zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 終わりなき戦い
(大丈夫、すぐに忘れさせてやる、チビはおれのモンだっ……)
「そーら!高い高いーだぞ、チビー!!」
「ペー……、やめてえええー!」
「なんだよ、お前、空飛べるんだろ?案外こわがりだなあ!ははっ!」
「ぴきゅ~……、あれ?」
「雨……か?」
「きゅぴい~、濡れちゃうよおお~!」
「大変だっ!チビ、この中に入れっ!」
「ぴい~……」
ペースケが慌ててチビをバッグに押し込める。
「さっきまで、あんなに天気良かったのに……、くそっ、どこか
雨宿りできる場所を探さないと……!」
雨宿り場所を求めて、ペースケは再び走り出した。そして、夕方になり、
漸く雨も止んだが……。
「本当に、大丈夫かよ、心配だなあ……」
チビの捜索はアイシャに任せる事となったのだが、
暴走アイシャにジャミルはどうしても不安が拭えない……。
「大丈夫っ!ママは強いのよ!絶対にチビちゃんを探してみせるんだから!」
「そら、強いのは判るけどよ……、怒れば女子プロ並みに……」
ジャミルがぼそっと呟いた。
「なあに?何かしら!ジャミル!?ねえねえねえっ!?」
「何でもねーですよ……」
「プッ……」
横を向いてアルベルトが吹く。
「それよりも、私は皆の方が心配よ、絶対、どんな相手でも油断しちゃ
駄目だからね……?特にジャミルは……、すぐ調子に乗るんだから……」
「わ、分ってるよ……、たく、心配性だなあ……」
「お互いさまよ、もう……」
あっちの方を向いてアイシャが顔を赤くした。
「気を付けてね、アイシャ……、大変な事になっちゃった分、オイラも
全力で頑張るから……」
相当責任を感じているのか、いつもとは違い、真剣な目でダウドが
アイシャを見つめた。
「うん、大丈夫よ、でも、あんまりダウドも自分を追い詰めちゃ駄目よ、
お願いね?」
「分ってるよお……」
「それじゃ、私、そろそろ行くわ!じゃあ……」
「気を付けるんだよ、アイシャも……」
「ええ、アルもジャミルとダウドをお願いね……」
それだけ言うと、アイシャは後ろを振り返らず一目散に
町の外へと駈けて行った。
「さて、俺らもそろそろ準備しねえと……、アイシャが抜けた分、
魔法の方はアルに任せっきりだけど、頼むな……」
「うん、さっさと終わらせてしまおう……」
そして、町の外に出たアイシャは……。
「そうよ、私がドラゴンになってみれば……、チビちゃんの気を
感じとれるかもしれない……、……ドラゴラム……!」
自身の姿をドラゴンに変え、気を集中させる……。
「感じるわ……、チビちゃんの気……?」
雨宿り場所にペースケが見つけたのは、かつて、あのサバイバル親子が
暮らしていた場所だった。今はどうやら親子は無事にラダトームに
戻っており不在で姿は見えずであった。
「きゅぴ~、お腹空いたよお~……」
「そうだな、朝から何も食ってないんだっけ、ごめんな、もう少し……」
「……やだ~っ!アイシャの作ったミルク粥食べたい、カップラーメン
食べたいよおーっ!!」
お腹の空いたチビが暴れ出し、ペースケに抗議する。
「いててて!お前、腹が減るとあばれだすのかよ、困ったなあ……」
「びーっ!びーっ!帰るーっ!!」
「も、もう……、暗くなってきたし、今日は無理だよ……」
(明日も戻る気ないけどさあ……)
「……何が、無理なの……?」
「ん?帰るのがさ……、……?げ、げっ!!」
「ぴい~!アイシャ!!」
漸く、二人の場所を探し当てたアイシャがペースケの前に突っ立っていた。
「な、何で……、姉ちゃん……、ここが……」
「何処にいたって絶対見つけるわよ……、私達はチビちゃんの
親なんだからっ!!」
「親……?」
「ペー君、おしりを出しなさい……」
「な、なんでだよ、嫌だよ……」
「……出しなさいっ!今すぐ早くっ!!」
「うげええええーーっ!!」
「出さないのならこっちから行くわよーっ!」
物凄い剣幕でアイシャがペースケに掴みかかった。そしてアイシャは
ペースケの半ズボンを下ろし半ケツをべしべしと、尻が赤くなるのにも
構わずしこたま叩いた。
「どうしてよっ!悪い事はもうしないって約束したでしょ!?」
「……いてててて、いてーよ!やめろったら、いてーっ!!」
「ぴい~、アイシャ……、もうやめて……」
「チビちゃん……?」
「これ以上、ペーのおしり叩いたら……、ペーのおしりが可哀想だよお……」
「わ、分ったわ……、私もつい、ムキになりすぎちゃった……」
チビに言われてアイシャが漸くペースケの半ケツから手を離した。
「はあー、助かったあ……」
「ペーのおしりさん、いい子いい子ね……」
チビが赤く腫れたペースケのおしりを優しく撫でた。
「チビい~、嬉しいけど……、ケツの方心配されてんのかあ?おれ……」
大苦戦……
「チビちゃんも、ペー君も……、お腹空いてるでしょ?
これ、おかみさんが作ってくれたロールサンドの残りだけど……、
はい……」
「きゅぴ~っ!」
チビは美味しそうにロールサンドに被りつく。
「お、おれも……?食べていいの……?」
「うん、どうぞ、ハンカチも持ってきたから、食べる前には
ちゃんと手を拭いてからね」
「へ、へへ……、ありがとう……」
「美味しい?」
アイシャはペースケの隣に座り、頬杖をついてペースケの顔を
覗き込んだ。
「うん、凄くうまいよ!」
「良かった……、今度、宿屋のおかみさんに会ったら、ちゃんと
お礼を言ってね?」
「う、うん……」
「前はこのほこらにね、ちょっと変わった親子さんが住んでいたのよ?」
「す、住んでたの?こんな、せまっちい場所にかい?」
「うん」
「はあ~、色んな奴らがいるんだねえ……」
「ぴいい~、チビ、ねむねむ……、ぴきゅ……」
「あら?チビちゃん……?」
「zzzz」
やっとアイシャに会えて安心したのか、まだロールサンドも
食べ掛けのまま、チビが眠ってしまった……。
「本当に、まだまだ赤ちゃんなんだから、チビちゃんたら……、
それにしても最近よく眠るわね……、又大きく成長する
前兆なのかしら……」
「でも、おれ……、さっき、凄くうれしかったんだ……」
ロールサンドを食べる手を止め、急にペースケが
ぼそっと喋り出した。
「今まで、おれの事、邪魔にするやつらは沢山いたけどさ、
本気で怒ってくれる奴なんかいなかったから……、だから……、
凄くうれしかったんだ……」
「ぺー君……」
「姉ちゃん、おれ……、もう悪い事本当にしない……、だから……、
奴らの事、全部話すよっ……!!」
そして、ジャミル達男衆は密猟者組織との
戦いの場へと……。
「結局、あの親父……、あれから宿屋に来なかったなあ……」
「でも、空家の近くで待っててくれるんでしょ?」
ダウドが不安そうな声をだした。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 終わりなき戦い 作家名:流れ者