zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ミニマム・カルテット編
「さーて、お次は何がくるんだかな……」
そして、2階の途中まで進んだ処で……。
……やあ、君たち……、やっぱり来たんだね……
「だ、誰だっ!?」
突然響いた声にジャミルが身構える。
「きゅぴ……、ドラゴンさん……?」
「チビちゃん……?もしかしてこの塔の主の
ドラゴンさんの声なのね……?」
「きゅっぴ!」
チビがパタパタと尻尾を振った。
そうだよ、お嬢さん……、僕はすぐ近くにいるよ……
君達の姿は最上階から透視能力を使い、見ているんだ
「近くって……、まだ塔の最上階は全然先見えない気が
するんだけど……、てか、僕って言ってるから君は男なの……?」
ダウドが絶望に打ちひしがれた様な情けない声を出した。
「カタカナで喋らないドラゴンか……、チビ並みにそれなりに
知能は高いみたいだな……」
「ぴい?」
……見た処……、悪いけど、僕はまだ君たちを僕の処まで
通す気にならないなあ、とてもじゃないけど……、ごめんね……、
帰ってくれる……?それから気分で一人称使ってるだけだから
どっちでもないよ、オスでもメスでも……
「ちょ……!今更困るだろ!さっき変なエルフに
試練受けろつーから、わざわざ受けて2階まで来たのに
それはねーだろ!」
……土産物がないんだよ、僕への……、失礼だろ?
「なんつードラゴンだよ……」
「……じゃあ……、何を持って来ればいいんだい……?」
金髪の真面目そうなお兄さん、君はなかなか話が分かるね、んじゃ……、
僕の好物の毒マツタケを100本貢いで貰おうかな……
「毒マツタケ……?だと……、しかも100本……???」
「それは何処にあるの……?」
姿の見えない声にアイシャが訪ねる……。
それくらい、自分たちで探すんだよ、ほら、もうこの塔を
出て出て……、後……、そのチビくんは僕の処で預かって
おこうかな……、君達の気が変わらない様にね……
「ぴっ?」
「チビちゃん!」
声の主がそう言うとチビの姿が消えてしまった……。
「まーた人質……、じゃねえや、この場合、竜質か……?」
……安心して、この子は僕の処でちゃんと預かるからさ、
少しおねんねして貰うけど……
「仕方ないよ……、遠回りになるけど一旦戻って、
毒マツタケを探そう……」
アルベルトが皆の顔を見た。チビが捕えられてしまった以上、
4人に選択権は無い。……この塔のドラゴンの無茶なお使いを
素直に受ける他は無かった。
いってらっしゃーい、僕は何年でも待ってるからねー、期待してるよー、
じゃっ……、でも……、なるべく早くしないとこの子は永遠に
眠りっぱなしになっちゃうよ?100年以内には来てね……
……辺りには静寂が訪れ何の声もしなくなってしまった……。
「チビちゃん、残していくなんて……、心配だよおおお……、嫌だよお……」
「……仕方ねえな、行くか……、毒マツタケとやらを探しに……」
「すぐに戻ってくるからね、待ってて、チビちゃん……」
アイシャがぎゅっと竜の涙を強く握りしめた。
……再びチビを捕らわれてしまったまま……、
何とも言えない気持ちで4人は一旦船に戻る事に……。
小悪魔のプレゼント
「……しっかしなあ、毒マツタケなんて聞いた事ねえぞ?」
「毒なのに食べて平気なのかなあ?」
「ドラゴンだし、平気なんじゃないの……?」
「……」
4人だけが船に帰省したものの、アイシャは塔に
残してきたチビの事が心配で堪らなく、ずっと俯いている。
「あっ……、ごめんなさい…、私一人で落ち込んでても
しょうがないよね……、早く毒マツタケ見つけてもう一度
塔に行かないと……!」
「でも……、やっぱチビちゃんいないと寂しいよお……」
やはり、チビの事が気がかりで仕方がないダウドも下を向いた。
「……」
4人は甲板に座っていつも楽しそうに歌っていた
チビの面影を見、複雑な心境になる……。
「行きましょう、絶対にもう離れないって
約束したんだから……、例え何回引き離されたって
チビちゃんは取り返すわ……」
アイシャが立ち上がって甲板に出来た旅の扉を
見つめた。再び此処を通ってチビの元に急がなければ
ならないのである。その為には何としても毒マツタケを
探し出す必要がある。
「だな、あても何もねえけど、取りあえずは基本に
帰って情報収集だな、また、何処かの町にでも
行ってみっか……、今はそれしかねえ……」
「ええ……」
アイシャを落ち込ませない様、そう言って
みたものの……、上の世界に無事戻り、竜の
女王の城でチビが……、今は亡き女王の本当の
子供である事が判明すれば……。
……チビとの別れの足音が段々近づいている事を
ジャミルは感じているのであった……。
「知識豊富といえば……、メルキドの神父さんだな……、
何か知ってるかもな、行ってみるか……」
「メルキドね、ガライさん……、元気かなあ……」
ダウドがふと、ぽつりと懐かしい名前を口に出した。
「げっ……、あまり思い出したくない名前だなあ……」
「ジャミルはガライさんに会いたくないの?オイラは
また会いたいんだけどなあ……」
「そうじゃねえけど……、何か疲れんだよ……、
あの破天荒な性格は俺にはちょっと……」
「自分の事棚に上げて良く言うよ、この際そんな事
言ってる場合じゃないよ、行こう……、……少しでも
何か判る事があれば調べないと……」
「チビの為だもんな、行くか……、んで、腹黒うるせーよ……」
4人は再度ドムドーラ経由で、メルキド方面へと向かった。
「何だかま~た忙しくなってきた様な気がするよおお~……」
「フィールドでモンスターと接触しない様になっただけ
楽なのよ、贅沢言わないのっ!」
アイシャは愚痴を溢すダウドにそう言い、……チビがいない
スラ太郎だけになってしまったバッグの中を見る。
「いつかは……このバッグの中にも入れなくなっちゃう
ぐらい大きくなるのよね、チビちゃんも……」
「アイシャ……」
寂しそうなアイシャの顔を見ていられずにジャミルが
アイシャから目を反らした……。
そして、メルキドへ……。
「……此処も大分雰囲気変わったな、あの時と違って
皆真面目に働いてるし……」
「お店もちゃんと開いてるみたいだしね、うん、
良かった……」
以前とは感じががらりと変わった街の中を、4人は
歩いて回ってみる。
「……此処だ、神父さんの処だ……」
「行ってみましょ」
神殿の中に入ると……。
「……?おお、勇者様達……!何と……、お久しぶりで
ございます……」
ジャミル達の姿を見ると神父さんが急いで駈けて来た。
「何処に行っても、もう皆俺らの事、忘れてんのにな、
何か嬉しいな……」
ジャミルは神父と握手を交わした。
「……ガライは元気かい?相変わらず歌ってんのか?」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ミニマム・カルテット編 作家名:流れ者