zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 ジパング編・後日談
「ん?ああ……、優しくって、美人で……、本当に芯の強い人だよ……」
「そう思ってくれるのかい?」
「あ、ああ……」
そう言ってジャミルはもう一つ肉を口に入れる。
「……どうかね、良かったら……、貰ってくれないかい……?」
「?」
「娘を……」
「んっ!?……んんんんん~っ!」
ジャミルは肉を喉に詰まらせ、慌てて胸を叩いた。
「……大丈夫かい!?」
おばさんが持って来ていた壺から湯呑に水を注ぎ、ジャミルに差し出す。
ジャミルは慌てて水をごくごくと一気飲みするのであった。
「……ぷはうーっ!苦しかったあ……」
「何かあったの!?」
アルベルトとダウドも心配する。
「どうしたんですか!?」
弥生も慌ててジャミル達の席まですっ飛んできた……、が。
……貰ってくれないかい…?娘を……
「あ……、あ……、あ……」
「ジャミルさん!?」
「……うわあ~っ!!」
先程おばさんがジャミルの耳共でこっそり呟いた言葉が……、
頭の中でリピートしてしまい、ジャミルは弥生の顔を真面に見れず、
顔を真っ赤にし、猛スピードでその場から逃走した……。
「はあ……」
皆のいる広場から一人離れてジャミルが項垂れる。
「……びっくりした……、急に変な事言い出すんだもんな……」
どうしていいのか判らず、カツンと石ころを蹴る。
「……」
「ジャミル!」
「はううっ!?」
「な、なに驚いてるの……、私だよ……」
「なんだ、アイシャかよ……、びっくりした……、脅かすな……」
「一体どうしたの?急に走っていっちゃうんだもん、皆心配してるよ?」
「悪かった……」
「さ、戻ろ」
「あ、ちょっと待って」
「?」
「まあ、座れや……」
二人は手ごろな置き石の上に腰掛けた。……ジャミルは石に座ったまま
無言になり、黙ってしまう。心配したアイシャはジャミルに話し掛けるが……。
「本当にどうしたのよ、ねえ……」
「アイシャ、あのな、俺……」
「……うん……」
「俺……」
「……」
「……俺、太った……?」
「は……?」
アイシャの目が点になり……、再び二人の間に暫しの沈黙が流れた……。
「いや、だから……、俺、太ったかなあ……、って……」
「プッ……、あははははは!!」
「なんだよ!笑う事ねーじゃん!」
「ごめん、ごめん、でも真剣な顔してるから……、急に何言い出すのかと……、
あはははは!」
「……だってさ、アル達に言われたんだよ!下っ腹出てきたって!」
下唇を突き出してジャミルが不貞腐れる。少しは気にしていたらしかった。
「別に気にする事ないんじゃない?あんまり変わんないよ」
「そーかなあ?大丈夫かな?」
「でも、間食はなるべく控えた方がいいと思うよ!」
「耐えらんねえ……」
やっぱり無理をするよりは、美味しい物を沢山食べていたいと思う
ジャミルであった。
「あ、見て見てジャミル!」
「なんだ?」
「お月様がまっかっか……」
「そうか、もう秋なんだな……」
「ジャミル……」
「ん?」
「助けに来てくれてありがとうね、……凄く嬉しかった……」
アイシャがジャミルの肩にもたれた。ジャミルもそっとアイシャの肩を
側に引き寄せる。
「アイシャ……」
「なあに?」
「俺、お前の事好きだから!何があってもずーっとずーっと好きだからっ!
以上、話おわりっ!!」
顔を耳まで赤くしてジャミルが喋り終える。
「私も大好きだよ……、ジャミル……」
暫く二人は二人だけの秘密の時間を過ごす……。
(不思議……、ジャミルといると時間の立つのを忘れちゃう……)
「そろそろ戻ろっか?」
「そうだな……」
「手……、繋いでいい……?」
「あ、ああ……、いいけど……、恥ずかしいな……」
照れ臭そうに二人は歩いて行った。
そして、祭りの広場では……、突然消えてしまったジャミルの行方を
皆が心配していた。
「……ジャミルさん達、遅いわねえ……」
弥生の母親がそわそわする。楽しかった宴ももう終盤、皆引き上げの
準備を始めている。……4人は明日にはジパングを立つ事を、弥生家の
皆にはもう知らせてあった。今日~今夜が弥生家とジパングの村の皆、
ジャミル達4人と最後の日なのである。
「私、見てくるわ……」
弥生が立ち上がった。残された時間、少しでもジャミルと一緒にいたい、
彼女はそう願うのだが……。
「……」
「どうしたの?」
歩いていたジャミルが急に立ち止まった。
「アイシャ……、俺、さっきさ、弥生さんのおばさんに……、
娘を貰ってくれないかって言われて……」
「それでずっと気にしてたの?」
アイシャが後ろを振り返る。
「ああ……」
「どうもさっきから様子がおかしいと思ったのよ」
「ハ、ハハ……」
「うふ、ジャミルってば、かーわいいっ♡」
「はぇ???」
「えと、ジャミルは……、私の事……、好きになってくれたんだよね……?」
アイシャが顔を赤くし、モジモジする。それを見たジャミル、
どう返事を返していいか分からずぽーっとしていたが、やがて
唾を飲み込み、言葉を発する。
「……す、好きだよ……」
「だったらいいじゃない!」
「え……」
「私はジャミルが好きだし、ジャミルも私の事を好きになってくれたし、
二人の気持ちは本当なんだもん!ずっと変わらないよね……?」
「当たり前だろっ!」
「……ずっと……、信じてる……」
「アイシャ……」
アイシャがジャミルの手を取る。そして二人は温もりを確かめ合った。
「何か寒くなってきたな……」
「でも暫くこうしてれば……」
二人の気持ちはどこにもいかないのだと。
……
「弥生!ジャミルさん達は……?」
弥生が広場に戻ってくる。しかし、側にジャミル達はおらず。
「え、えっと……、何処行ったのかしら、いないのよ……」
弥生は泣きそうになる顔を隠して俯いた。
「何か……、あったのかい……?」
「……お母さん……、人を好きになるって素敵な事ね……、でも……、
とても悲しい事でもあるのね……」
「弥生……」
「もー!ジャミル達ってば、どこいったんだろうね!まったくう!」
そして此方はジャミル達を待っている。アルベルトとダウド。
いつまでも戻って来ない二人の様子を何となく察したのか、
ダウドは胡坐を掻いて不貞腐れて座っている。
「はーい、ダウドちゃーん、こんにちわー!アルベルトでーす!」
「うわっ!アル!?ど、どうし……」
「しけたツラしてんじゃねーよ……、ヒック……、のめのめ!
オラもっと飲みやがれ!コラ!!おめーも飲めよお!おけけけけけけ!」
「誰だよお……、酒なんか飲ませたのは……、しけたツラって、
この顔は元から……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 ジパング編・後日談 作家名:流れ者