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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 悪徳商人の町編

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アルベルトとダウドが左右、それぞれからジャミルの頬を
引っ張って伸ばす……。
 
「いらいいらい!いらららら!!」
 
「何だ?ナイト様気取りか!?フン!!」
 
「……アイシャを返せっつってんだよ!!コラ!!」
 
「生意気なガキ共めが!!よくもやりやがったな……!!」
 
ジャミル達と警備兵の乱闘騒ぎが始まってしまう。
しかし普段モンスターを相手にしているジャミル達にとって
警備兵なんぞまるで相手にならなかったのであるが。
 
「……覚えてろーっ!珍様に報告だーっ!!」
 
警備兵二人は漸くアイシャを解放するとそそくさと逃走した。
 
「……ア、アイシャっ、平気!?」
 
「うん、……大丈夫よ……」
 
ダウドが慌てて声を掛けると、アイシャは身体に
着いた土を払い、力なく微笑み、無理に笑顔を返す。
 
「……アイシャ……」
 
「ジャミル……、みんな……」
 
ジャミル、アルベルト、ダウド、……仲間達の顔を
見た途端、ほっとしたのかアイシャの大きな瞳から
涙が溢れそうになる。
 
「……この……、馬鹿っ!!」
 
「ひっ……!!」
 
「一人で勝手にチョロチョロすんなって言ったろう!?
何かあった時はすぐ俺達に言えよ!!」
 
「……ジャミル、アル、ダウド、ごめんなさい……、
ごめんなさい……」
 
「ダウド……」
 
「ん?なに?」
 
「ちょっとあっち行ってようか……」
 
「え、えー!?ちょ、ちょっと……!」
 
気を遣ったのか、アルベルトはダウドを引っ張ると、
二人から少し離れた距離の場所まで移動する。
 
「お前に何かあったら……、俺……、どうすりゃ
いいんだよ……」
 
「ごめんね……、ごめんね……、ごめんな……さい……」
 
「でも良かったよ……、無事でさ……、間に合って
良かった……」
 
「……ジャミル……、助けてくれて……ありが……と……」
 
「!?アイシャ!!」
 
アイシャはジャミルの胸の中で意識を失い、
気絶してしまうのであった。
 
「……畜生……、よっぽど怖かったんだな、くそっ……、
あいつらふざけやがって……、けど、すぐ無茶するとか、
もう心配掛けるなって、お互い様じゃねーか、このジャジャ馬め……」
 
ジャミルはアイシャのデコと頭にデコピンで軽く
お仕置きしておく。
 
「ジャミルさん……」
 
突然ぬっと、爺さんが何処からか現れた。
 
「じいさん……」
 
「……娘さん、どうされた?」
 
「実は……」
 
 
ジャミルは老人に騒動の一部始終を話す。
 
「そうだった……、ご迷惑お掛けした……、
わし、立場弱い、珍、止められない、何も出来ない、
本当にごめんなさい……」
 
「いや、気にしないでくれよ……、こいつに怪我も
無かったみたいだし……」
 
「ジャミルさん……、人間、……本当に愚か、
……お金たくさん、こんなに変わってしまう……」
 
「いや、珍ばっかじゃねえよ、もし立場が逆だったら俺も
そうなってたかもしんないし……」
 
「いえ、あなた変わらない……」
 
「そうかあ?俺、金にはがめついけど……」
 
「あなた慕う人たち、見ればわかる、あなた優しい……」
 
老人はそう言って眠っているアイシャを見た。
 
「……」
 
「ジャミルさん……、勝手なお願い……、あなたに
お願いしたいこと、ある……」
 
「?」
 
「おねがい、もう悪い事しない様、珍、説得して欲しい……、
街の皆、本当に悲しい、怒ってる……」
 
「……俺が?いや、無理だよ、今の奴は碌に話も
聞いてくれなさそうだし……」
 
「でも、わし信じてる、珍、いつか悪い事、きづく、
きっと優しい珍に戻ってくれる……」
 
「話すだけ……、話してみるよ……」
 
「ジャミルさん、ありがとう……」
 
 
……
 
 
「ねー、アルってさ、アイシャの事好きなんでしょ?」
 
「え、え、え……、ダウド……!どうしてそれを……!?」
 
ダウドに突っつかれ、慌てるアルベルト。
 
「やっぱり……、そうだったんだ……、ふ~ん……、
嫌、普通分るってば、……だってさあ~、あの二人がいつも
イチャイチャしてると、アル、眉間に皺が寄ってるもん」
 
ダウドはニヤニヤ、嫌らしい目でアルベルトを
じろじろ見ている。
 
「ま、まいったなあ~……、どうしよう……」
 
「でも何で何もしないのさあ?」
 
「え……」
 
「好きだったら言わなきゃ駄目じゃん!」
 
「でも……、アイシャにはジャミルがいるし……」
 
「だから諦めるんだ!ふーん……、あーあ、
アルって結局その程度だったんだあ~、あーあ!
がっかりだよお……」
 
ダウドは今度は急に嘆きだすと、アルベルトを悲観し始める。
 
「ダ、ダウド……、君、今日おかしいよ……」
 
「ふーんっ!」
 
「いや……、その、一時期はアイシャに言うつもり……、
だったんだけど……」
 
「だけど?」
 
「あんのバカップル見てたら気が抜けちゃって……」
 
「あー!わかる、うんうん、アポだもんね、あの二人」
 
幾らジャミルがアホでアイシャが天然でもダウドに
言われたくないんである。
 
「だから僕はもういいよ、あの二人を見守る事に決めたんだ」
 
「アルって……、優しいんだねー」
 
「……あははは……」
 
それから暫くしてジャミルはアルベルト達と合流し
ホテルへと戻った。……ジャミルがアイシャを背中に背負い、
男3人は無言のままホテルへと歩いて行く……。
夕食時、豪華な食事を出されてもジャミル達は全く
食べる気がしなかった。
 
「ジャミル、珍しいね、君が全然食べないなんてさ……」
 
「お前らだって手ぇつけてないだろ……」
 
「食欲ないよお……」
 
部屋にはルームサービスで夕食の食事が運ばれて来ていた。
何と。ジャミル待望の最高級極上ステーキであった……。
が、折角のステーキを目にし、ジャミルを始めとして、誰一人、
一切食事に手を付けておらず状態。
 
「……あいつの状態見たらとてもじゃねーけど飯なんか
食う気になんねーよ……」
 
「おねえちゃん……、おきないの……?」
 
スラリンが昏睡状態のアイシャを心配そうに見つめた。
 
「大丈夫、ちょっとショックを受けちゃったんだよ、
もう少し時間が立てばきっと……」
 
アルベルトがスラリンを安心させる様に、頭部のトンガリを
ちょいと突っついた。
 
「ピキー……、おねえちゃん……、はやくげんきになってね、
おねえちゃんげんきないとボクもさみしいよう……」
 
「……あーっ!苛々する!」
 
「ジャミル……、どこ行くの?」
 
アルベルトが聞くと、ジャミルは乱暴に部屋のドアを蹴り飛ばす。
 
「便所!」
 
「……はあ……」
 
いつも通り、アルベルトとダウドが溜息をつく。しかし、
ジャミルの気持ちは二人にも痛いほど分かっていた。
大切な仲間を手籠めにされそうになり、傷つけられ、
どうしようもなくやるせない気持ちと怒りが込み上げて
来ていた……。

「アイシャ……、平気かなあ……」
 
結局あれから丸一日、アイシャは目を覚まさず
眠ったまま。部屋内を往復で行ったり来たり、