zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 懐かしき人々と・1
「……困ったわねえ……」
「はああ~……」
終いには、4人揃って困って揃って溜息をつく……。
「どなたか、いらっしゃるのですか……?」
其処へ、サブリナがドアを開けて外に出て来た。
「あ、サブリナさん!こんにちは、お久しぶりね!」
女同士、アイシャが率先して挨拶する。
「アイシャさん……?それに皆さんも……!ああ、お会いしたかった……!」
カルロスと全く同じモーションでサブリナがアイシャの手を
喜んで握った。
「少し、皆でお邪魔していいかしら?お話したいの……」
「どうぞどうぞ、お時間があるのでしたら、少しなんて言わずに……、
上がって下さい!」
4人は今度はサブリナの言い分を聞きに、家の中へと……。
「きゅぴっ!チビでーす!」
そして、チビもサブリナに初めましてのご挨拶。
「まあ、可愛らしいわ……、お喋りするドラゴンの子供なんて……」
サブリナが嬉しそうにチビを抱っこすると、チビもパタパタ尻尾を振った。
「色々あってさ、育ててるんだ、たく、我儘で屁ばっかりこいて
どうしようもねえけどよ……」
「ぎゅぴーっ!ジャミルのバカ!」
「……いえ、子供は我儘を言うのが当たり前……、子供……、子供……、
……あああ……、赤ちゃん……、ううう……」
「サブリナさんっ……!?」
チビを抱いていたサブリナが突如泣き出してしまい、4人は
大いに慌てる……。
「きゅぴ~、お姉さん、泣いちゃ駄目だよお、いい子いい子……、
ね?」
「ううう~……」
チビがサブリナをナデナデするが、余計辛くなったのか……、
大泣きに変わる……。
(こりゃまたマジで偉い事になったなあ……、ちゃんと元の鞘に
収まるんだか、収まらねんだか……)
雨のち晴れで仲直り
サブリナはひくひく泣きながら暫くチビを撫でていたが、落着きを
取り戻して漸く嗚咽を止めた……。
「……すみません、取り乱したりして……、ぐすっ……」
「辛いのは分かるわ、酷いよね、カルロスさんも……」
「……あ、あの人の所へ行ったんですか……!?……あああ!い、一体
あの人に何を吹き込まれたんですか!!」
チビから手を放して、急にサブリナが豹変しだした……。
「おい、サブリナ……、あんたもすげえな……」
「きゅぴ~、怖いよお……」
「チ、チビちゃん、こっちへいらっしゃい!」
チビは慌ててアイシャの膝元へと飛んで避難する……。
「とにかく、落ち着いて下さい、サブリナさん……」
アルベルトが宥めるが、サブリナは怒りが収まらない様子であった……。
「これが落ち着いていられますかっ!がうおーー!」
「……遂に怪獣になっちまったよ……」
「もう、止めようがないよお、ほっとこうよお……」
「ダウド!二人をこのまま放っておけって言うのっ!?
駄目よ、そんなの!」
お節介アイシャが身を乗り出しダウドに抗議する。また
始まりやがったとジャミルは頭を抱えた……。
「……」
「サブリナさん……?」
何かを思いついた様にサブリナが急に立ち上がった。
「あの人の所へ……、行ってきます……」
「おいおいおい、まさか……、一戦交える気じゃねえだろうな……」
「……ジャミルったらっ!」
「いいえ、置いてある私の荷物を取りに行くだけです、どうぞお気になさらず
皆さんはごゆっくりなさって行って下さい……」
「ちょっと待って!サブリナさ……」
バンッ……!!
アイシャが止める間もなく、勢いよくドアを閉め、サブリナが外に出て行く……。
「サブリナさんも結構凄かったんだねえ……、お淑やかな人かと
思ってたんだけど……、人は見掛けによらないねえ……」
「ダウド、駄目だよ……、そんな事を言っては……」
「サブリナさんっ、待って!」
アイシャも慌ててサブリナを追って外に飛び出す。
「……」
外に出ると、サブリナが庭先でお腹を抱えてしゃがみ込んでしまっていた。
具合が悪そうである。
「サブリナさん、大丈夫?何処か具合が悪いの……?」
「……気持ち……悪い……の……、ちょっと怒鳴ったら……、
何だか……」
「大変だわ!早くお家の中に戻りましょっ!」
「あの人と仲違した後に……、体調を崩してお医者さんに
行ったの……、そしたら……、何だかやたらと情緒不安定に
なるのも……、怒りたくなるのも……、多分……、うっ……」
「……サブリナさん、あなた、もしかして……」
「そうよ……、いるのよ……」
サブリナが愛おしそうに自身のお腹を摩った。
「尚更大変じゃないっ!!あ、あああ……!!みんな、みんな~っ!!」
アイシャが慌てて野郎に知らせに中に戻って行った。……サブリナを
どうにかベッドへ寝かせ落ち着かせるが、こういう事に疎い
男衆はどう対処していいのか判らず困って、3匹揃って猿の様に
ポリポリ、頭を掻き掻き……。
「サブリナさん、大丈夫?勝手にお台所借りちゃったけど、
ミルクを温めたわ、はい……」
「ありがとう、アイシャさん……」
サブリナが美味しそうにミルクに口を付ける。
「きゅぴー、チビも~……」
お腹が空いたのか、サブリナのミルクを飲む姿を見て
チビがパタパタ尻尾を振った。
「はい、チビちゃんにもおすそ分けよ、こぼさない様にね……」
「きゅっぴ!」
チビもコップを借りてミルクを飲む。その姿にサブリナが
笑みを浮かべた。
「……可愛いわ……、もしも産まれて来たらこの子も
こんな風にミルクを飲むのね……、でも……」
「サブリナさん、今はあまり何も色々考えないのよ、
身体に障るわ……」
そう言ってアイシャがサブリナの毛布を掛け直した。
「でも、私……、あの人と暫く離れてみて分かったの……、
私はやっぱりあの人が好き……、カルロスがいない毎日なんて
耐えられない……、彼と別れてしまうぐらいなら……、いっその事、
もう覚悟してこの子を下ろすわ……」
「だ、駄目よっ、そんなの……!絶対駄目っ!!」
千手観音の様に横に手を広げ、アイシャがバタバタ手を振る。
「カルロス……、カルロス……、会いたい……」
(こりゃ、また典型的にバカップル度が増したなあ……、
今に始まった事じゃねえが……)
と、ジャミルが心で呆れてみる。
「ねえ、皆も何とか言ってあげてよ……!このままじゃ……」
頭を掻いていたモンキートリオがふと我に返る……。
「サ、サブリナさあん、駄目だよお……、やっと授かった
大事な命でしょ?……オイラも反対だよ、……よくないよ、
そんなの……!」
「本当に落ち着いて、冷静になって下さい……、僕ら、カルロスさんの
話も聞いてきましたが彼の方も決して子供が欲しくないと言う訳では
なさそうでしたよ、ただ、迷いはまだあるようでしたが……」
ダウドとアルベルトも必死でサブリナを説得するが……、
サブリナは俯いたまま、ぽつりと言葉を洩らす。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 懐かしき人々と・1 作家名:流れ者