zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 英雄達の帰還
「ごめん、やっぱりまだ駄目みたいだ……」
アルベルトが落ち込み、下を向いてしまった……。
「お~い、さっきのは俺だけ……、わざとじゃねえのか……?」
「ごめん、そうかも知れない……」
「……真顔で言うなよっ!!」
「ごめん……」
「やっぱり何処か具合悪いのね……、本当に少し休んだ方が
いいかもしれないわ……」
元気を無くして落ち込んでしまったアルベルトをアイシャが慰める。
「きゅぴ……、チビ……、何だかねむねむ……、ふわあ……」
お腹がいっぱいになったチビがうとうと……、トロトロしだす。
「チビちゃん、眠くなっちゃったのね……、よしよし……」
アイシャがチビを抱き上げ、優しく背中を撫でた。
「さっき言った通り、今日はレーベで休もうや、アルも
ちゃんと身体休めろよ」
「うん……」
そして、もう暫く歩いて日も暮れかけた頃にレーベヘと辿り着く。
都会の宿屋とは比べ物にならない程の相変わらずの小さな宿だったが
4人は其処で一晩休ませて貰う事にした。
「……部屋数も少ねえから、此処は今回も皆一緒の部屋だな」
「私、別に平気よ、前も泊まった事あるものね」
「はあ、何かすっかりふりだしに戻ったねえ……」
ベッドに大の字になりながら寛いでダウドが呟く。
「ま、それもいいんじゃね?道中はもうモンスターの心配は
しなくていいんだし……」
「僕、ちょっと外に出てくるよ……」
「アル……」
アイシャが心配するが……。アルベルトは笑って答える。
「大丈夫、外の空気を吸いたいんだ、此処は山に近い
場所だからね……」
「暫く一人にさせてやれや……」
「うん……、そうね……」
……アルベルトは一人、宿屋の外に出て、村の中を歩いてみる。
「本当に静かな所だな……、人もあんまりいないし……、
凄く落ち着くよ……」
「ふぉふぉ、お兄さん、夕方のお散歩ですかな?」
剥げた頭のお爺さんがアルベルトに声を掛けた。
「あ、どうも……、……あの?何処かでお会いした様な
気がするんですが……?」
「ふぉ?……おお、あんたはあの時の……、確か、わしに
魔法玉の依頼に来た……、眉間に皺の寄ったお兄さん……、
じゃったかのう?」
「え?ああっ、……魔法玉職人のお爺さんでしたかっ、お久しぶりです、
その節は本当にお世話になりました!」
アルベルトが手を差し出すと、お爺さんも喜んで手を握り返す。
「ふぉふぉ、どうでしたか?玉はお役に立ちましたですかのう?」
「はい、お蔭さまで……、僕ら、無事にロマリア大陸へ
渡る事が出来ました、本当に有難うございました!」
「ふぉふぉ、それは良かった……、ところで、あんた、
ちと頼まれてくれんかのう?」
「はい?」
「これから、ちょっと、このじじいのお茶のみ相手になって
貰えんじゃろうか……、最近、茶飲み友達の近所のばあさんが
ぽっくりいってしまってのう、玉には誰かと話をしたいんじゃよ、
あんたみたいな若い人とも話がしてみたいんじゃが……」
「あ、僕で宜しければ……、お相手を……」
「そうかそうか、んじゃま、うちまで来んさい!ふぉふぉ!」
(ちょっとした、気分転換になるかもしれないな……)
そう思いながらアルベルトはお爺さんの後を付いて行った。
心開けば
アルベルトは魔法玉職人のお爺さんの家にお邪魔した。
「さあ、飲みなされ、熱いうちに……」
「はあ、どうも……」
……出された緑色のお茶をアルベルトが不思議そうに眺めた。
「あの、これはお茶ですか?随分色が濃いですけど……」
「緑茶じゃよ、飲んだ事はないかの?」
「初めてです、……僕は主に紅茶しか飲んだ事がないので……」
「なら、尚更触れてみると良い、ささ、ぐぐっと……」
「はあ、頂きます……」
アルベルトがお茶に口を付けた。
「……どうかの?」
「何だか……、渋い様な……、不思議な味がしますね……、
……こんなお茶もあるんですね……」
「ふぉふぉ!」
「でも、不思議です、このお茶を飲んでいると……、何だか
気持ちが落ち着いて……、とても心がほっとします……」
「そうかそうか、もっと飲みんさい、飲みんさい!茶が冷めんうちに」
「有難うございます……」
「ほれ、茶菓子も有りますぞ、食べんさい、食べんさい、遠慮なさらず」
「はあ、これはまた、変わったお菓子ですね……」
「温泉まんじゅうですじゃ」
お爺さんが勧めてくる不思議なおもてなしにアルベルトは
首を傾げっぱなしであった……。
「処で、お前さん、やはり玉に眉間に皺が寄っておるが……、
何か悩みでもあるのかの?……そう言えば以前にわしが
言った事は覚えておるかの?そんなに思いつめては
いつかお主自身の身体に支障をきたしてしまうと……」
「え?ええええっ!、こ、これはその……、なんて言うか…、
色々何かあると、つい、考えてしまう癖というか、その……、……」
アルベルトが思い出し、はっとする……。確かに初期に
レーベの村で、このお爺さんが自分の事を心配してくれた事が
あったと……。
「まあ、あまりじじいも詳しい事は聞かんよ、わしには何も
相談に乗ってやれんからのう……」
「はあ……」
「じゃが、折角来て貰ったんじゃ、沢山お茶は飲んで
行ってのう、ほれほれ」
「ありがとう、ございます……」
「おや、茶っぱがもう無くなったのう、新しいのを入れんと……」
お爺さんが立ち上がろうと腰を上げるが……。
「ッ……、あたたたた!」
「……お爺さん、大丈夫ですか!?」
アルベルトが慌ててお爺さんに駆け寄る。
「ちょいと腰に来てしもうた……、ぎっくり腰じゃ……、
あたたた……」
「これくらいなら、ホイミで何とか、でも……、今の僕は魔法が……」
困った事になってしまったと、アルベルトは自分の
手のひらを見つめた。
「いだだだだ……、いだ……」
「と、取りあえず、今ベッドに運びます……」
急いでお爺さんをそっとベッドへと移した。
「まいったな、こんな時間じゃもう……、道具屋はまだ
開いているだろうか……?」
「……ウ~ン……」
「お爺さん、僕、道具屋を見てきます、ちょっと待ってて下さいね……、
薬草を買って来ますから!」
アルベルトが外に出て急いで道具屋に向かうと、丁度
ジャミルとばったり出くわす。
「アルっ、何してんだよ、散歩にしちゃやけに遅いからさ、
どうしたもんかと……」
「ジャミルっ!ごめん、探しに来てくれたんだ、……実は
かくかくしかじかで……」
アルベルトは今までの出来事をジャミルに説明する。
「そうか、あん時の魔法玉爺さんがね、ふ~ん、ホイミぐらいなら
やってやるよ、たかがぎっくり腰にべホマを使うのは嫌だけどな……」
「有難う、ジャミル!助かる……」
ジャミルを連れ、もう一度お爺さんの家へ……。
「いだだ、いだ……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 英雄達の帰還 作家名:流れ者