zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ミニマム・カルテット編
「……キノコの臭いと……、この部屋の元々の悪臭が……、
ミックスしちゃってるんだね……」
あまりの凄さにアルベルトも自分の口を押える。
そして遂にリーダー格が禁断の自分の部屋のドアを全開にすると……。
「……うわあ……」
部屋の中に……、腐った松の盆栽が放置してあり、その松の
根元にかなり大きめのキノコが沢山生えており、どうやらそれが
目的の毒マツタケらしかった。
「おう、この松は俺の趣味だあ!……面倒見きれなくなってな、
放置しておいたら、毒マツタケとかいう、くせえ茸が生えちまった!
おうおう、がはは!」
「毒マツタケって……、今の僕らのサイズでこんなに大きいのか……、
普通のキノコと何ら変わりないんだ……」
アルベルトが毒マツタケに近寄って行ってみて、あれこれと色々調べている。
「んじゃあ、つまり、俺達が元に戻ったら……、これだと普通の
シイタケぐらいのサイズだな」
「よくもこれ程の物、生やす気になるねえ……」
臭いが強烈なのも忘れそうになり、ダウドも珍しそうに毒マツタケに触る。
「おう、んじゃあ、お前ら頼むでよ!」
そう言うなり、リーダー格は毒マツタケを、持っていた鎌で
スパスパ刈りはじめると、ジャミル達にも専用の鎌を渡す。
「よしっ……、俺達もやるか!」
ジャミルが腕まくりをする。
「……チビちゃんの為よ……、頑張るわ……!」
4人は部屋の中の臭いを堪えながら……、マツタケ狩りならぬ、
マツタケ刈りを始める……。
「この臭いって……、やっぱり毒マツタケのなのかなあ~、
マツタケって……、本当は凄くいい香りなのにぃ~、逆だなんて~……、
ううう~くさい……」
(これを塔まで持ち歩くのか……、い、いやだ……)
「ホント、あんのドラゴンも趣味わりィよな、こんなモン好物とかよ……」
「あ~ん!くさいー!水浴びしたいー!もういやーー!!」
……それぞれに、ブツブツ文句を言いながら、チビの為に4人は
只管せっせと、悪臭に耐えながら毒マツタケ刈りをする……。
「……お、終わりだ……、みんな…刈ってやったぞお……、ざまあみろ……」
「これで……、100本分ぐらいはあるよ……、ね」
部屋の中に生えたすべての毒マツタケを刈り終え、4人は部屋に倒れる……。
「おう、ご苦労さん!ホント悪ぃなあ!!」
リーダー格は相変わらず豪快に笑う。
「さて、ここからが問題だよ……、一体どうやってこの大きい
毒マツタケを地上まで運ぶか、そして、どうやって僕らは元の
大きさに戻ればいいのか、そして見知らぬ土地から、どうやって
山竜の処まで戻ったらいいのか……」
倒れていたアルベルトが立ち上がった。
「……どうやって尽くしだな……」
「おう?お前ら、そんなモン必要なんか?」
「事情があってさ、使うんだよ……」
「……あのね、リーダーさん……、私達……、実は……」
「おう?」
アイシャが等々、リーダー格に自分達の素性を思い切って話した。
リーダー格は最初、不思議そうな顔をしていたが、特に4人に
つめ寄る様な真似はしなかった。
「おう、そうか……、おめえら人間だったのかい、どうりでなあ」
※注 アイちゃんは元々原作じゃ人間じゃないんだけど
「騙すつもりじゃなかったんだけどさ、ごめんよ……」
「おう、いいって事よ、別におめえらは人間にしちゃ、
初めて見た時から嫌な感じしなかったしなあ、それにしても
おめえらも苦労してんだなあ、ガハハ!」
「ははは、いてえ……」
リーダー格がジャミルの肩を叩いた。
「おう、何だったら毒マツタケは俺達で外まで運んでやるし、
それに山竜の塔なら此処からそれ程遠くねえぞ?」
「……ほ、ホントかい!?助かるよ……、って……?塔、近くなのか?」
「おう?よく見なかったのか、外出たらもう一回周りよく見てみな、
でけえ塔が立ってるからよ」
「そうだったのか……、外なんか見てる余裕なかったしなあ……」
「おう、とにかくこの毒マツタケは外まで運んでやらあ、
他の連中にも声掛けてくんぞ」
「……何から何まで……、本当にすみません……」
お礼を言いながらアルベルトが頭を下げる。
「あれ……?ダウド、お前何か背が少し伸びたか……?」
「えっ?そんな事ないと思うけど……」
「アルもよ……、さっきより何だか背が伸びてる様な気がするわ……」
「ちょっと待って、て、事は……」
アルベルトがう~んと唸り、考える。
「……」
「僕ら……、元の大きさに戻り始めてる……、って事かな……」
「大変だっ!早く外出ようぜ!!」
「あわわわわ!」
「……きゃー!早くしないと皆のお家壊しちゃう!!」
4人は慌ててリーダー格へと報告に走る。そして、毒マツタケを全て
ドワーフ達に手伝って運んで貰い、4人は地上に出る。
「おう、良かったな、これでもう少し時間が立ちゃお前ら元に
戻れんだろう?いやー、良かった良かった!がっはっはっは!」
「がっはっはっは!!」
リーダー格とドワーフ達は声を揃えて豪快に笑った。
「ありがとな……、皆、……すげー貴重な経験が出来たよ……」
「本当にお世話になりました、あなた方がいなかったら……、
僕ら今頃本当にどうなっていたか……」
ジャミルとアルベルトがドワーフ達に心からのお礼を言う。
「おう、オメーらも元気でな!俺達は後半年ぐらいは此処に
居座るから何か困った事があったらいつでも来いよ!穴の前で
大声でも出しゃ、すぐに地下から出てきてやっから!」
「……ぐすっ、おじさ~ん……、みなさん……、お世話になりました……、
元気でね……!」
お別れにアイシャが涙を溢し、リーダー格に抱き着いた。
「……おうっ!おじさんじゃねえって、何回言ったらわかんだあ!?
……たく、しかし、笑ったり泣いたり……、ようコロコロ変わる
娘っ子だなあ……」
「ご、ごめんなさい……、え、えへへ……」
アイシャが泣きながら照れ笑いし、舌を出す。
「おう、タレ目はもう足は大丈夫なのか?」
「うん、皆のおかげでもうすっかり平気だよお!ありがとう!」
ダウドも笑顔で皆に挨拶した。
「おう、んじゃ俺達はこれで!元気でな!!」
「風呂入れよ!」
「歯、磨けよ!」
リーダー格は仲間とぞろぞろ再び地下に戻って行く。やがて、ドワーフ達の
姿も見えなくなった頃……。
「……やっと、元の大きさに戻った……」
ジャミルが立ち上がり自分の足元を見た。
「……おじさん達……、行っちゃった……、本当に又……、
会えるといいな……」
アイシャが淋しそうに、ドワーフ達が去って行った方向を見つめ、
呟く。ジャミルとアイシャが軍隊アリに追掛けられた広い草原も……。
元に戻ってみれば足元にただ雑草が生えているだけの場所だった。
「……考えてみれば……、あのベビーサタンが小さくして
飛ばしてくれたから……、大変だったけどオイラ達、毒マツタケ
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ミニマム・カルテット編 作家名:流れ者