zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 奇妙な出会い
「……上の世界へ戻れるかもしれない……、奇跡の扉って知ってる?」
おずおずとジャミルが国王の顔を見る……。
「……判らぬ、すまぬ……」
「駄目か……」
4人そろってがっくりくる……。難しいだろうとは分かって
いたものの……。
「上の世界へと言う事は……、戻りたいのだな、そなた達の
故郷でもあるな……、うむ、気持ちは分るぞ……」
「う、うん……」
ただでさえ毎日大変な国王を混乱させない為、チビの話などは
国王には話さず、控えめに伝えておく……。
「ふむ、しかし、この城の地下に色々と昔の文献や本などが集めてある
資料室が有る……、良かったら利用してみるとよい……」
「ええっ、宜しいのですか、陛下……!!」
本大好きのアルベルトが目を輝かせる。
「うむ……」
「アルってば……、本と聞いた途端、いきいきし過ぎだよお……」
「本当ねえ……」
しかし、アルベルトとは趣味が対照的なジャミルは……。
「うえっ、俺、本は嫌いだ……、せめて漫画ならいいけど……」
「我慢しなさいよっ、チビちゃんの為なんだから……」
「うええっ……」
そして、4人は許可を貰い薄暗い城の地下へ降りる。
「……はあ、凄いなあ、此処……、この世界の歴史が一目で
解るかも知れない……」
「はえ~、オイラ、全然わかんないやあ……」
「アル……、奇跡の扉の方の資料探してね?お願いだからね……」
本の事になると夢中になり過ぎるアルベルトをアイシャが心配する。
「だ、大丈夫だよ……」
と、言いつつも片っ端から色んな本を漁ってみたくて
しょうがないアルベルト。
「?ちょ!ジャミルってば、こんなとこで寝ちゃだめだよお!」
「駄目なの……、俺、本見ると……何とも言えない……、だるさと
眠気と頭痛と睡魔が俺を襲うんだ、もう駄目だ……」
「ジャミル、眠気と睡魔は同じ様な物よ……?」
アイシャが突っ込んでみる。
「皆の者……、儂亡き後、後は頼むぞよ……、がくっ……」
「ザメハ……!」
「あ、何だよ……、目が覚めちまったじゃねえかよ……!」
「皆で探さないと……、この膨大な資料の山からね……」
「……ちーくしょー!ちーくしょー!ブブッブブーだ!」
「豚さんは養豚所へどうぞ……」
「……誰が豚だっ!バカダウド!!」
「きゅ~ぴ~……、チビ……、おしっこ……、と、うんち……」
チビが寝起きで突然ぐずりだす……、そして、排泄も……。
「ええっ!?ま、また……、チビちゃんてば!」
「きゅぴ~……」
「アイシャ、大丈夫だよ、僕らで調べておくから先に
チビをトイレに連れて行ってあげて……」
「う、うん、すぐに戻ってくるから!」
「ちっ、……ずりいな、チビの奴……」
そして、アイシャは城の外へ出て、どうにか無事にチビを
町の公衆トイレに連れて行く……。
「はあー、間に合ったわあ、良かったああああ~……」
「アイシャ……、スラ太郎がいないよ……?」
「えっ?えええーっ!?大変っ、さっき急いで走ってた時に
何処かへ落しちゃったのかな……、どうしよう……、早くお城にも
戻らなきゃならないし……」
「きゅぴ~……、ごめんなさい……」
「別にチビちゃんの所為じゃないわよ、ほらほら、そんな顔しないの!
でも、もしもチビちゃんを落しちゃったらもっと大変だったわよ……、
はあ、駄目ねえ、私ってそそっかしいから、えへへ!」
「きゅぴ~……」
それでもチビはアイシャが無理をしているのが解り、
悲しそうな顔をする……。
「もしかして、これはお嬢さんのぬいぐるみですか……?」
「えっ……?」
見た目は若いが、髪の色が白髪の様な青年がこちらにブーツの
足音をツカツカと立て、近づいて来た。
「あっ……、そ、それ……!私の大事な人形なんです!!落しちゃって
困ってて……、良かったー、ありがとうございます!!」
チビをバッグにさっと隠して、アイシャが何度も青年にお礼を言った。
「随分と、大事になされているのですね、その人形……」
「はい、大好きな人から貰った……、その……、私の宝物……、
なんです……」
スラ太郎を握りしめ、アイシャが顔を赤くする。
「ふっ、ごちそうさまですか……、お若いですね……」
「え?……あの、その……、あは……」
「ところで、お嬢さん……、一つお聞きしても良いですか?」
光と闇って……平等だと思いますか……?」
「……はい?」
青年のいきなりな突拍子もない質問にアイシャが戸惑う……。
「以前、このアレフガルドは大魔王ゾーマによって、闇に
覆われていたでしょう?その時は、皆、闇を嫌い……、早く光を
求めていたじゃないですか……、闇ってやっぱり邪魔なんですかね……」
「あの、質問の意味がよく判らないんですけど……、でも、夜寝る時は
暗くないと困るし……、やっぱり、闇も光も平等に来ないと駄目なんじゃ
ないですか……?」
「平等ですか……、成程……」
青年がじっとアイシャを見る。
「……」
「分りました、お嬢さんはそうお考えなのですね……、では、
僕はこれで……」
「あ、あの……」
謎の青年は纏っている黒いコートを着直し、そのまま何処かへ去っていく……。
「はあー、スラ太郎拾って貰って助かったけど、変わってる
イケメンさんだったわ……、やっぱり、イケメンさんてちょっと
癖のある人が多いのかしらね……」
「チビ、あの人のお顔舐めたくない……」
「あら?チビちゃんが拒否するって言う事は……、あまり良くない
感じなのかしら……」
「変なニオイがぷんぷんしたよお……」
「そう言えば、強烈なコロンの臭いしたわね、あはは!そう言う事ね!」
「きゅぴーっ!」
「さあ、遅くなっちゃうと困るから、お城へ戻りましょうね!」
アイシャはチビを連れ急いで城へと掛けていく。……その様子を
先程の青年が見つめていた……。
「……光は……、要らないのさ……、闇だけで充分なんだ……」
トラブルは何処までも……
「駄目だな……、此処の本、片っ端から漁り捲ったけど、奇跡の扉に関する
情報なんか載ってるのは一冊もねえぞ……」
「僕の方も……、色々とこっちの方の資料を見てみたけど、何処にも……」
「目が痛くなってきちゃったわ……、ここ、カビと埃くさいし……」
「きゅぴっぴ、ぴい~、お山が出来たよ!」
「こ、こら……!チビちゃん……!本でタワー作って遊んじゃダメだよおー!!」
「はあ……」
4人は相変わらず情報収集に悪戦苦闘しており、チビも悪戯する為、
全然作業進まず。
「とてもじゃねえけど、この量を一日で調べるのは無理だわ……」
「又、何日か宿屋から通いづめかな……」
「今日はもうよそうぜ、あーやだやだ!」
本を棚に戻してさっさとジャミルが退室する。
「ジャミルってばもう……、仕方ないね、僕らも戻ろうか……」
「うん……、もう日も暮れるわね……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 奇妙な出会い 作家名:流れ者