zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ガライ、ふたたび。
「さすが、アルベルトさんですね、知識が豊富でいらっしゃる……」
うんうん頷いて感心するガライ。
「……それ以外は全く天然で世間知らずだけどな……」
「オホン……!」
アルベルトがジャミルを横目で見、咳払いをする。
「確かにマンドレイクの根は色々な魔法や薬の調合等に
利用されるそうですが、一歩間違えば死の危険と隣り
合わせにもなる、恐ろしい怪物です……、
……今すぐ此処を出ましょう!」
「そう言うこった、何だかわかんねーけどさ……、さあ帰ろ、帰ろ!」
「嫌です……、帰りません……」
「おーいっ!?」
案の定、ガライの頑固拒否が始まる……。
「これぞ、僕の求めていた幻の薬草になるのかもしれません……、
この根を飲めば、僕の声もきっと……、美声になる筈……、
誰もが聴き惚れる様な……」
言う事を聞かず、ガライがふらふらとマンドレイクに近づこうとするのを
アルベルトが慌てて止める。
「ガライさん、お願いですから言う事を聞いて下さい!……冗談抜きで
本当に危険なんです!」
(さすがのアルも切れてきたかな、だから甘やかすとよくねーん
だっつーの……)
「何が……、どう危険なんでしょうか……」
「ですから…」
きちんともう少し細かく説明しないとガライは納得いかない
様子だった……。
「奴の歌声は、歌声を聴いた相手を死に至らしめる場合が
有ると云う事です、さっき僕らが聴いても大丈夫だったのは……、
偶々、運が良かったんでしょうね……」
「きゃー大変っ!ジャミルの鼾と同じだわっ!!」
「……あのな、俺の鼾は殺人かよ……」
「……♪ら、ら、ららららら~う……」
マンドレイクが2発目の奇声を発しようとするが、
アルベルトが機転を利かし素早くマホトーンで声を封じる。
「……ふう、何とか効いてくれて助かった…」
「アル、平気か?お前大分精神的に、まいってきてるだろ……?」
「大丈夫だよ、……でも、何とかガライさんが諦めてくれると
いいんだけどね……」
「きゃああああーーっ!!」
マンドレイクに負けない甲高い叫び声を突然アイシャが発した。
「ど、どうしたの、アイシャ……!!」
「前見て、前ーーっ!!」
「これは……」
いつの間に集まって来たのか……、前方に大量のマンドレイクが
溢れかえっていた……。
「ちっ、仲間呼びやがったな、んなろ……!」
「こんなにいたんじゃ、絶対に歌声は防ぎきれない……!!」
しかし、大量のマンドレイクを前にガライだけは一人、
凛々と目を輝かせていた……。
「仕方ない……、アイシャ、此処は僕達二人のベギラゴンで
一掃してしまおう!」
「ええっ!!失敗は許されないわね、ちょっと緊張かも……」
アイシャがアルベルトの言葉に頷いて身構える。
「ま、待って下さい……!一掃という事は……、根も全部
燃やしてしまうと言う事……、ですよね……!?駄目ですよ、
そんなの!!」
やっぱりと言うか、ガライが慌てて抵抗する。
「しかし、こんなに大量にいたのでは……、いずれこの数が、
更に増殖し、洞窟の外まで溢れたらどうなりますか?奴は自分の
意志を持たない恐ろしい怪物です……、そうなったら、アレフガルドの
人々が又、危険な目に曝される事になるかも知れません……」
「ですが、僕は……」
「おい、ガライさあ、お前、声帯って知ってるか?」
「何ですか、知ってますよ、バカにしないで下さいよ……」
ガライがジャミルを不満そうな顔で見る。それでもジャミルは
気にせず言葉を続けた。
「だな、馬鹿の俺でもそれぐらい判るよ、薬飲んで綺麗な声に
したいんだか何だか知らねーけど……、もしも声質が変わったら……、
今のお前の声……、失う事になるんだぞ、……それでもいいのかい?」
「ジャミルさん……?」
「どんな時でも、今のお前の声でずっと歌ってきたんだろうが……、
メルキドで聴かせてくれたあの歌声をさあ……、俺には今のオメーの
声の何が不満なんだか、さっぱり分かんねえよ……」
「……」
「別に聴きたくない奴には無理に聴いて貰わなくたって、いいんじゃね?
歌なんか興味ない、中には嫌いな奴だっているんだしさ、人それぞれだよ、
あんたはあんたのまんま、そのままでいいんだと……、俺は思うけどなあ……」
「……アルベルトさん、アイシャさん……」
ガライが二人に近寄って行く。そして……、こう告げる。
「マンドレイクの駆除を……、お願いします……」
「ガライさん……!!」
「ガライ……!お前、分ってくれたんだな!?」
ガライがトリオに向かってコクリと頷いた。そして、アルベルトと
アイシャの連携ベギラゴンがあっという間に全てのマンドレイクを
焼き尽くし、無事、駆除は完了した。
「はあ、終わった……」
「疲れたわ……」
「あまりにも増えすぎると危険すぎて、いずれ自分の身も危ねえから……、
ゾーマもこの洞窟を封印したりしてな?」
「さあ?それは分らないよ……、天下の大魔王に限って怖い物なんか
なかったと思うよ……」
「これで、ガライさんも……、宿屋に戻ってくれるかしら……?」
トリオはぼーっとして放心状態になっているガライを見つめた……。
「……はっく、しゅん……!!」
ガライがくしゃみをしてコテンと地面に倒れた。
「……ガライっ!!」
トリオが慌ててガライに駆け寄ると……、ガライは気絶していた……。
「……呼吸はしてるけど、固まっちゃってるわ……」
アイシャがガライの脈を取った。
「そう言えば、ガライさん、防寒着着て来なかったんだっけ、
又冷えちゃったんだね、……忘れてたよ……、急いで僕のルーラで
ラダトームまで戻ろう……」
新たな道へ
宿屋に戻り部屋に行くと、すっかり腹痛の治まったダウドが
チビと遊んでいた。
「あ、お帰りー!」
「きゅっぴー!ぴゅぴー!」
「呑気だな、お前ら……、ま、いいけどさ……」
「ただいま……」
ジャミルに続いてアルベルトも部屋に入ってくる。
今回はガライのサポートも彼が熟した為か、相当疲れている。
「アルもお帰り……、って、大分疲れてるみたいだねえ……」
「ふう、疲れたなんてもんじゃないよ……」
「じゃあ、チビがお疲れさま、してあげるね!」
チビが二人の側に飛んでいき、顔をペロペロ舐めた。
「ありがとな、チビ……」
「チビ、ありがとうね」
「きゅっぴ!」
「……ほらっ、ガライさん、入ってよ、早くっ!!」
続いて、ガライを引っ張りながらアイシャも男衆の
部屋にやって来る。
「あー、アイシャも帰って来たー!お帰りなさいー!!」
「きゃあ♡チビちゃーん!ただいまー!お帰りの挨拶
ありがとねー!うれしいー!!」
アイシャがチビをぎゅっと抱きしめスリスリする。
「あの、僕は……」
「ほらっ、早く中に入ってったら!」
アイシャが廊下で立ち往生しているガライを更に強く無理矢理
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ガライ、ふたたび。 作家名:流れ者