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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 テドン編

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アイシャが腫れあがった目を擦り、ダウドの方を見るが……。
 
「……後ろ、オイラよりも後ろだよお!見てーっ!」
 
「?あ……!」


「フィラちゃん……!それに皆さんも……!」
 
アイシャが思わず声を上げる。ジャミル達の前に……、
亡くなった筈の村人達が再び姿を見せたのである。
 
「ジャミルお兄ちゃん……」
 
「フィラ……」
 
「ありがとう……、皆さんに出会えて……、本当に、本当に……、
幸せな時間でした……」
 
フィラが昨日の夜と変わらない笑顔を再び4人に見せ、微笑んだ。
 
「これで……、漸く私達も安心して此処から旅立つ事が出来ます……」
 
父親がフィラの肩にそっと触れた。
 
「わしらはずっと待っとったんです……、あなた達の様な人が
現れてくれるのを……」
 
「あんた達なら任せて大丈夫だ、きっと……、
バラモスを倒してくれる!」
 
「……お願い!私達の敵を討って……、そして無念を晴らして!!」
 
「勇者様……、あなたにオーブを渡す事が出来て……、
本当に良かった……」
 
「おっさんは牢屋の中の……」
 
優しそうなおじさんがジャミルを見て静かに頷く。おじさんは
牢屋で死んでいた骸の幽霊だった。牢屋で見た時の表情よりも
ずっとずっと穏やかで優しい顔をしていた。
 
「……有難う……、オーブを俺達に託してくれて……」
 
ジャミルがそう言うとおじさんはうんうんと頷き、
ジャミルの肩を叩く様な仕草をする。
 
「お兄ちゃん……、私たち……、もう行かなくちゃ……」
 
フィラが再び4人の前に出る。……フィラは4人に向けて
最後の笑みを見せた。
 
「皆さんに出会えて本当に良かった……、どうか……、
私達の分まで幸せになって下さいね……」
 
「俺も……、フィラに出会えて良かったよ……」
 
 
        ……本当にありがとう……、お兄ちゃん……、
みんな……、さようなら……
 
 
フィラがそう言うとフィラもフィラの父親、村人……、
全てが消えてしまっていた。4人はその場を動かずただじっと……、
黙って佇んでいた。そして……、また朝が巡って来た……。
 
「……フィラちゃん……」
 
涙交じりにアイシャがフィラの墓を見つめた。
 
「大丈夫だよ、アイシャ……、これで皆きっと……、
静かに眠れるよ……」
 
アルベルトも皆の墓を見つめ、静かに呟く。
 
「……そうね……、後の私達が出来る事は……、
皆の敵を討つ事……、魔王バラモス……、
絶対許さないんだから……」
 
……悲しみを堪え、ジャミル達はテドンの地へ別れを告げ、
船へと戻る。いつか、又この村を訪れたその時は……、皆の墓前で
吉報が告げられる様……。
 
 
「……」
 
「元気だそう、アイシャ、きっと村の皆も僕らの事を
見守っていてくれているよ……」
 
「……うん……」
 
「ピキ……」
 
「でも……、本当にいい子だったよね……、フィラちゃんは……、
優しい子だったよお……」
 
「うん……、もう少し……、一緒に遊んだりお話したかったな……」
 
船に戻った4人は休憩室で温かいお茶を飲みながらテドンの
村の出来事を振り返る……。
 
「……ちょっと待ってよ……、昨日の夜、オイラ達……、
フィラちゃんのお父さんに夕ご飯ご馳走して貰ったよね……、
あ、あ、あ……、あれって……、
あれって……、もしかして……」
 
「……ストーップ!判ってるから……、い、言わなくていい……」
 
ガクブルし始めたダウドにアルベルトも汗を拭く。
 
「と、ところで、ジャミルは?何してんの?珍しいねえ、
おやつも食べないとか、
ジャミルの分、オイラが食べちゃおうかなあ……」
 
「あ、何か具合悪いんだって、船室で休んでるよ……」
 
「……大変っ!ジャミルーっ!お茶しないなんて駄目よーっ!」
 
アイシャが慌てて船室へ走って行く。
 
「……」
 
「ふうー」
 
「ダウド、僕らもいこうか……」
 
「うん……」
 
 
船室
 
 
「……ジャミル、どうしたの!お腹でも痛いの!?」
 
「どうせまた拾い食いでもしたんでしょ?分かってるよお~……」
 
「……しねーっつーの!」
 
「じゃあ風邪ひいたのね……?お薬飲まなくちゃよ!」
 
「ピキー!ボク、おくすりきらーい!」
 
「ねー、アルアル!」
 
「……ア、アルアル?」
 
アルベルトがあっちの人になってしまっている。
 
「馬鹿は風邪ひかないってゆーのはオイラ嘘だと思うんだよ!」
 
「さっきからうるせーぞ!張りっ倒すぞ!?バカダウド!!
……風邪じゃねえってんだよ!」
 
「でも、なんだか……、少し熱いみたい……」
 
アイシャが自分のおでこ、ジャミルのおでこ、交合に触り
体温の確認をする。
 
「え……!やっぱり風邪……!?じゃあ、薬飲まなくちゃ駄目だよお」
 
「……知恵熱だよ……」
 
「え……」
 
「……近頃……、話が真面目だっただろ?……どうもな……、
耐えらんなくて……、その疲れが今になってどっと出たのかも
しんねえ……」
 
「……」
 
「プ……」
 
「あははははは!ジャミルらしいや!」
 
「やっぱりジャミルはこうでなきゃ!真面目なジャミルは
つまんないよおー!」
 
「……悪かったザンスね!アホで……、あーもー!てめーら出てけ!
シッシッ!」
 
「はいはい、くくく……」
 
「気分が良くなったら一緒におやつ食べよーねー!」
 
足早に船室から逃走するアルベルトとダウド。
 
「……フンっ!人を馬鹿にしやがってからに!」
 
「違うよ、みんな心配してるんだよ?ジャミルにはいつでも
元気でいて欲しいもん……」
 
「アイシャ……」
 
「……私もね……、ジャミルの笑った顔……、大好き……」
 
「え……?」
 
「口が悪くて……、ドジでおっちょこちょいで短気で……、
でも誰よりも優しくて……」
 
「……言ってて恥ずかしくなんない……?」
 
「なる……」
 
「くせー!」
 
「……もうーっ!ジャミルのバカーっ!」
 
 
「……」
 
「ダウド、録音出来た…?」
 
「うん、ばっちり!」
 
……先程、休憩室に戻ったかと思いきや、アルベルトと
ダウドの二人。廊下でこっそりと船室の前。何やら古典的な
機械を使って何かをしている。……大昔に消えた機械、
テープレコーダーと言う。最近、又ちょっとしたブームに
なり、世に復活したのだが、、それを使ってちょっとした
細工を仕掛けている。
 
「あ、また何か言ってるよお……!」
 
「どれどれ?」
 
 
「……俺、もう少し寝るわ」
 
「うん、わかった」
 
 
「!アイシャがこっち来る!」
 
「逃げよう!」
 
「……でも、このカセットテープ……、見つかったら殺されるね……」
 
「見つからなければいいのさ」
 
「アル……、何かだんだん性格が……」
 
「何?」
 
「いや、何でもないよお……」
 
 
 
……テープに会話を録音されているのも知らずジャミルは考え込んでいた。
 
「……もうすぐ……、テドンも遠くなるな……」
 
ジャミルは枯れてしまった四葉のクローバーをじっと見つめた。