zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 奇妙な出会い
「そうでしたか、それでお嬢さんは心にずっと傷を負われて
いるのですか……、おかわいそうに……、ですが本当に悪いのは
奴らです、どうかご自分を責めない様にと伝えて下さい、いつまでも
ご自分を責めてもそのドラゴンは悲しむだけだと……」
「そう言ってんだけどな、中々……、あいつ傷つきやすいし、
一旦気にするとさ……」
「しかし、最近の密猟者集団の力は本当に厄介なのです……、
元、職業密猟者ですから……」
「しょ、職業密猟者……???」
「ダーマの神殿にて、転職し、神から授かった聖なる力を使い……、
悪行へと……、間違った使い方をするのです……」
「ああ、そう言う事か、なるほど、魔法の力とかを誤った
方向に使ってんのか、そりゃ普通のと違って厄介な相手だなあ……、
最近は密猟者も本当に凶悪になったって聞いてたけどよ、どうりで、
あのドラゴンがあんな瀕死になってた筈だ……」
「悪い事は幾らでも思いつくんだねえ……」
「本当だよ、呆れて物も言えないよ……」
「けどよ、ダーマ神殿は上の世界にあるんだから……、て事は、
つまり……、奴らは俺らと同じ、上の世界からわざわざ悪さしに
流れてきてるって事なのかな……」
「だろうね……」
「回転寿司で、流れて来なくてもいいモンばっかり流れてくるのと
同じかな……」
「ダウド、例えが良く判らないんだけど……」
アルベルトがいつも通り眉間に皺を寄せた。
「最近、この近辺に奴らのグループが現れたと聞いて、調査に
此処まで来たのですが、まあ、密猟に限らず手に入れた力を悪用に
使う輩は今の時代、何処にでもいますので……」
「おっさん、俺達で出来る事があるんなら協力するよ、近場に
いるっつーんならさ、とっとと捕まえちまおーぜ!その方がチビも
安心だしな……」
「……協力して頂けるのですか……、忝い……」
男性がジャミル達に頭を深く下げ、宿屋から去って言った。
「でも、奇跡の扉は?どうするのさあ、探すのますます
遅くなっちゃうよ……」
「とりあえず、又後回しになっちゃうけどね、仕方ないよ……」
「うん……」
と、返事をするダウドだが、チビとお別れ……、離れるのがもう少し
先延ばしになるかもと思うと、本当は何となく嬉しくなるダウドだった。
そして……、先程の子供が又酒場へと走って行く……。
「アニキー!アニキー!」
「なんだ、騒がしいな!ドラゴンは捕まえたのか!?」
「……そうじゃねえけど……、大変なんだ!今、宿屋の外で奴らを
見張ってたら……、密猟者を狙ってるおっさんが現れたんだ!!」
「そうかい、そらあ大変だな、はは……」
「ははは……」
「な、何笑ってんだよ、他人事みたいにさあ……」
そして、話は更にややこしい方向へと縺れていく……。
謎が謎を呼ぶ……
「あ、ボス……、お帰りなさいやし……」
「ああ……、俺の留守中に何か変わった事は……?」
「……?……!?」
無精髭の男がゆっくりと酒場に入ってくる。そして、子供をじっと見る。
子供はびくっとし、一瞬たじろぐが、勇気を出し、男に話し掛けた。
「……おっさん……、何で……!?」
「コラ!クソガキ!!ボスに向かって何だ、その口のきき方は!?」
「この、汚い子供は……?」
「はあ、つい最近、この町に辿り着いた時に拾ったんです、
金をくれくれとしつこく近づいて来まして……、孤児の様です……」
子分の一人が酒場に入ってきた男の側に近寄り耳打ちする。
……子供の耳に届かない様に。こっそりと。
「何か、鉄砲玉ぐらい利用出来ないかと思いましてね……、
どうせ誰も文句言う奴もいねーんですし、へへ」
「……うーむ」
男が目線を反らさず、子供をじっと見た。
「だ、だって、おっさん……、あんた……、密猟者を追ってんじゃ
なかったのかよ……、おれ、外でこっそり見てたけど、ロビーから少し話が
聞こえてたんだぞ……」
子供が尻込みして後ずさりする。男はそれでも尚も子供の顔を見るのを
止めない。……何か考えがある様であった。……そして、場面は再び
ラダトームの宿屋……。ジャミル達を待つアイシャはいつの間にか部屋の
ベッドで眠ってしまっていた。
「う、うっく……、ひっく……」
「きゅぴ……、アイシャ泣いてる……、怖い夢見てるのかなあ……、
大丈夫だよ、チビも皆もいるよ、よしよしね……」
チビがアイシャの涙をぺろっと舐めた。
「……?あ、や、やだっ!私ったら……!いつの間に……!?」
アイシャが慌てて飛び起きる。既にもう外は暗くなり夜になってしまっている。
「きゅぴ~?アイシャ、起きた?大丈夫……?」
「え?私は別に大丈夫よ!どうしたの、チビちゃんてば!それよりも、
ジャミル達は部屋に戻って来たかしら……、行ってみましょ!」
「きゅぴ……、うん……」
「やっぱり、金の問題もあるし……、これ以上此処の宿屋に世話に
なるんも心苦しいな……、そりゃ、此処の宿屋の夫婦は嫌な顔は
しないだろうけどさ……」
「だよね、何とか城の方での情報集めも早期でケリをつけて
しまいたい処だね……」
「うえっ……、オイラ目まいしてきた……」
「皆ー、戻ってきた?」
「きゅぴー?」
アイシャがジャミル達のいる部屋のドアをノックする。
「お?アイシャとチビか?いるぞー!入れよ」
「えへっ、お邪魔しまーす!何だかね、寝すぎちゃったのー!
気付いたらもうお外が真っ暗!あははー!」
(……?)
「あのおじさんは帰ったの?」
「ああ、用があるんだとさ、此処じゃねえとこに暫く泊まるらしいぜ」
「そうなの、優しそうな感じのおじさんだったね……」
「……その話なんだけどね、アイシャ」
アルベルトがちらっとダウドに目配せ……、合図する。
「あ、チビちゃん、オイラと一緒にジュース飲みに販売機行こう!」
「きゅっぴ!ジュース♡」
ダウドがチビをバッグに入れ部屋の外に出て行った。
「……また、チビちゃんがいたら駄目な話……?」
「うん……、チビに聞かれたくないんだ……」
「アイシャ、あのおっさんな、タチの悪い密猟者組織を追ってる
らしいんだ、しかも一人で……、んで、最近ラダトームの近くにも、
厄介なのが潜伏してんだと……」
「そう、この近くにも……」
「でさ……、俺らもあのおっさんに協力する事にしたんだ、
死んだドラゴンの……、仇討ちになるか分かんねえけどさ、
そう思ってさ……、少しでもアホが減る様にな……」
「やりましょっ!そうよ!ぜーったい、……ぜーったい!
やらなきゃ駄目よっ!!」
「……アイシャ……?」
アルベルトが不思議そうな顔でアイシャを見た。
「いや……、今回はお前は駄目だ……、宿屋で待機だ……」
「ど、どうしてよ……!私だってドラゴンさんの仇討ち出来るのなら……、
私だって、い、一緒に戦うわよっ……!!」
「お前……」
身を乗り出し、アイシャがジャミルに抗議する。昼間と違い、
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 奇妙な出会い 作家名:流れ者