zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 愛と恋とは違うのりゅ
事態を察し、レナの顔が真っ青になる……。
「あなた……」
「大丈夫だ、私が行こう、お前はミミを部屋まで……」
「はい……、さあ、ミミ……、部屋まで行きましょう……、
今日は特別にお風呂も歯磨きもいいわ……」
「……な~に~、どーしたのお~……」
ミミが寝ぼけ眼で奥さんを見つめた。
「や~っぱり……、来やがったな……」
「ジャミル!いつの間に起きたの……?」
「俺達も行くよ、女衆は皆隠れてた方がいいな……、
レナさんもさ……」
「でも……!あの人達は、私を……!」
「レナさん……、ジャミル君の言う通りだ、
ミミと家内を頼む……」
旦那が首を横に振り、レナの肩に手を置いた。
「ですが……、私……、私……」
「大丈夫だって!んなクソ集団、すぐに又追い返してやるよ!
安心しな、チビの方も頼むよ、今すごく脅えちゃってんだ……」
ジャミルがレナに震えているチビを預ける。
「……分りました……、皆さん……、本当にすみません……、
チビちゃん、おいで……」
「ぴい~……」
レナがチビを優しく抱くとチビは安心した様に又眠った。
「さーてと、俺達は後始末に行くか!ま、俺らもどうせ
恨み買ってるだろうしな!」
「あの……、オイラも入ってるの……?」
「当然でしょ……、僕達もだよ、当たり前だろ?」
「……や~っぱりぃぃ~……、オイラ昼間はいなかったのにぃ~、
とほほ~……」
愛と恋とは違うのりゅ・5
「おーい、レナさんはよ?いるかい……?」
「なんなんですか?あなた方は……、他のお客さんの
迷惑ですよ、お帰り下さい……」
旦那が応対するが……、チンピラ集団のガラの悪い男の
一人が旦那に近づくと強く襟首を掴んだ。
「それでな、うちのモンがよ、此処の宿屋にいるらしい
バカガキに随分世話になっちまったと聞いて、ついでに礼を
言いにきたんだがね……、……コラ、ああ~んっ!?」
「……あなたっ!……やめてっ!乱暴はやめて下さいっ……!!」
旦那の危機に隠れていた筈の奥さんが飛び出して来てしまう……。
「お前っ……!隠れてろと……、言ったろう……!う、うっ……」
「……よせよ、その人達には関係ねえ、話があるんは
俺らだろ?」
ジャミル達がチンピラ達の前に姿を現す。チンピラの
リーダー格らしき男が出て来たジャミル達を見て唖然とする……。
「おめえ、本当にこんなガキ共にやられんたか……?
もし本当なら、おめえも冗談じゃすまされねえぞ……、コラ……」
「すみません、でも本当なんです……、その……、
真ん中の背の小さい茶髪のガキが……、これが
おっそろしく、糞小生意気で強かったんス……」
「まあ、いいや……、俺達もな、おめーらに
忘れモンを届けに来てやったんだ、有難く思えよ……、
おい、連れてきな……」
「……忘れモン……?」
はなしてよー!はなしなさいよーっ!!
「まさか……」
嫌な予感がし、男3人衆が顔を合わせる……。
「静かにしてろっ!オラッ!!」
「乱暴しないでよっ!えっち!」
「……アイシャっ!!」
縄で縛られ拘束されたまま、アイシャがチンピラ子分の
一人に連れて来られる……。
「……ごめんなさい、皆……、途中でこの人達に
会っちゃって……、捕まっちゃったの……」
申し訳なさそうにアイシャが皆に頭を下げた。
「……たく……、本当によく捕まんなあ、お前……」
「ほっといてよっ!ジャミルのバカっ!」
「早く、レナ嬢ちゃんを連れてこいや、俺達だって
鬼じゃねんだ、そうすりゃ別にこんなのいらねーから、
すぐ返してやるぞ?」
「……失礼ねっ!こんなのとは何よっ!!」
アイシャが頬を膨らませて怒鳴る。
「お前ら何でそんなにレナさんに拘ってんだよ、
怒られて注意されたのがそんなに気にいらなかったのか?
だとしたら相当の規模が小さい馬鹿だぞ、お前ら……」
「うるせー!余計な口聞くんじゃねえ!さっさと
レナを連れてこい!!じゃねえと、このガキが
どうなっても知らねえぞ……?」
やっぱりワンパターン行動で、チンピラの下っ端が
アイシャに刃物を突き付けた。その時……。
「私なら……、此処にいます……!」
「レナさんっ!……駄目よっ!!」
「駄目だよお!出て来ちゃ!!」
「……確かにな、あん時……、オラあ、滅茶苦茶に
むかついたさ、偉そうな口ききやがって、何様だと思ったよ、
けどな、金貰った以上はな……、仕事はこなさねーとなあ……」
あの時、レナを襲い、ジャミルに殴られたチンピラが
ぼりぼりと股間を掻いた。
「アル……、あの怖い人、何言ってんの?オイラ理解出来ない……」
「僕にも言ってる事が……、さっぱりで理解不能なんだけど……」
「まあ、本人に説明させるさ、来な、兄ちゃん……」
「……」
「お前っ……!!」
「あなたは……、どうして……?」
現れたのは……、チンピラに無謀に突っかかって行き、
そして倒れ……、レナに介護を受けたあの眼鏡の青年だった……。
「……あなた……、この変なおじさん達の仲間だったの!?
……答えなさいよっ!!」
喚きながらアイシャが青年を問い詰める。
「いえ、仲間ではありません、僕は……、ただ、
レナさん、あなたが……」
そこまで言うと青年は唇を噤んだ。すると、リーダーの男が
説明をし出す。
「てっとり早く、俺達から説明してやんぞ?サービスだ、
えーと……、昼間こいつがこの兄ちゃんをぼこった後に、
何故かこの兄ちゃん、俺達の処に大金持って頼みに来たんだよ、
レナさんを連れて来て下さい……、とさ」
「……レナさん、僕はあなたが好きで好きで堪らないんです、
初めてあなたを見た時から……、僕だけの物にしたいと思った……、
お願いです……!あなたを誰にも渡したくないんです、どうか……、
だから、僕の処に……、来て下さい……!!」
「……どうして……?あなたも……そう……、
なんですか……?」
「レナさん……?」
青年がレナに近づこうとする。動揺し、脅える
レナの瞳には涙が浮かんでいる……。
「やめてっ!来ないでっ……!!」
「やめろよ……、あんた……、何でレナさんがこっちの
世界に逃げて来たか、理由知ってんのかよ……、また心の傷を
ほじくり返す気なのか……?」
「……ジャミルさん……」
ジャミルがレナを庇いながら青年をきっと睨んだ。
「そんな事知らない……、僕はただ……、レナさんが好きで……」
「いい加減にしろよっ!!」
「……!!!」
ジャミルが拳で青年の頬を殴り飛ばし、青年は床に倒れた。
「ただ、好き好き好きで喚いてるだけでしつこく付き纏って
そーいうのは好きと言わないんだっ!!あー、苛々すんなあ!!
こいつもう一発ぶん殴ったろか!?」
「……ジャミルさん、もういいです……!!お願い、
やめて……!!」
倒れた状態のままの青年にもう一度殴り掛かろうとした
ジャミルをレナが必死で止める。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 愛と恋とは違うのりゅ 作家名:流れ者