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和と緑のスイート

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その数日後…
噂が現実になる事を利用して、1日だけ悪魔や仮面党、フューラーの軍隊がいない、平和な世界を創り出すことができた。

本当はこのシステムを利用して、ずっと平和が続く世界にできたらよかったのだが、
残念ながら、この世界に混沌をもたらしている存在の影響は大きく、イデアリアンを信じている者達もいるため、そのような事はできなかった。

今日はそれぞれ、皆思い思いに1日を過ごそうと以前から決めていたのだ。
そして、淳と恋人関係になった今、珠閒瑠市の中でお互い行きたい場所を回ろうと事になったのだ。デートも兼ねて。
淳が行きたいと言った場所が、青葉公園だった。

「淳は、花や星が好きだもんな。」
「うん。ここの公園には、以前からよく来ていたよ。」
そう言って、2人で公園の中を過去のことについて話しながら歩いて進んでいく。

「…へぇ。それじゃあ、僕に会う前、達哉達はここに来ていたんだね。」
「そうだ。そして、…あ、そこにある大きな花だ。」
そして、他の花よりかなり大きくて目立つ、黄色い花の前で足を止めた。
以前訪れた時に、アイテムをくれたいくつかの喋る花は、今は全て沈黙してしまっている。

「花と会話できるなんて、羨ましいよ。
…僕も話したかったなぁ。…達哉、一回やってみていいかい?」
「あぁ。」
淳は、そういうと花の正面に来て、小さく挨拶した。
「こんにちは。」
 
「………。」

花は、達哉が2回目に話しかけた時と同じ沈黙をしていた。
「…俺が話した時と、同じだ。淳だったら、花言葉にも詳しいし、俺達よりも色々話せたのかもしれないな。」
「やっぱりだめか…。ありがとう達哉。行こう。」
達哉は頷く。

その場所を通り過ぎて少し歩いた後、淳が
「こっちだよ、達哉。」と言いながら案内する。
一見、行き止まりに見える道だが、よく見ると人がぎりぎり通れそうな部分があった。

「ここに道があったのか…。」
「うん。」
そう言いながら、その短い部分を抜けると、
ベンチとテーブルが置いてある、緑に囲まれた1人か2人でのんびりするのにちょうどよさそうな小さな空間に出た。

「ここが、僕のお気に入りの場所なんだ。」
「こんな場所があるなんて知らなかったぞ。」
「僕も何回も来るようになってから気がついたんだ。…たぶん、何回も通ってるような人じゃないと、気がつかないんじゃないかな。」


そして、2人でベンチに座って景色を眺める。

「…植物には、癒しの効果があるんだ。
僕も達哉も、お互い今まで色々あったし、癒されていこう。」
「そうだな。」

少しの間、のんびりと太陽に照らされる植物の風景を見る。
じんわりとした太陽の熱が、身体をじんわりと温めていく。

「…達哉、少しの間、僕がいいって言うまで目を閉じてて。」
「…わかった。」
そして目を閉じる。

少しして、唇に柔らかい皮膚の感触があり、少しして離れていった。

「…いいよ。」
達哉は目を開けた後茫然と淳を見つめていた。
淳はふふっと笑っていた。

「…達哉と一緒に、悪魔にコンタクトする時にも言ってるけれど、もう僕、君の側、離れないから。」
「……わかってる。」

そう言って、公園の人気のないエリアを出ようとしたところで、右手を掴み、淳を呼び止めた。
「淳。」
淳が振り返る。
「どうしたんだい達哉。」
いい終わったタイミングで、急いで詰め寄り、鋭く、優しい口づけをして、離す。

「お返しだ。」
とは言ったものの、照れくさくなり、淳がいる場所と反対方向の床を見つめる。
なんとなく不意打ちをくらわされて、内心悔しかったのかもしれなかった。
「……。」
少しの間、茫然としたような表情になった後、ふふっと淳は笑った。
「…達哉らしいよ。」

その後、二人は青葉公園を後にし、街の方へ向かっていった。

作品名:和と緑のスイート 作家名:きまま