zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 奇妙な出会い
「だけど……、もし……、ここの資料を全部読めたとして……、
奇跡の扉に関する情報が全然見つからなかったとしたら……?」
「今からそんな恐ろしい事言わないんだよ、ダウド……」
アルベルトが眉間に皺を寄せた……。
「ご、ごめん……」
「チビちゃん、遊んだら本はきちんと片づけなきゃ駄目よ、本当は
本をおもちゃにして遊んじゃいけないんだからね……?」
「きゅっぴ!はーい!」
アイシャが注意するとチビは無邪気に元気よく片手を上げるのであった。
本日の作業を終了し、ラルス国王に礼を言うと4人は城を後にする。
「……姉ちゃん、姉ちゃん、ちょっと、ちょっと……」
帰り道、町を歩いていると、薄汚い子供がアイシャの側に近寄って来た。
「なあに?何か用?」
「その姉ちゃんが下げてる入れモンから美味しそうな匂いがすんな、
ちょっと見せてくれよ……!」
子供はいきなりアイシャが下げているバッグを引っ手繰ろうとする。
「……こ、これは駄目よっ……!やめて!食べ物なんか入ってないったら……!」
アイシャが慌ててバッグを庇うが、子供はバッグを引っ張るのを止めない。
「ちょっとぐらいいいだろっ!……な、中身見せろっ!」
「お願い、やめて!引っ張らないで……!!あっ……!?」
それでも子供は無理矢理、チビの入っているバッグを乱暴に掴み、
引っ手繰ろうとした……。
「コラ!ガキャ!!いきなりなんだ!!」
等々ジャミルが飛び出し、子供を一発ぶん殴った。
「……いってえー!何しやがんだ!この短足エロ親父ーっ!!」
子供は頭を押さえてジャミルに悪態をついて逃げていった。
「短足だとう!?バッキャローっ!俺あ短足じゃねえやい!
それにまだ全然親父っつー歳じゃねえぞっ!!エロも余分だーーっ!
もっとよく人の顏見て物を言え、馬鹿ガキーーッ!!」
「うるせーバーカ!」
4人から遠く離れたところで子供が半ケツを出し、おしりぺんぺんを
した後、おならをして逃げて行った。
「ハア……、びっくりしちゃった……、いきなりストレートに
ひったくりなんだもの……、でも、チビちゃんが無事で良かった……」
「きゅぴ!」
アイシャがバッグの中のチビを見て、ほっと一安心する。
「身なりからして、浮浪児かな……、ラダトームにもいたんだね……」
「でも、あの子、なんか感じがジャミルに似てたよね……」
「はあ?じょ、冗談言うなよっ、バカダウド!!」
「そうね……、口の悪いところとか……、何となく憎めない感じとか……」
「似てねーよ、全然似てねー!……似てませんっつーの!!」
やけに大声を上げて否定するジャミルの姿に他のメンバーが笑いだした。
しかし……、4人の明るい雰囲気と裏腹に……、町の酒場で……。
「アニキ、確めて来たよ、ありゃ本当にドラゴンだったぞ……、
だって……、おれ、見たんだもん……、あの姉ちゃんが昼間小っちゃい
ドラゴンと話してたのをさ、ぬいぐるみかなと思って見間違いかもと
思ったんだけど……、バッグからドラゴンが顔出して話してたんだよ、
本当だよ……」
「坊主、本当だな……?」
「間違いねえよ、……ほら、情報料くれ……」
「ほらよ……」
男の一人が子供に小銭を渡すが、渡された小銭を見、子供は
不服そうな表情をする。
「これだけかよ、これじゃ駄菓子もろくに食えねえぞ……」
「甘ったれんじゃねえよ、世の中は厳しいんだよ、本当に金が欲しきゃ
今度は本当に証拠としてその喋るドラゴンを捕まえてこい、そしたら金と
引き換えだ……」
「よ、よし、約束は守れよ……、おれ、本当にドラゴン捕まえてくるからな、
金くれよな……、本当にだぞ……、ビビっても知らねーかんな!」
子供は慌てて再び酒場の外に走って行く。子供が消えた後、男達は
声を揃え大笑いする。
「ふふ、まだケツの青いガキは可愛いねえ、馬鹿でよ……」
「ほんとさあ……」
さて、これから又もう一悶着起こりそうなのを知らず、4人は宿屋の特室で
チビも一緒に食事を取っていた。
「本当に、此処のご主人とおかみさんていい人だよねえ……、
チビちゃんの為に、わざわざ個室の食事部屋を提供してくれてさ……」
「うん、感謝しないとね……、ね?チビちゃん?」
「きゅっぴー!チビ、宿屋のおじちゃんとおばちゃん大好きー!」
「お前、嫌いな奴いないだろ?小悪魔だって結局、懐いちゃったしよ……」
「素直な処がチビのいいところだよ、だから皆に可愛がって
貰えるんだよ、ね?」
アルベルトがチビに微笑みウインクする。
「ぴゅっぴ!チビ、もっと皆と沢山お友達になりたいよお!」
「本当だよ、ジャミルもチビちゃん見習って素直になりなよ……」
「うん、本当、そうだよなあ……、って、うるせーよ、バカダウド!」
「あいたっ!」
今年も全く、やる事なす事進歩せず、相も変わらない悪友コンビの
二人であった……。そして、宿の外では、先程の子供が一行を見張って
ウロウロしていた。
「奴ら、確かに此処に入って行くのを見たんだよな……、兄ちゃん達は
手強いけど、あの女だけなら、何とか……、ああ~!どうにかしてあの女だけ
引っ張り出さないと!でも、どうしよう、……あれ?」
子供が悶えている処、別の客が宿屋へと入って行く。
「ごめん下さい、夜分……、申し訳ありません……」
「はい……?」
4人は食事のお礼を言おうと、一旦チビを部屋に置いてロビーへと向かう。
「知りませんかね……?ほんの少しの情報でもありましたら、
何か教えて頂けると大変有難いのですが……」
「はあ……、ですが……」
「……何かあったのかい?」
「ああ、ジャミルさん達……、この方……、密猟者を追われている方……、
なんだとか……」
おかみさんがジャミル達に宿に訪れた中年の男性を紹介する。
無精髭のダンディな中年男性がジャミル達の方を見て、挨拶した。
「初めまして、実は私、数年前から一人で密猟者を追っている者です……、
近年の奴らの横暴には我慢出来ません……、一つでも多く、奴らの組織を
壊滅させたい……、そう願い、日夜戦っております……」
「ひ、一人でえ……?凄すぎだよお……」
「……私……、嫌……、駄目……」
密猟者と聞いて、又あの時の記憶がフラッシュバックしたのか、
アイシャが震えだし、その場にしゃがみ込んでしまった。
「アイシャ、大丈夫か?部屋でチビと休んでろよ……、話は
俺達が聞いておくから……」
「うん、……有難う……、ごめんなさい……」
アイシャは先に部屋に戻って行く……。
「お嬢さん、御気分が悪いようですが、何かあったのですか?」
「うん、あんたが密猟者を追ってるって言うんなら……、
話聞いて貰っても大丈夫だよな……」
アルベルト達も頷いてジャミルを見た。
「そちらも、何か深い事情がおありの様で……」
おかみさんに又特別部屋を貸して貰い、これまでの出来事を男性に話す。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 奇妙な出会い 作家名:流れ者