zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 懐かしき人々と・2
「いや、そうじゃねえんだけど、ほれ……」
ジャミルが後ろに隠れていたポポタを押しこくった。
「……」
「ポポタ、どうしたんじゃ?」
「おじいちゃん、……僕、お兄ちゃん達と冒険するの!」
「駄目だって言っても聞かねんだよ、一応、じいさん達の許可を
取れって言ったんだけど……」
「何と!ご迷惑をお掛けしまして……、ポポタ……、ジャミルさんを
困らせてはいかんぞ」
しかし、ポポタは爺さんの言う事を聞かず、返事を返した。
「行っていい?おじいちゃん」
「駄目じゃよ……、皆さんのお邪魔になってしまうじゃろう?」
「……やだやだやだ~っ、行くんだ行くんだ~っ!!」
「おいおい……、困ったな……」
泣いて暴れ出したポポタと爺さんを交互に見比べるジャミル。
「……いい加減にしなさい!第一、お前の父さんと母さんがどれだけ
心配すると思っとる!!」
普段の、のほほんとしたじいさんからの様子からは考えられない程、
今日はポポタを強く叱った。それでもポポタは泣き止むのを止めない。
相当ずっとこの日を待っていたんだろうなと、ジャミルにもポポタの
気持ちは痛いほど伝わって来たのだが……。
「あの、どうかしたんですか……?」
騒ぎを聞いてすでに床についていたアルベルト達も客室から出てくる。
「実はよう……」
「成程、そういう事か…、うーん…」
腕を組んでアルベルトが考えだした。こういう時、アルベルトは
頼りになる。……困った時のアル頼みである。ジャミルはアルベルトの
答えに期待するしかなかった。
「モンスターの心配はないけど、万が一の事があったら心配だしね……、
まだポポタは小さいんだし、無理よ……」
「……困ったねえ、ふぁ……」
アイシャも困り果て、急に起こされた為、眠くて仕方ないと言う様に
ダウドが欠伸した。
「じゃあ、こうしたら?完全に僕らと一緒に冒険に連れて行くのは
無理だけど……、一日だけの社会科見学と言う事にしたらどうかな?」
「あー……?」
さっぱり分からんと言う様にジャミルが首を傾げた
「僕らの船で、ポポタを連れて近場まで回るんだよ、村からあまり
遠くならない距離の範囲で、それなら、村長さんもご両親も安心だろ?」
「そうか、成程な……」
「しかし……、ご迷惑をお掛けしてしまうのでは……」
「ちゃんと、俺達の言う事聞けるよな?大丈夫だろ?」
「う、うんっ!」
「よしっ、決まったな、じゃあ明日連れてってやるから、早く寝ろよ」
「はあーいっ、お休みなさーい!」
ポポタは喜んで部屋に走って行った。取りあえずはこれで
どうにか収まりそうであった。
「本当に、申し訳ありません……、では、ポポタの両親にはわしから
話しておきますよって、我儘な孫ですが、何卒宜しくお願い致します……」
「ああ、俺達に任せてくれよ、爺さん!」
そして次の日、ポポタと一緒にスラリンも久々にジャミル達の船に
乗る事になった。
「ピキー!お船、久しぶりー!」
「また、スラリンと一緒にいられて嬉しいわ!」
「お姉ちゃん、ボクもー!!」
アイシャとスラリンがハグで抱き合う。そこにチビが割り込み無理矢理
アイシャに抱かってきた。
「きゅぴぴぴー!」
「はいはい、ちゃんとチビちゃんもね……」
「やれやれ、マジで幼稚園かっつーの……」
「ジャミルさん……」
「あ、はいー?」
仕事に行く前に、ポポタの両親がジャミルに声を掛けてきた。
「本当に、うちの息子がご無理を申しまして申し訳ありません、
……息子をどうか宜しくお願い致します……」
「大丈夫だよ、暫くの間、こっちもポポタを責任もって
預からせて貰うよ」
「お兄ちゃん、早く行こう!」
早く船に乗ってみたくて待ちきれない様子でポポタが
ジャミルを引っ張る。
「ポポタ、くれぐれも……、皆さんに迷惑を掛けるんじゃないよ、
分ったね……?」
「平気だよ、パパ、ママ、行ってきまーす!」
ポポタが元気に両親に手を振る。その背中を心配そうに両親が見送った……。
「うわあ、凄いねー!この船早ーい!!うわーっ!!あ、魚が跳ねたよーっ!」
何もかもが初めての経験にポポタは大騒ぎであった。
「ポポタ、凄く楽しそうだねえ」
「ああ、乗せてやってよかったな」
「きゃーっ!凄い凄ーい!……あ!」
「……こ、こら!あぶねっ!」
興奮したポポタが縁から身を乗り出し過ぎ、海に落ちそうになるが
慌ててジャミルが支えて止めた。
「ふう……、危ねえから気をつけろよ、頼むよ……」
「えへへ、ごめんなさーい、あ、あれなんだろう!スラリン、
行ってみよう!」
「ピキー!」
ポポタがまた甲板を走り回る。……見守っている保護者代理の
皆様達はハラハラドキドキモンである。
「おーい、頼むよー、本当に……、じっとしててくれー……」
「……チビ、そろそろうんちの時間……」
「また始まったーっ!アイシャーっ!!」
一時的だが、ポポタが加わった事で、更にPTは騒動で
やかましくなるのであった……。
「……はああ~……」
「ねえ、ジャミル、大丈夫……?」
疲れ、しゃがんでしまったジャミルをダウドが心配そうに見つめた。
「大丈夫っちゃ大丈夫かも知んねえけど、……お騒がせ者が
もう一人増えたからな……」
「何、その、お騒がせ者って……」
「♪~」
ジャミルはダウドから顔を背け口笛を吹いて誤魔化す。多分、
ダウドとアイシャの事であるが、ジャミルも充分お騒がせ者である。
「……」
アルベルトは我関せず、呑気に読書タイム。
「皆、お昼休憩タイムにしましょ?おにぎり作ったから……」
アイシャがお茶とおにぎりを甲板まで運んで来た。
「おー、腹減ったーっ!ムスビなら安心だしな!」
「……何よ、失礼しちゃうわね!私の作る物は心配ないわよ!ぷんっ!」
「きゅぴー」
「ピキー」
「うわあ、……もうムオルがあんなに遠くだあ……、僕……、
生まれて初めて本当にムオルを出たんだあ……」
「さあ、おチビさん達も……、ご飯にしましょ?」
「はーいっ、アイシャお姉ちゃん!」
「うふっ!」
午後になり、チビ、スラリン、ポポタのお子様軍団は船室で
昼寝タイムに入り船内は火が消えた様に静かになり、保護者代理の
皆様も漸く一息つけそうであった。
「何か、申し訳ねえかな……」
「ん?」
「もっと本格的な冒険をさせてやりたいんだけど……、何かあったら
困るしなあ、けど、折角の機会なんだし……」
「子供は何だって、冒険になるんだよ、初めて見る物、触れる物……、
経験した事、きっとそれはこの先、ポポタが大人になっても生涯
忘れられない宝物になるんだと僕は思うよ……」
「そうだな、ずっと……、覚えててくれるといいな……」
「……やられたよおお~……」
と、其処へダウドがフラフラしながら甲板に上がって来た……。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 懐かしき人々と・2 作家名:流れ者