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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 アープの塔編

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「ピキー、ボク、あんこのおだんごたべたい……」
 
……海賊の女ボスが教えてくれた情報と変な娘が
教えてくれた微妙に違う話。探し物と財宝……。
どちらが本当の笛の情報なのだろうか。そして
ジャミルも腕を組み、財宝とオーブを頭の中で
天秤に掛け始める……。それにしても、突然現れた
この奇妙なヘンテコお嬢は何者……。


「……そう言う訳で、あなた方には私の邪魔を
しないで貰いたいのです……、塔に有る笛を手に
入れるのはこの私なんでごんす……、お迎えでゴンス」
 
「……」
 
「ジャミルっ!」
 
ぼけーっと考えていたジャミル、アルベルトの大声で
我に返る。……娘が呪文の詠唱を始めていたからである。
まさか魔法まで使うとは思わなかった4人。時既に遅く、
4人はラリホーの魔法を掛けられその場に全員倒れていた……。
 
「ふう、これでよし……、これで私の邪魔をする者は……」
 
「ピキイ……」
 
「あら……」
 
……娘は唯一魔法が効かなかったスラリンをじっと
見つめた。スラリンは倒れてしまい、動かない皆の側で
オロオロしている……。
 
「あなたは魔法が……、そうね……、モンスターだから
効き難かったのかしら……」
 
「ピ、ピキイ~……」
 
 
……
 
 
「ジャミル、ジャミルっ!」
 
「う、うう……」
 
「起きてよっ!大変なのようーーっ!」
 
ラリホーで眠らされていたジャミル。……今度は
アイシャの大声で漸く目を覚ました。
 
「何だ?俺、確か魔法で……、お、おいっ!
お前らは平気かっ!?」
 
「アイシャが一番最初にラリホーが切れて目を
覚ましたみたいなんだよ、僕もどうにか今……」
 
「オイラもだよお……、ジャミルが起きたの
一番最後だったみたいで……」
 
油断し過ぎた……と、ジャミルはふら付く頭を
抑えながら立ち上がる。あの娘、腕力は半端では
無かった処か、魔法まで使いこなすのである。
 
「……畜生、あいつ、俺らを眠らせた隙に笛を
横取りする気満々だな、そうはさせるかよっ!
世の中んなに甘くねえって事を思い知らせてやらあ!」
 
「ふ、笛の事も大事だけど……、スラリンがいないのっ!
何処を探しても!」
 
「……あんだと?」
 
ジャミルはそう言いながらアイシャの方を見た。
確かに……、いつもならアイシャに抱かれ、
アイシャの側をくっついて離れないスラリンの姿が
見えない。
 
「ど、何処にも行く筈ないもん、……きっと
あの変な人が連れて行っちゃったんだよお!」
 
「ダウド、落ち着いて……、とにかく、もう一度
スラリンを探そう……」
 
「スラリン……」
 
ダウドの言葉を聞き、アイシャが不安そうな
表情をした。しかし、変なお嬢様は
あくまでもこの塔にある笛が目的の筈。
……もしもジャミル達が倒れている間に
彼女がスラリンを黙って連れていったのだとしたら。
もうワケ判らん事態にジャミルの頭はメダパニ状態。
 
「もうっ、勝手にスラリンを誘拐するなんてっ!
頭にくるわっ!」
 
「でも、まだあの人が連れて行ったと
決めつけるのは……」
 
「アルっ!だってスラリンには私達から絶対離れちゃ
駄目って言ってあるのよ!ダウドの言う通り何処にも
行かないわよっ!可愛いからスラリンを連れて
行っちゃったにぜーったい決まってるわっ!」
 
「……うん、何考えてるか分からない様な人だったもんね、
……まさか!お腹が空いてスラリンを食べようとして連れて
行ったのかもしれな……、あう!」
 
「とにかくだ、さっきの変な女を探しながら先に
進もうや、スラリンも探しながらな、もしかしたら
やっぱり何処かで迷子になってるのかも知れねえかんな……」
 
余計な事を口走るダウドの口をジャミルが塞ぐ。
今はこう言ってアイシャを不安な気持ちにさせない様に
するしかなかった。
 
 
……そして、ジャミル達が再び動き出した頃。塔の
最上階へと続く階段の手前。
 
「さあ、ポチ、笛の匂いは分るかしら?
……探しなさい」
 
「……ピキ、ボク、いぬさんじゃないよ、
スライムだよ……」
 
「いいのよ、さあ、こっちを見なさい、……そうよ、
あなたは犬よ、犬なのよ……、わんわんわん、
わんわんわん……、効け効け、今度は成功しろ、成功しろ……」
 
「ピキ~……」
 
……娘がスラリンの目をじーっと見つめる。……途端に
スラリンの目がぐるぐるおめめになり、スラリンの
視界が回り出した……。
 
「ボク、うしさん……、ンモ~、ブウ~……」
 
「あ、あら、……催眠術は効いたけど間違えて牛ブタに
してしまったわ、もう一回……」
 
 
……糞野郎!何処だコラーーっ!!
 
 
「あの声……!もう追い付いてきたのね、
……嫌らしい連中だわモス!」
 
「ピキ~……、ピキ……」
 
ドタドタと凄い足音がし、怒鳴り声が聞こえた。
どうやらジャミル達が間に合いそうである。
そして、ジャミル達の声を聞き、催眠術らしき物を
掛けられたスラリンが一瞬、元に戻りそうになるが……。
 
「あなたは元に戻ってはノーメン!……そうね、
凶悪なモンスターになりなさい、何がいいかしら、
そうね……、あなたはばくだんいわ、ばくだんいわに
なるの……」
 
娘が再びスラリンの目を見た途端、……またスラリンの
様子がおかしくなる……。
 
「ボク、ばくだんいわ……、ばくだんいわ……、
ピ~キ~……」
 
ばくだんいわ。それはまだジャミル達が遭遇していない
モンスター。……攻撃に耐え、只管じっと耐えているが、
追い詰められるとメガンテで自爆する最狂モンスターである。
 
「今度は成功……、こいつは完全に身も心も
ばくだんいわになった、いいわ、そのまま敵味方諸共、
爆発してしまえひょほ」
 
娘はそう言いながら、最上階への階段へと駆け上がり、
又意味不明な語尾を言葉の最後に付け逃走する。其処に
漸くジャミル達4人が追い付く。スラリンの無事な姿を
見たアイシャは……。
 
「……スラリンっ!無事で良かったっ!」
 
「……アイシャっ、駄目だっ!スラリンに近寄ってはっ!」
 
「え……?ええええっ!」
 
スラリンに飛びつきそうになったアイシャを咄嗟に
アルベルトが制した。
 
「アルっ!どうして止めるのっ!?」
 
「目つきがおかしいよ、よく見てごらん……」
 
「ど、どうして……」
 
アルベルトに言われ、アイシャも恐る恐るもう一度
スラリンの様子を覗うと……、確かに純情でない顔つきに……。
いつもの可愛いまん丸目では無く、じっと誰かを
睨んでいる様な本当に可愛くない逆三角目玉になっていた。
 
「ボク、ばくだんいわ……、ちかづいたらばくはつ……、
どーん……」
 
「ばくだんいわ、オイラでも知ってるよお、最新版
全世界恐ろしいモノ大全集に乗ってた、何もしないで
いれば大人しいけど、突いたりするとメガンテを唱えて
自爆してくるらしいよ……」
 
普段はあまり本に興味なさそうなダウドでも、変な雑誌は
玉にチェックしているらしい。
 
「で、催眠術に掛けられてばくだんいわに
成り切ってるってのか?……あの変な女にか?