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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 テドン編

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……この村に最初に来た時と同じように……。これ以上
アイシャを不安にさせてはいけないと思い、そろそろ本当に
フィラの家に戻ろうかと思った、その時……。
 
「あなた達……」
 
牢屋の方から……、二人を呼び止める声が聞こえてきた……。
二人は声がした方……、牢屋の方へと近づいていく。
 
「俺達を呼んだのはあんたかい?」
 
鉄格子の向こう側から男が顔を出し、静かに頷いた。
 
「俺はあんた達が此処に来るのをずっと待っていた、……さあ、
何も言わずこのオーブを受け取ってくれ……、遥か南、
レイアムランドの祭壇にオーブを……」
 
「これって……」
 
囚人が鉄格子の向こうからジャミル達に見せたのは、緑色の輝きを放つ玉、
グリーンオーブであった。
 
「だけど……」
 
ジャミル達が躊躇していると、監視兵がやって来る。そして何も
言わず牢屋の鍵を開けた。
 
「受け取ってやってくれ、さあ、受け取ったら直ぐに
立ち去りなさい、此処は牢獄である……」
 
ジャミルは男からグリーンオーブを受け取る。男はその後、何も言わず
静かに暗い牢の奥へ姿を消す。兵は再び牢屋に鍵を掛けたのであった。
 
「グリーンオーブは手に入ったけど、何だか……」
 
アイシャが複雑そうな顔をする。どうしてあの男はオーブを
持っていたのか、そして、一体何故、暗い牢屋の中で自分達を
ずっと待ち続けていたのか……、それは分からずじまいである……。
大きな謎を抱えたまま、二人はフィラの家へと戻って行ったので
あった。……そして、朝がやってくる……。
 
 
 
「ジャミル!大変なの!」
 
「ん……」
 
アイシャの悲痛な声でジャミルは目を覚ます……。
 
「……?」
 
眠い目を擦りながら周囲を見渡すと昨日と明らかに何かが
違っていた。 ジャミル達はふかふかのベッドで寝ていた
筈なのにいつの間にか汚い布の上にいる。
 
「……どうなってんだ、この部屋……、まるで物置みたいになってる……、
そういや、ダウド達は何処行ったんだ?……」
 
「……うわあーん!ジャミルぅ!」
 
既に起きてアルベルトと外にいたらしきダウドが慌てて部屋に
戻ってくるなり、ジャミルに急に飛びついた。
 
「こ、コラ……、何やってんだよ……」
 
「ジャミル!早く外に出て!」
 
「ど、どうしたんだよ……、アルまで……」
 
「……いいから!」
 
ジャミルは急いで外に飛び出す。
 
「……これは……」
 
村は明らかに夜と光景が違っていた……。家々は壊され、
廃墟と化し土地は荒れ果て草一つ生えていない……。
 
「ひぃぃぃぃーっ!ほっ、ほっ、ほっ……、骨ーーっ!」
 
怯えるダウドの足元に誰の者か分からない錆びた
頭蓋骨が転がっている……。
 
「一体どうなってんだよ……、ここは本当に昨日の村なのか……?」
 
 
「……いやぁぁぁぁぁーーっ!」
 
 
「……アイシャ!?」
 
家の中からアイシャの悲痛な悲鳴が聞こえて来る……。
 
「戻ろう!」
 
男衆3人は家の中へと直ぐに戻るのだが……。
 
「ピキーーッ!」
 
スラリンがぴょんぴょん跳ねて家の中から飛び出て来た。
 
「どうしたんだよ!」
 
「おねえちゃん、フィラちゃんのおへやにいったんだよ、そしたら……」
 
「……分った!」
 
「あ……!」
 
ジャミルはスラリンの話を最後まで聞かずフィラの部屋へと走る……。
 
「……ピキー……」
 
「アイシャ!」
 
「……ジャミルーーっ!」
 
アイシャはジャミルの姿を見つけると泣きながら
その胸へと飛び込んだ……。
 
「何があったんだよ……」
 
「フィラちゃん……、もう……、死んでるの……」
 
「え……?」
 
部屋の中を見るとベッドの上に小さな屍が横たわっていた。
 
「このペンダント……、間違いなくフィラちゃんのだね……」
 
アルベルトがベッドの側に落ちていた錆びたペンダントを
拾い上げ静かに俯いた……。
 
「き、昨日のは夢?オイラ達、……幻を見てたのかなあ……???」
 
「いや……、夢なんかじゃねえよ……、俺達が
見てたのは、この村が幸せだった頃の……、村の皆の中に
あった遠い記憶だったのかもな……」
 
「やっぱりランシールの人達が言ってたのは本当だったんだあ……、
皆、成仏出来なくて彷徨ってるって……」
 
「……」
 
4人は皆黙ってしまい、顔を曇らせた……。 
ジャミル達はフィラの父親の部屋に入る。父親も
フィラ同じく、悲痛な姿に……。……昨夜座って仕事を
していた筈の椅子の側で冷たい躯になって死んでいた。
 
「……ひ、ひっく……、ぐす……」
 
「泣いてる時間はねえぜ、俺達は俺達で出来ることをしなきゃ……」
 
ジャミルが泣き出したアイシャを慰める。此処で泣いていても
何も始まらない。動いて自分達に何か出来る事をしなければ……、
そう思ったのである……。
 
「……大丈夫、分かってるわ……」
 
アイシャが涙を拭いて頷く。ジャミル達は手分けして村人を
埋葬する事にした。荒れ果てた村……、テドンは死の村だった。
縦横無尽にあちこち散らばる骨は誰の者なのか全く分からない……。
 
「……ねえ、ジャミル……、昨日見た男の子達も……」
 
「死んでるだろうな……」
 
「ジャミル、あそこ……」
 
「ん?牢屋だ……、昨日の……」
 
牢屋にも骨がある筈……。 二人は顔を見合わせて頷き、
最後の鍵で牢の扉を開くと暗い牢屋の中へと入って行った。
 
「……かび臭い……」
 
「アイシャ平気か?気分が悪かったら外で待っててもいいんだぞ」
 
「ううん……、大丈夫……、ジャミルがいるから平気だよ、怖くない……」
 
(うはー、まいったな……、えへへ……)
 
「あ……」
 
ジャミルが立ち止まる。牢屋の中に屍が転がっていた……。
 
「きっと昨夜の……、俺達にオーブを託してくれた……」
 
「……」
 
二人は目を瞑り静かに屍に手を合わせた……。
 
「ん?壁に何か文字が書いてあるな、えーと……」
 
 
……生きている間に……、このオーブを……渡せて良かった……
 
 
「さあ、行こうぜ……、まだやらなきゃならない事は沢山ある……」
 
「うん……」
 
ジャミル達は牢屋の中の骨を回収すると外に出た。
 
……4人は丸一日掛けて漸く全ての村人の躯を埋葬し終える……。
 
「やっと終わったね……、いっぱい穴掘ったから手が痛いよお……」
 
ダウドが穴の掘り過ぎで赤くなった手をプラプラさせる。
 
「……また…、夜になるのね……」
 
アイシャが暗くなっていく空を見上げた。ジャミルはしゃがみ込んで
フィラの墓前にペンダントを添える。
 
「フィラ……、バラモスの野郎は俺達でシメとくから……、だから……、
親父さんと一緒に安心して静かに眠れよ……」
 
「……ジャミル……、くっ……」
 
アルベルトも悔しげに唇を噛み、涙を堪え切れず悲しそうな
表情をする……。
 
「ひっく……」
 
「あ、あ、あ、あーーーっ!」
 
「……何だ?」
 
「ど、どうしたのよ……、ダウド……」