英雄
神聖な存在を陵辱しているような後ろ暗さに、ぞくぞくと危うい快感が己の中心へと募っていく。
相手の白かった肌は火照りきって淡く色づき、ひたすらに熱い。
更に鎧越しではそれとわからなかった細い腰が、拾いきれない快感にいやらしく揺れていて。
胸元から顔を上げ、泣きじゃくりそうなほどの浅い呼吸を繰り返す愛しい男の顔を見つめながら、臍を辿って片手を下衣の中へと滑り込ませた。
ひっ、と息を飲んでこちらの手元に慌てて視線を送る姿がまたそそられる。
指先が触れた逸物は既にどうしようもないほど濡れそぼっており、衣類をずらして外に出してやると開放感に震えたようだった。
胸しか弄っていないというのにこの昂りよう……正直、驚きだ。
「…並外れた感度、であるな」
「う、うるさい!俺だってこんなのっ…」
感心気味に呟くと、すかさずガウェインは羞恥に駆り立てられた勢いで言い返してきたが、途端に言葉をぶち切って口籠る。
その様子に頰が弛まないわけがない。
ネツァワルピリは、相手の雄の先端にぴとりと指を当てては離し、先走りが糸を引く様を楽しみながら訊ねた。
「ふむ。こんなの……なんであろうか」
「くっ……」
「しかしお主、乳首を虐められただけでここまでとなると、服が擦れるだけでも難儀するのではないか?」
「違っ、だから…!」
塗り広げるまでもなく先走りにまみれている肉棒を手のひらに包み込み、ゆっくり上下に扱いていく。
これまでの情事以上に熱を持っているような気がする滑らかな薄皮が、ぴったり手掌に吸い付いてきて心地良い。
「…心配でならぬ。かように敏感な身体、他の男に触れられたらと思うと、我は耐えられぬ」
興奮を如実に顕して熱を放つそれを、ゆるゆると擦りながら素直な気持ちを述べると、ガウェインは何度か口をぱくつかせてから必死に言葉を選んで言った。
「き…貴様だからだっ…」
「…?」
「鎧越しでも…貴様に触れられるとっ……ん、燃えるように熱かった。……だから、ぁ…直接…だと……ッ、…って、話してるときくらい手を止めろ馬鹿が!」
顔を真っ赤にしながら噛み付かんばかりの勢いで抗議してくるが、内容もさることながら一生懸命に想いを紡ぐ姿が愛しすぎてつらくて、もうそれどころではない。
「ふむ。…つまり、」
暴走してしまいそうな乱暴な衝動を抑える為に、ネツァワルピリは大きく深呼吸を落とす。次いでずるりと彼の下衣を脱がせて、片方の膝裏に手をかけるなり胸につくほど高々と持ち上げた。
「…相手が我であったが故に、興奮したと?」
「……っ!」
どストレートに質問をぶつけると、ガウェインは言葉を飲み込んで下唇を噛む。
その姿がまたこちらの劣情を煽ってきて。
「……愛い」
ネツァワルピリはぽつりと呟き困り果てて目を細め、徐にガウェインの尻の谷間へと指を滑らせた。
「お、おいっ!?」
すかさず制止を試みるガウェインに構わず、胎内へと侵攻を進めていく。ぬるついた後腔は容易く異物を取り込み、貪欲に蠢いた。
引き摺り込まれるように差し入れた指をついと曲げて、知り尽くした彼の弱い部分を刺激してやると、ひくりと腹に力が入るのがわかり、その一点を擦る。
「んんっ…」
「ここが…好きなのであろう…?」
鎧の呪いにかけれられていた間も、前戯こそできなかったが抽挿に至るための行為は重ねてきた。しかし肌が露出した現状では、これまでの触れ合いにはなかった確かな熱がある。それが影響しているのかは定かではないが、間違いなくガウェインの反応も異なっていた。
ネツァワルピリは持ち上げていた相手の左足を自らの肩にかけ、空いた手で相手の肉棒を扱きながら後腔への動きを激しいものへと変えていく。
「はあっ、ぅ…ッ、」
「…痛みは?」
「な……いっ…」
快感に顔を顰めて、溢れる甘い嬌声を抑え込むように片手で口元を覆うガウェイン。
もっと余裕を奪いたくて。もっと快楽に溺れてほしくて。
ぐちぐちと水音がたつほど雄を抜き上げ、次第に柔らかくなってきた中への指を増やして追い込んだ。
「ぁ…っく、…だっ……ダメだッ…」
びくびくと震える熱芯が、限界が近いことを伝えてくる。
ネツァワルピリは己の上着を無造作に脱ぎ落とし、指をぐっと押し込みなおして胎内の弱い一点を断続的に刺激した。
「やめっ……んぁあ!待っ、……い、いきそ…だからッ…!」
「ッ……、」
ガウェインの言葉にぴたりと動きを止め、狭い室内に二人分の荒い呼吸音だけが満たされる。
が、それも束の間。
下衣を下ろしたネツァワルピリがガウェインの腰を抱え、浮いた背部に布団を押し込む。
その手際に一瞬不満げに唇を引き結んだガウェインだったが、間髪入れずに後腔にいきり立った逸物を当てがわれて言葉は引っ込んだようだった。
不意に、視線が交錯する。
その刹那の瞬間を逃さずにガウェインの視線を絡め取った。
…決して離すものか。
これは、我のものだ。
仄暗く醜悪な独占欲を惜しみなく眼差しに乗せ、劣情に揺れる彼の浅葱色の瞳を縫い留める。
そのままお互い言葉を交わすこともなく、目だけを合わせてネツァワルピリは腰を進めた。
「あっ…ぐ…、」
「ガウェイン殿…」
苦痛に目元が歪んでも、洗脳でもされたかのように視線だけはこちらに向けられている。
それを受け止め、支配して犯しながら、楔を奥まで押し込んだ。