zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 奇妙な出会い
早速、宿にあの薄汚い身なりの子供が訪ねて来る……。
「はい?あら、可愛い坊や、何かご用ですか?」
それでも、優しいおかみさんは追い払う事はせずに子供と向き合い応対する。
「えっとね、昨日、ここの宿屋に密猟者追ってるおっさん来たでしょ?」
「ええ、いらっしゃいましたけど……」
「そうそう!おれ、その人と知り合いなんだよ!」
「まあ……、そうなの……、ちょっと待っててくれる?」
おかみさんはいそいそと中に引っ込んで行き、ジャミル達を呼びに行った。
(早速、上手くいったぞ、これで、おばちゃんがあの兄ちゃん達、
連れてきてくれるはずだ……)
「密猟者ハンターのおっさんの?知り合いの子供だって……?」
「ええ、そうらしいんです…、外でお待ちしていますよ」
そして、4人が宿の外へ出ると……。
「……よお」
「?……あ、お前!あん時のひったくりの糞ガキじゃねえか……!!」
「何しに来たんだよお!」
ダウドまで目くじらを立て怒り出す。
「わ!ちょっと、待ってよ!ここのおばちゃんからも話聞いてると思うケドさ、
おれ、あんた達が知ってる密猟者ハンターのおじちゃんと知り合いなんだよ!
今日は、おじちゃんから用を頼まれて……、あんた達の処へ来たんだよ!!」
「本当に……?」
「嘘臭いんだけど……」
ダウドが子供をじろじろ見た。アルベルトも疑いの眼差しで子供を見る……。
「本当なんだってええ!おじちゃんに頼まれたからわざわざ来たんだろう!」
「ご用は何なの?簡単に教えて……」
「アイシャ……」
小さな子供の面倒を見たりするのが好きなアイシャだけが、唯一、子供と
コミニュケーションを図ろうとする。
「姉ちゃん!話わかるう!この間はひどいことして、本当にごめんなあ!」
子供がアイシャに嫌らしくすり寄る。……子供はクンクンとアイシャの
匂いを嗅いだ。
(……うわ、いい匂いだあ……、石鹸の香りと、何とも言えない
ふわふわしたこの感じ……、なんか、母ちゃんみたいだなあ……)
「別にもういいわよ、けど、……もう悪い事しちゃ駄目よ……?」
「うんっ!」
「で、何頼まれたんだよ、早く言えよ……」
「……ああ、短足親父もいたんだ、忘れてたよ……、ひゃはは!」
「なっ!?だーからー!……俺は短足じゃねえっつってんだろ!!
親父も余計なんだ!馬鹿ガキーーっ!!」
「ジャミル……、通る人が皆見てるから……、それで、君も早く
要件を教えてくれる?」
ジャミルを押さえつけながら、アルベルトが子供に尋ねる。
「うん、ここじゃ何だから、出来れば兄ちゃん達の部屋でゆっくり話したいんだけど……」
「……どうする……?」
「チビちゃんがいるよお……?」
アルベルトとダウドは心配するものの、アイシャは動じず、子供に話し掛ける。
「……大丈夫よ、……その、密猟者を追っているって言う、おじさんの
知り合いなんでしょ?なら、心配ないわよ……」
「う~ん……?何だかなあ……」
ますます不満そうな顔になり、ジャミルが考える。
「中に行きましょ、お話聞かせてくれる?」
「うんっ!いこっ、姉ちゃん!」
アイシャが子供の手を取ると、子供も喜んでアイシャの手を握り返した。
……孤児の子供はアイシャに母性本能を感じたのか、彼女にはすっかり
懐いてしまった模様。
「……」
「ジャミル、面白くないんでしょ……?」
ジャミルの方を見てダウドが含み笑いをする。
「バカ言えよっ、あんなのいちいち相手にしてらんねっつーの!」
ブツブツ言いながらジャミルも宿屋の中に入る。
「嘘だよね……、絶対……」
「ねえ……、いらっとしてるよお、あれは絶対……」
そして、4人は子供をジャミル達の部屋に入れ、話を聞く事に。
「ねえ、あなた、お名前は?」
「えっ?おれかい?おれは、ペースケって言うんだ」
「プ、おもしれえ名前……」
「う、うるせーな……、短足!」
「……俺は短足じゃねえって何回言ったらわかんだっ!それに
ちゃんと名前があるんだよ!きちんとジャミルお兄様っつえ!判ったか!!」
「わかんねーよっ!うんこつんつんだ!」
ペースケは見た目、9歳ぐらいの感じだったが、ジャミルの
精神レベルが同様だった為、他のメンバーはやり取りに呆れる……。
ちなみに、チビはまだアイシャの部屋ですやすやお眠り中である。
「それで、さっきから言ってるけど、君の要件は……」
「ああ、それなんだけどさ、奴らが今潜伏してる場所が分かったんだって……」
「……本当かよ!?」
ジャミルが椅子からガタッと立ち上がり、身を乗り出す。
「わ……、ツバ飛ばすな……、これ、地図みたいだよ……、
おじちゃんから預かってきた……」
ペースケがジャミル達に地図を渡す。
「密猟者達がいる場所なのね?どこどこ!?」
「見せてよー!」
ダウド達も地図を覗き込む。
「えーと、此処が今ラダトームだから……、とすると、この方角だと、
北の洞窟がある方向か……」
「今じゃ、あそこ、魔王の爪痕って言われてるよお……」
「そこじゃないみたいだ、ほら……、其処の近くに家のマークがある……、
空家だろうか……、密猟者達が潜伏してるとなると……」
「成程、其処の空き家に隠れてんだな、奴ら……」
「やっぱり、行くんだねえ……、はあ、しょうがないか……」
ダウドが覚悟を決めた顔をした。以前に比べると、多少は行動に積極的に
なった様であるが、それでもヘタレ属性がないとダウドではないのである。
「おじちゃんは今夜、先に空家の近くまで行って皆を待ってるって言ってたよ……」
「そうか、……んじゃ、今日の夜決行だな……」
「うん、そうだね、夜に備えて色々準備しておかなきゃね……」
「ひえええ……、モンスターじゃないけど、久々の戦い、なんかドキドキだよお……」
「……」
アイシャが心配そうな顔でジャミル達男衆を見つめた。
「大丈夫だって言ったろ?、少し、力授かったくらいの三流密猟者集団なんか
ゾーマに比べたら、月とスッポンさ!」
「ゾーマ……?もしかして、あんた達、まさか、あの大魔王ゾーマを……?
た、倒したって言う……、勇者軍団……なの……?」
ペースケがおずおずとジャミル達の方を指差す……。
「何だ、今更か……、ま、もう皆忘れてんだけどよ……」
「うわあああああっ!」
(こ、こりゃ大変だ……!早くおっさんに知らせないと……!)
「何だよ、そのリアクション、おかしな奴だな……」
「……んじゃ、お、おれ……、これで一旦帰るよ……」
「ねえ、ペー君」
急いで戻ろうとしたアイシャがペースケに声を掛けた。
「え?ぺ、ペー……?」
「プッ……」
「なんだよ、笑うなよっ!短足!!」
「帰る前に、チビちゃんに会って行く……?」
「チビちゃん……?」
ペースケがきょとんとし、目を丸くする。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 奇妙な出会い 作家名:流れ者