zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ミニマム・カルテット編
簡単にはあの糞小悪魔もチビの処まで辿り着けねえと思うけどな」
「ええ……、行きましょう……」
アイシャも立ち上がって二人は未知の世界へ歩き出す……。
「俺達、今は体小さいからな……、くれぐれも気を付けないとな……」
「うん……」
ちなみに、今のジャミル達の背丈は人差し指ぐらいの大きさである。
「にしても……、ただでさえ俺、背が低いのに……、更に
縮んじまったよ……」
ジャミルがちょっこししょぼくれてみる。
「大丈夫よ……、きっと元の姿に戻れるわよ、悲観しちゃだめよっ!」
「はあ……」
一方の、山竜の塔の小悪魔は……
「通すりゅ……」
「帰れ!」
「お前邪魔りゅ!とっとと道を開けないと……!痛い目に
あわせりゅよ!」
中々道を譲ろうとしない変な顔のエルフと対峙していた……。
「そこの……」
「ん?」
「試練を受けろ、誰でもその回転する床を通らないと上まで
行けない仕組みになっている」
チビがブレスで焼いた回転する床はもう元通りに修復してあった。
「仕方ないりゅね……、いくりゅ……」
意外と素直に従い、小悪魔が床を通ろうとする。
「んっぎゃっ!」
小悪魔はあっという間に電撃を浴びて気絶した……。
「主様……、この汚物はどうします……?」
変な顔のエルフは迷惑そうに、倒れている小悪魔をじっと見ている。
ゴミの処理をさせられるのが嫌なのか。
……とりあえず、外に摘みだしておいてくれるかい……?
まあ、怒って又乗り込んでくるだろうけど……、その間に此処には
封印を掛けておこう……
「わかりました……」
変な顔のエルフは仕方なく、小悪魔を摘んで旅の扉とは別の方向へと、
塔の外へ投げ捨てた。
……それにしても、あの4人組はちゃんと此処まで戻って
来れるのかな?まさかこの子を置き去りにしたまま、投げ捨てる
様な事もしないと思うけどま、僕は知らないけどさ……、変なのも
来るし、出来れば早くして欲しんだけどね……たく……、こんな事に
なっちゃって、僕はホント迷惑だよ!
「さいですか……」
そして、再びジャミル側
「くっそ、俺ら小さくなってっから……、少し歩いただけでも
相当疲れんなあ……」
ジャミルとアイシャは草茫々の場所を歩き回るが、行けども
行けども先は草ばかりで何も見えず……。
「……はあ~……」
歩き回って疲れてしまったらしく、アイシャがしゃがみ込んだ。
「大丈夫か……?、少し疲れちまったかな……」
「……ううん、お腹……すいたの……」
アイシャが顔を赤くした。
「だよな、俺もだよ……、何せあの距離の階段登って腹が
すかねえ方がおかしいわ……」
ジャミルもウンコ座りを始めた。
「あのアリさんでもどうにかして食べられないかしら……?」
「アリか、アリねえ……、あり……?」
「!!!」
「……アリだあああああ~~!!」
二人は巨大な軍隊アリの集団に出くわし、追い掛け回される羽目に……。
「ジャミル!このパターンだと……」
アイシャがジャミルの手を掴んだ。
「あ?……そうか……、あ……」
目の前には巨大な蟻地獄に、後方には巨大な軍隊アリの集団……。
「しょうがねえ……、戦うか……」
「頑張らないとね!また、アルベルトとダウド、チビちゃんにも
会う為に!!」
そして、行方不明の二人は……
「ダウド、目を覚まして……」
「……あ……?アル……?いてててて!」
「足に怪我してるんだよ、あまり無理しちゃ駄目だよ……、
回復魔法を掛けてみたんだけど……、魔法の威力が
絆創膏張った程度にしかならないんだよ、ごめん……」
「い、いや……、大丈夫だよ、気を遣ってくれてありがとうね、アル」
アルベルトを心配させないようにとダウドが笑った。
「どうしてだろう、やっぱり背が小さくなってるから魔力も
半減するんだろうか……」
「それにしてもここ何処?何でオイラ、ベッドの上にいるの?
ジャミルは?アイシャは?」
何が何だか理解出来ないと言う様にダウドがアルベルトに訪ねる。
「この人達が助けてくれたみたいなんだ……」
「おう、目、さましたな」
2人の目の前には厳つい顔の、角兜を被った髭もじゃの小さい
小太りの男が立っていた。
「あ、あなた達は……?」
ちょっと身を引きながらダウドが尋ねてみる。
「おう、おれたち、スモールドワーフ!普通のドワーフより
更に背が小さい」
「へえ……、珍しい種族だねえ……」
「おう、お前ら、気絶しててアリに食われそうだったから
此処まで倒れてたの、俺達の住処、地底までよいしょよいしょ
よっこらしょと連れてきた」
「そうだったんですか……、此処、地底なんですねえ~、
有難うございます……」
ダウドが深々と頭を下げた。
「リーダー!大変だ」
「おう、なんだ?」
どうやらこの助けてくれたおっさんがリーダーらしい。他の仲間らしき
ドワーフが部屋に入って来るなり、リーダー格を呼ぶ。
「まただれか、上でアリに襲われてる」
「おう、大変だ、今日は良くアリが暴れてるな、丁度いい、
また食料確保にでも行くか」
「あのっ……!」
アルベルトがリーダー格に声を掛けた。
「おう、待ってろ、すぐに戻る、行くぞお前ら!」
「あ……」
リーダー格は武器を持って、仲間をぞろぞろ連れ、地上に
出て行ってしまう。
「……あのおじさん、おうおうばっかり言うんだねえ……」
「気にかける処、其処じゃないだろ……」
「ねえ……、今のうちに…逃げちゃう……?」
「悪い人達じゃなさそうだし、もう少し此処にいてみようよ……」
「……うん、それにしてもお腹すいたよお、ジャミルとアイシャ……、
大丈夫かなあ……」
……ジャミルとアイシャ、二人がさっき、地上で全く同じ事を
呟いたのをダウドは知らない。ダウドは二人に会える事を信じ、
ベッドのシーツの裾を強くぎゅっと掴んだ。
「……二人とも……、どうか無事で……」
今は二人の無事をただ祈るしか……、アルベルトにも出来ないのだった……。
「あっ……!?」
「アイシャっ!このっ!!」
アイシャを狙ってくる軍隊アリからジャミルが必死でアイシャを
庇いつつ王者の剣で攻撃する。しかし、流石の王者の剣でもこの
サイズになってしまっては、玩具の剣程度の威力しか成らない為、
真面に力を発揮出来ないのである。……二人は追い詰められていた。
「駄目……、お腹すいて……、もうアリさんがこんなに嫌なんて
初めてだわよ……」
後方にはまだまだ大量に軍隊アリの大群が控えている。
「俺も……、目、回ってきたかも……」
けれど、何が何でもアイシャを守らなければならない為、
ジャミルは自分の頭を叩いて気を引き締めた。
「こんにゃろっ!えいっ!……駄目だあ~、全然当たんねえ……、
クソッ……、アリになんか負けたら……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ミニマム・カルテット編 作家名:流れ者