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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 アレフガルド編2

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「……はあ~、やーっと静かに入れる、誰もいないし最高だなあ……」
 
お湯に浸かって足を伸ばしてみる。
 
「足……、長いなあ……、俺って……」
 
……ついでに独り言と鼻歌も口ずさんでみる。
 
「♪ふっふふーん、ふっふふーん、ふんふんふ~ん……」
 
ジャミルのダミ歌が風呂中にこだまする。
 
「そういや風呂で歌うたうと、頭が悪くなるって聞いた事があるな」
 
もう手遅れである。……夜中なので、他の客がいないのと、
うるさい制止係のアルベルトもいない為、ジャミルは風呂で
泳いだりとやりたい放題。
 
「さーて、大分温まったし戻るか」
 
そう言って風呂から上がろうとすると……。
 
「ジャミル……?」
 
「……ひ、ひっ!?」
 
……いきなり目の前にアイシャが立っていた、しかも今は水着を
着ておらず、身体にはタオル一枚巻いただけの状態である。
 
「あ……、わわわわわ!!」
 
「ジャミルもお風呂入りに来たの?」
 
「……のわあーーっ!!」
 
「ジャミル!」
 
慌てたジャミルはのけ反ったままお湯の中にひっくり返る。
 
「だ、大丈夫……?」
 
「……わぁぁぁぁーーっ!!」
 
慌ててそのままバシャバシャ風呂の中を逃げ回り、岩陰へと隠れてしまう。
 
「な、何してんだよ……、お前……」
 
「何って……、お風呂入りに来たのよ……、それしかないじゃない」
 
「お湯はあんまり好きじゃねえんだろ?」
 
「少し冷えちゃったから、温まろうかなと思って……」
 
「わ、分った……」
 
「?」
 
「少し……、目ぇつぶってろ……」
 
「え?何で……」
 
「俺が先に出るから!そうすりゃゆっくり入れるだろ?」
 
「ジャミル……」
 
ジャミルは慌てて風呂から逃げようとする……。が。
 
「……待って!」
 
突然アイシャがジャミルの前に立ち、するりと身体に巻いてある
タオルを外した。
 
「!?」
 
「……見て」
 
「ばっ……、馬鹿!!何してんだよっ!!」
 
「いいのっ!」
 
「……アホっ!!」
 
「いいの……」
 
「は!?」
 
「ジャミルになら……、見られてもいいの……」
 
「!!!」
 
「ねえ……、私ってそんなに魅力ない……?何も感じない……?」
 
「な……!?」
 
「う……」
 
そして、突然グシグシ泣き出すアイシャ。……普段からあまり乙女心を
理解出来ていないジャミルは泣き出したアイシャに大混乱する。
 
「……バカ!何泣いてんだよ!!あ~も~!!訳わかんねえ……」
 
「ぐすっ……、どうせ私は胸ないもん……、ペチャパイですよーだ……」
 
「お、落ち着け……、ちゃんと話し合おう、……な?俺、服着て……」
 
「ジャミルの……ばかぁーっ!!」
 
「はあ!?」
 
「私……、ジャミルの事、本当に大好きなの……、大好きだから……、
何されても怖くない……、そう思うようになったの…、それなのに……」
 
「あ、あうう……」
 
「でも私達……、キスしかした事ないでしょ……」
 
「あ……」
 
「私……、本当に愛されてるのかなあーって……」
 
「……バーカ!」
 
「!?」
 
「好きだよ、本当に……」
 
顔を赤くして、横目でアイシャの方をチラ見するジャミル。
 
「だったら何で……!!」
 
「……俺の方が……、勇気がないんだ……」
 
「……」
 
「お前って大人しそうな顔して……、結構……、積極的だよな……」
 
「あ……」
 
漸く我に返り、アイシャも顔を赤くする。
 
「俺もその、まだ……、色々と……、そっち方面勉強中だし……」
 
「……」
 
「……」
 
「あはははは!!」
 
「何だよ、笑うなよっ!」
 
「ご、ごめん、ごめん……、だ、だって……、ジャミルってば……、
意外と照れ屋さんなのね……、あははははっ!!」
 
「……」
 
ジャミルは困って顔を赤くすると湯船に半分だけ顔を沈める。
 
「……まあ、気長に待ってろ……、だから……、頼む……、
タオル着けてくれ……」
 
「うんっ、待ってる!!」
次の日の早朝、ジャミル達は宿屋のロビーで朝食を取っていた。
 
「そろそろ戻って来たかな、武器屋さん……」
 
「行ってみる?」
 
「ん……」
 
「でも……、何かさあ……、ラダトームの宿屋で出してくれた食事と
比べると……、ここのは、な~んか味が濃くてしょっぱ……」
 
「ダウド……!」
 
アルベルトが慌てて注意する。……此処の宿屋のおかみさんが腰に手を当て
仁王立ち。……4人が座っている席の側で睨んでいたからである。
 
「あ……」
 
「何だい?坊や、うちの食事に何か文句があんのか!?」
 
ラダトームの宿屋の優しいおかみさんと180度毛色の違う、厚化粧の
デブのおばさんがダウドを睨んでいる。
 
「なんでもないです、凄く美味しいです……、味が濃くて……」
 
「バカだな……、お前……、黙ってりゃいいのに……」
 
ジャミルがテーブルに頬杖をついて目玉焼きの付け合せのウインナーを
口にほおり込む。ちなみに目玉焼きには大量に塩と胡椒が掛っていた。
ダウドがしょっぱいと言ったのはこの事である。
 
「ふん!!うちの飯より美味い飯なんざ他にはねーんだよ!」
 
ドブスデブおかみは口調も乱暴になり、4人をジロジロ見ながらドスドス奥へと引っ込んで行った。
 
「……色んな人がいるからね……、優しい人もいれば、意地悪な人
もいるよ……」
 
「あうう~……、オイラ正直なんですなのもの~」
 
アルベルトがフォローするもダウドはバツが悪そうに下を向いてしまう。
 
「おい、もう外行こうぜ……」
 
居心地が悪くなってきたので4人は食事を済ませさっさと宿屋の外に出る。
すると……。
 
「困ったわね……」
 
「本当に何処へ行ってしまったのやら……」
 
見ると夫婦らしき二人が揃って何か困っている様だった。
 
「どうしたんだろう?」
 
「飼い犬でも……、いなくなったのかなあ?」
 
「さあ?」
 
「あの……、どうかされたんですか?」
 
困っている人を見ると放っておけないアイシャがすぐに夫婦に声を掛けた。
 
「すみません……、ガライを見掛けませんでしたか……?」
 
「はあ!?だ、誰……!?」
 
「失礼しました……、見ず知らずの方に言っても分る訳がありませんよね……」
 
「ガライは私達の一人息子なんです……」
 
「息子……」
 
「実は数か月前に家を出たきり……、帰ってこないんです……」
 
「息子は吟遊詩人になりたいとふざけた事を抜かしまして……、それで、
父親の私がきつく叱ったのですが……」
 
「怒って家を飛び出してしまって……、それ以来行方が分からないのです……」
 
「それで息子さんを探してるんですね……」
 
「ああ……、何処に行ってしまったのかしら……」
 
「……」
 
ジャミル達は4人で顔を見合わせた。
 
「息子さんの特徴は……」
 
「えっ……?」
 
アルベルトの言葉に夫婦は二人で目を丸くする。
 
「僕達は色々な所を旅していますので、もしかしたら息子さんも見つけられる
かも知れません……」