zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ダウド大暴走
「ぴゅぴ!ねー、みてみて!あの人たち、みんな頭面白いよ!
つるつるの頭から少しだけおけけが生えてる!」
チビが異様に興奮して喜びだした。
「あー?あ……」
周りに広がる田園風景……、と、せっせと畑を耕し働く
異様な頭の人々、いわゆる、……ちょんまげであった……。
「頭の後ろに……、バ、バナナつけてる様な髪型ね……」
「あいつ……、どんな夢見てんだよ……」
……ダウドの思考回路を今一理解出来ず、ジャミルが呆れて頭を抱えた。
「あっ!ダウだよっ!いたよっ!」
「……えっ!?」
チビの声にトリオが一斉に反応し、同じ方向を見ると
ダウドがぼーっと……、あさっての方向を向いて突っ立っていた。
「……」
「ダウドっ!」
ジャミルが声を上げてダウドを呼ぶ。
「……!」
「ちょっ、待てよ!何で逃げんだよ!おいっ、待てったら!!」
慌てて逃げ出すダウドを追おうとするジャミルだが……。
「こらっ!ジャミ朗っ!!」
「……え……」
驚いて、思わず聴こえてきた別の声に耳がいってしまう……。
結果、ダウドは走って何処かへそのまま逃げて行ってしまった。
「……何だよ、おかあ、うるせーな!おらあ働きたくねーんだよ!」
「冗談じゃねーよ、今月の年貢納め日が迫ってんだよ、
とっとと働いとくれ!」
「いてっ!」
母親らしき人物が草鞋で息子の頭を引っ叩いた。
「ぴゅぴい~?」
「あの親子さん……、何だかジャミルとアルにそっくりなんだけど……」
アイシャがジャミルとアルベルトを見た……。
「!!」
頭はちょんまげではないものの、髪はぼさぼさ……、姿は汚い着物で
ジャミル似の若者が道端にねっ転がって鼻糞をほじくっていた……。
「な、な……」
自分……?のあまりの情けない姿にジャミルが唖然とする……。
「あーあ、やってらんねーな、よいしょっと!」
ジャミル似の若者が立ち上がってぽりぽり、尻を掻いた。
と、其処へ……。
「……父ちゃん、一回、びしっと言ってやって下さいよ……、
もうあたしの言う事なんかまるで聞かなくて、この馬鹿息子は
どうしようもないんですよ……、うう、あたしゃ情けなくて……、
涙が出ますよ……」
アルベルト似の母親が誰か連れて来た様だった……。
「わかったわ、私が怒ってあげる!もう~っ!全く、本当に
どうしようもないんだからっ!ジャミ朗ったら、ぷんっ!」
「まさか……、この声……」
今まで騒動を見ていたアイシャが今度は顔面蒼白になる……。
「ぴ?ぴ?」
チビがアイシャの方を見たり、ジャミルとアルベルト達の方を見たり……。
「……きゃ、きゃあ~!?」
思わず大声を出しそうになったアイシャの口をジャミルが慌てて塞いだ。
現れた、何故かアイシャ似の親父……?は、頭に麦わら帽子を被り、
顔にはカールおじさんの様な……、丸い髭が生えていた……。
「……プ、プププププ!!」
アイシャの口を塞ぎながら、堪らずジャミルが吹きだす……。
口を塞いでいる手が震えている……。
「……ぷはあ!酷いわっ!幾ら何でも酷いわっ!!」
涙目になってアイシャがジャミルの頭をポカポカ殴りながら
ギーギー抗議する。
「お、落ち着いて、アイシャ……、これはダウドの見てる夢だからね……」
「幾ら夢だって酷いわよう!……ダウドったら!!失礼よっ!一体どういう
神経してんのよっ!!」
「……むかついたけど、何か面白えから、もう少しこのまま見てるか……」
「全然面白くないわよっ!!」
「きゅぴ?チビは出てこないの?……どこかにいるのかな?」
自分が出て来ないのをチビが不思議がる。
「……もういやっ!早くダウドを追いましょっ!!」
アイシャがジャミルとアルベルトをせっついた。アイシャが怒って
ぐずり出した為、仕方なくその場を退散し、ダウドの後を追掛ける。
……と、トリオが一歩踏み出すと、又風景が変わった……。
「ありゃ?又違う場所だぞ……?この家……、何だい?」
「ピンク色のお屋根のお家ね……」
「あ、あそこにもジャミルとアルがいるよ?」
「……は?」
トリオが再びチビの声に耳を傾け、正面を見ると……。
「……」
「ジャミ太っ!もうっ、お庭の草むしりして頂戴って
何回言ったら判るのっ!まだお使いも済んでないでしょっ!宿題はっ!?」
「あーっ!?これから全部するんだよ!うるせーな!」
やけに反抗的な……、の〇太である。
「それからまだ、この間の算数のテストの答案、ママに
見せてないでしょっ!見せなさいっ!!」
ジャミルとアルベルトはあいた口が塞がらず……。二人してアゴが
外れたままの状態になる……。
「お、面白い……、ね……」
アイシャが苦笑いした……。しかし、数分後には、彼女もそんな事を
又言っていられなくなる状況になるのである。
「面白くねえっ……!!大体さっきと変わり映えしてねえじゃねえか!!」
「じゃあ、私は……、しずかちゃん……?」
と、アイシャが言った時……。
「……パパっ、何とか言ってあげて下さいよっ、大体あなたがきちんと
叱らないからダメなんですよ!!」
アル玉子ママがハンカチで顔を拭いた……。
「……わかったわよっ!せっかくの会社のお休みの日にジャミ太ったら!
本当にしょうがないんだからっ!ぷんっぷんっ!!」
家の中から又……、甲高い声がした……。
「何だかまた嫌な予感がするわ……、何でかしら?ねえ、ねえっ!!」
顔が真っ青になってアイシャがジャミルとアルベルトを突っついた。
「きゅぴ?誰かお家から出てくるよ?」
「……きゃあああ~っ!!やめて~っ!!出てこないでえ~っ!!」
又アイシャが大声を張り上げそうになるのをジャミルが何とか阻止する。
「……プ……、プププププ!!」
顔はアイシャだが……、何故か体型だけが……、の〇太のパパ状態の
親父が……家の中から……、のそのそ出て来たのである……。
「いや~っ!!何でこうなるのーっ!!何とかしてえーーっ!!」
ジャミルを拳でドスドス殴りながら絶叫するアイシャ。
「どうにもこうにも……、ダウドの夢だから……、ねえ……」
呟いて、アルベルトがお手上げのポーズを取った。
「……きゅぴ、またチビ、いないねえ、どこにいるのかな……?」
まだ自分の出演だけないのをチビが淋しがる。
「とにかく、ダウドの野郎を捕まえねえと……!このままじゃ、
まーた変な役にされちまう!!」
「……ハア……、そうだねえ……」
「そうよっ、……冗談じゃないわよっ!!」
アイシャは激おこぷんすかぷん状態である……。
夢の国のヘタレ 後編
「あっ、ダウ、めーっけ!」
チビが早速、ウロウロとそこら辺を徘徊していたダウドの姿を見つける。
「……!」
チビの声に驚き、またもダウドが後ずさり……、逃げようとする。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ダウド大暴走 作家名:流れ者