「……ふう~ん……、大人?」
アルベルトが不思議そうな顔をするが、やはり急に起こされた為、
表情は眠そうである。
「おっ、俺……、もう寝るわ!おやすみー!!」
「散々騒がせておいて自分だけさっさと寝ないでよおお……」
「……むにゃ、早く寝ないと……、スリッパ、……お仕置き……、むにゃ……」
(……駄目だ、駄目だ……、寝らんねえーーっ!……ああーーっ!!)
アルベルトとダウドは既に再び眠りについている。こんな変な気持ちに
なってしまい、ジャミルはますます就寝出来なくなり、一人ベッドで
頭を抱えた……。
「このバカダウドめ……、自分だけガーガー鼾かいて幸せそうなツラして
寝やがってからに、畜生、顔に落書きしてやるか……」
更に夜も更けて……。やっぱりどうしても眠れないジャミルは
甲板に出て気分転換をしてくる事にした。
「……ジャミル?」
「アイシャ……」
甲板には先に来ていたアイシャの姿があった。此方もどうやら寝られないらしかった。
「寝ないのか?」
「うん……、なんか眠れないの……、暑い所為かな……」
髪を掻き上げるアイシャの姿を見てまたもドキッとする。
「ジャミルこそ寝ないの?疲れてるんでしょ、休まなきゃ駄目じゃない、
大変だったんだから」
「お、俺も……、何か寝らんなくってさ……」
「そうなの……」
どうにか会話を続けたいジャミルだが今日に限って上手く言葉が出てこない。
「あ、あのさ……」
「なあに?」
「ラジオ体操ってさ、実は3番があるらしいぜ」
何とか普通に会話をしようと思いっ切りどうでもいい様な適当な事を
言って誤魔化してみるが。
「へえー!そうなんだ!」
笑顔で笑うアイシャを見てジャミルは鼻血が出そうになる。
(駄目だ……、耐えろ!くそっ、静まれ自分……!)
出そうになる鼻血とついで自分の股間が黙々と立って
膨らんでいくのが怖ろしい程判るのであった。
(やばい……、マジでやばい……、限界急にやばい……)
「ねえ、ジャミル……」
「う、うえ……?」
「私……、ジャミルの事……、好きだよ……」
「!!!そ、そんな……、ストレートに……!う、うはー!!」
「……ゆっちゃった……」
「うは~っ!!」
「……アルもダウドも二人とも大好き、でもね……、ジャミルだけ
本当に特別な不思議な気持ちになるの……」
「お、お、お、俺……、夢見てんのかな……」
「おっちょこちょいでおバカでおアホで時々暴走して変な事
ばっかりするけど……」
「……かみさまぁ~!!」
「でも、明るくて……、まるで皆を照らす太陽みたいで……、誰よりも
友達思いで優しい……、そんな処が……、私は大好きなの!!」
顔を赤くしてジャミルの目を真剣に見つめてアイシャが叫んだ。
「お、俺もアイシャが好きだ~っ!!怒ると何故か俺だけには
凶暴で強くなるけど……、でも、いつも一生懸命で素直で可愛くって、
と、とにかく……、俺はアイシャが大好きだーっ!お前を守りたいんだーっ!!」
此方も同じく顔を真っ赤にし、鼻息を放出、息を切らしてジャミルが
叫び終えた。
「……ありがとう、ジャミル……、でも何よ……、凶暴ってゆーのは!
私がまるであちこち破壊しまくる凶悪怪獣じゃないの!!」
「そっちこそなんだよ!おっちょこちょいでおバカでおアホってゆーのは!
……俺を何だと思ってんだ……」
「うふふ!」
アイシャが笑い出した。けれどその瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「もう……、ほんとにバカなんだから!……ジャミルは……」
笑いながらアイシャが涙を拭いた。
「うるせーよ、ほっとけ!どうせ俺はバカだよ!」
「ジャミル……、大好き……」
アイシャがジャミルの側に近寄ると、……そっとその温かい胸に
抱き着くのであった。そしてジャミルもそのまま……、アイシャを
ぎゅっとハグする。
「うん……、俺もアイシャが大好きだよ……」
「もうあんまり心配かけないでよ……、お願いだから」
「多分無理……、保障出来ない……、ごめん……」
「ん……、バカ……」
……二人だけの甘い時間と夜は過ぎてゆく……。
翌朝……。
(……昨夜は相当頑張ったな俺……、でもまだ全然初期段階←何が?
だしな……、あいつらにはまだ黙っておこう……)
「ジャミルー、おはよう!」
「……よお……」
「ジャミル、どうしたの?顔真っ赤だよ!」
ダウドがジャミルの顔を覗き込む。
「べ、別に何でもねえから……、あんまり騒ぐなよ……」
「おはよう……」
と、そこへのろのろとアイシャも起きて来て休憩室に姿を見せる。
「アイシャまで顔赤いけど……、一体どうしたんだい?」
「な、なんでもないのよね、ジャミル!」
「ああ……」
「二人そろっておかしいなあー!?」
いかにもなわざとらしい喋り方でアルベルトとダウドが同時にハモる。
「しつっこいぞ!何にもしてねーってば!」
「なんにもー?なにをだいー???」
芸能マスゴミの如く今日はダウドもしつこい。しかし、とろける様に
甘かった昨夜を思い出しジャミルが一瞬にやけた。
「あ、何その顔!いやらしいなあー!」
隙を逃さずダウドが突っ込んできた。
「……うるせーなっ、オラ向こういけっつーの!シッ、シッ!」
犬を追っ払うようにジャミルがダウドに向かってあっち行けをする。そして、
アイシャはアイシャで……。
「……はああ~ん……、私、なんか変だよ……、体も顔もあっつーい……、
うふん……」
フェロモンプンプン出しまくりなのが嫌でも周囲に判る。
「やっぱ気になるよおー!ねえー、教えてよお!」
ゴキブリ動きでバタバタと左に右にダウドがしつこく動き回る。
「……うーるーさーいー!……キスなんか絶対してねー……!あ……!」
「墓穴掘ったよお……、暴露したなあ~!?」
「あ、あ、あああっ!く、……この馬鹿ダウドめっ!」
「ふふーん!」
勝ち誇った様にダウドがジャミルの方を見てニヤニヤ笑う。
「……もうーっ!!ジャミルのバカバカバカ!!」
怒って更にアイシャの顔が真っ赤になる。
「ま、まあ……、バレっちまったモンは仕方ねーよ……」
「……誰がばらしたのよお!!」
「だから!オイラの真似しないでよお!」
「とにかく……、二人は両想いになったんだね、おめでとう」
アルベルトに言われて二人はもう茹でダコ状態だった。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 ムオル~番外編 作家名:流れ者