zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ミニマム・カルテット編
「それが一年前にふらふらと……、メルキドを出て
何処か又旅立った様でして……、しかし、彼の事ですから
きっと元気にしている事でしょうて……」
「……そうか、相変わらず落ち着かねーな、
あいつも……」
と、言いつつも、心のどこかで、ガライに会えないのを
安心するジャミルであった。
「それで、今日はまたどうなされたので?何か世界に
又……、異変が……?」
「いや、そうじゃねえんだ、その……、神父さんは
毒マツタケって知ってるかい?」
「……毒マツタケ……、ですか……?はあ……」
ジャミルが聞くと、神父は何となく困った様な顔をする。
「……やっぱり神父さんでもわからないのかなあ……?」
「うん、僕らだって初めて名前聞いたんだもの、
そんないい加減なキノコ……」
「確信がある訳ではないのですが……、その……、
何となく昔少しだけ……、情報を聞いた事があります……」
「……マジっ、ほんと!?」
「ええ、マツタケの突然変異で出来る……、大変貴重な
キノコの一種かと……、しかし……、果たして存在その物は
あるのか……、生えている場所すら全く……」
「そうだよな……」
やはり……、一番知りたい肝心の情報はどうにも
駄目らしかった……。4人は揃ってがっくり肩を落とす……。
「申し訳ありません、お役に立てなくて……」
「いや、いいんだよ、こっちこそ突然来て変な事
聞いてごめんよ、でも、今は少しの情報でも凄く
助かんだ、ありがとな、神父さん!」
「……勇者殿、どうか、どんな時でも希望だけは
忘れずにいてくだされ……、決して諦めない心はきっと、
あなた方の大きな力に成る筈です……」
神父の励ましを胸に刻み、4人は神殿を後にした……。
「……ん?」
神殿を出た4人の前に人間小悪魔ver、リィトが
立っていた……。
「……やあ……」
「……?あ、お前……」
「……ふん」
「リィト!又会えたのね!」
アイシャがリィトの手を握った。
「……うわ!触るなっ……!また……、ジンマシンが
で……りゅ……」
慌ててリィトがアイシャの手を跳ね除けた。
「何よっ!失礼しちゃう!!」
「また出た……」
ダウドが呆れた顔をする。
「お前……、ホント何処にでも現れんな……、
何なんだよ……」
「ふん、こっちだって会いたくなくたって、あんた達と
どうしても会っちゃうんだから仕方ないだろ……」
「何……、そのいい加減な理由は……」
アルベルトもリィトを怪しげにジロジロ見た。
(……また……肝心のチビドラゴンがいないりゅ……、
警戒して隠してんのかりゅ……!?)
「ところで、今日は何だ?俺達も急いでんだよ」
「……ああ……、この間あんたに薬草貰ったからさ、
一応……、お礼にと思って……、これ……、元気の出る……、
甘い飲み物を……、ね、持ってきたんだよ……」
リィトがアイシャの方をちらちら見ながら、何やら
飲み物らしき物が入っているボトルを皆に差し出した。
「……」
4人の視線が一斉にリィトの方に釘付けになる……。
「……な、何……?何さ……」
「お前……、それだけの為にわざわざ……、俺達に
会いに来たのか……?」
「いや、別に……、もしもどこかで会えたら渡そう
かなと……、借りを作るのは嫌いだから……、本当に
偶々偶々……、立ち寄った場所にまたあんた達がいたから……、
それで……」
「お前……、本当は凄くいい奴だったんだな……!!」
「うわっ!!」
ジャミルがアップでリィトに迫る。
「やめろ……、やめりゅ……あああ……!!」
「僕も君の事誤解してたよ……、本当ごめん!!」
アルベルトもリィトに頭を下げた。
「だから言ったでしょ!私達、もうお友達だって!ね?」
「本当だよおおお……!これからも仲良くしようよお……!!」
アイシャもリィトに微笑み、ダウドも感動しながら
リィトの手を握った。
「……ぎゃああああ!今までの中で……、さ、最大の
ジンマシンがでりゅ……!!あああああっ!!……ゼーハー、
ゼーハー……」
リィトは呼吸を整え落ち着くと、もう一度4人の方を見た。
「はあ……、僕も今日はこれで失礼するよ、……飲み物……、
ちゃんと飲んでよ……?」
「もっちろん!!」
4人は揃って元気に返事をした。
「それじゃ……、また……」
(……たく……、なんつー単純な……、これぐらいの事で
あっさり人を信用して……、全くあいつらは本当にバカりゅ……、
まあ……、バカだから騙せりゅんだけど)
含み笑いをし、4人の方をこっそりと振り返りながら
リィトが歩いて行った……。
ミニマムカルテット
「それにしても……、あんの仏像面の愛想のねえ
クソガキが……、まだ信じらんねえ……」
夜……、船に戻って休憩室で食事をしながらリィトに
貰った飲み物を前に4人の会話が弾む。
「だから言ったじゃない、本当はいい人なのよ、ね?」
「本当だね……、これは本当に力が出るよ……」
「甘くてほんとに美味しいよお!」
ほんと、ほんとを連呼するアイシャ、アルベルト、ダウドの3人。
「……あーあ、あっという間に全部飲み終わっちまったか……、
それにしても美味かったなあ……、何処に売ってんのかな?」
ジャミルが名残惜しそうに空になったボトルの中を覗く。
「…何だか私、元気が出て来ちゃった!よーし、チビちゃんを
取り戻す為に頑張るわよーっ!」
握り拳を作ってアイシャが自身に気合を入れた。
「あれ……?」
「どうしたの?ジャミル……」
「気の所為かな、俺……、何か背が縮んで又小さくなった
様な気がする……」
「気の所為だよ、うん……」
「……俺が小さくなって……、なーんかお前らがやけに
でかく見える様な気ィするわ……」
「気の所為だよお……」
「私……、何か眠くなっちゃった……、おやすみー……」
いきなりアイシャがテーブルに突っ伏して寝始めた。
「駄目だよ、アイシャ……、こんな処で……、風邪ひく……?」
アルベルトが声を掛けてアイシャを起こそうとするが……。
「だって~、眠くってどうにもならないんだもーん……」
「うん、そうだね……、実はオイラもなんだ……、何か急に
睡魔が襲ってきたみたい……」
「ダウドまで……、駄目……、僕も……、何でだろう……」
アルベルトまで眠ってしまった……。
「おーい、皆で寝るなよ……、ずるいぞ……、
俺も……寝る……」
ジャミルまでもが熟睡しだした……。
「……ん?」
最初に目を覚ましたジャミルが回りを見ると……、
他の3人はまだ寝ていたが何故か全員床に倒れて
いたのであった。
「……何か……、やけにテーブルがでかくなってんだけど、
どうなってんだ???」
ジャミルはとりあえず、他の3人を起こしてみる。
「おい、起きろよ、皆大変だ……、テーブルが巨大化したぞ!」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ミニマム・カルテット編 作家名:流れ者