zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 光と闇
闇の国の使者は突然、ジャミルの前から姿を消す……。
「……んだよ!人を置いていくなっつーの!あー、もーーっ!!」
急いでジャミルもルーラを唱え、闇の国の使者の後を追い、
アリアハンへと戻る……。
「……も、もう少し……、もう少しで……、オイラ達だけで……、
ダークドラゴン、倒せるよお……」
自分達の力でダークドラゴンを倒す事が出来る……、興奮と喜びで
ダウドが震えだす……。ダークドラゴンはもう力尽きる寸前であり……、
身体もチビと同じくらいの大きさに戻っていた……。
「おーおー、やれやれー!おめーらどんどんやっちまうりゅよーっ!
たらたらしてんじゃねーりゅーっ!!」
「……」
「チビ……?」
アルベルトは複雑そうな表情で小悪魔に抱かれたまま……、苦しんでいる
ダークドラゴンをうっすらと見つめているチビの様子に気づく……。
(もしかしたら……、チビは……)
「……!!りゅーーっ!!」
「……きゅぴ……」
「ハア……、くそっ、小賢しい真似を……」
もう少しの処で突如、小悪魔とチビの前に闇の国の使者が出現する。
「……チビちゃんっ!リトルっ!!」
「今、助けるよっ!!」
「……ど、何処まで邪魔するのさあ!!」
「……貴様ら……、近づくな……!少しでも動いてみろ……、今すぐにでも
こいつらを殺すぞ……、こんな奴ら……、下級魔法でもすぐに殺せる……」
闇の国の使者は苦しそうに息を切らしながらも、鋭い眼光で小悪魔と
チビを睨みつける……。
「……リトルっ!チビちゃん!!やめなさいよっ!!卑怯者……!!」
「なんりゅーっ!!バ、バカ猿は……まだ帰ってこないのりゅーーっ!
本当にどうしたのりゅーーっ!!」
「……ち、近づくなって言ってる間に……、もう殺そうとしてる
じゃないかーっ!!」
「……邪魔だ……、光はどうしても……、邪魔なんだーーっ!!」
「!?」
闇の国の使者はアルベルト達3人を水晶の結晶の中に封じ込める。
「其処で大人しくしていろ……、この屑ドラゴンを殺したら……、
次はお前達の番だ……」
「……駄目っ!!そんな事させないんだからっ!!」
「えいっ、えいっ、えいっ!!」
アイシャが自身の杖で水晶をガンガン叩き、アルベルトがありったけの
魔法をぶつけ、ダウドも足で蹴っ飛ばし、炎のブーメランをぶつけて
みるものの……、3人を硬く包んだ結晶はびくともせず、どうする
事も出来ない……。
「りゅ、りゅ、りゅ……」
「どけ、ゴキブリめが……、さあ、早く光を渡すんだ、……早く……」
闇の国の使者は小悪魔にどんどん迫り……、小悪魔はチビを抱いたまま
後ずさりする……。
「バ、バカドラゴンは……、絶対……、渡さんりゅよ……、
来るならこいりゅ……」
「……リトルっ、早く逃げてーっ!!」
「りゅっ?りゅーーっ!!」
「……リトルーーっ!!」
アイシャが必死で小悪魔に逃げる様に呼び掛けるが、闇の国の使者は
無理矢理小悪魔からチビを掴み、ひったくると、小悪魔だけを遥か遠くに
ほおり投げた……。
「きゅぴ……、駄目……、リトル……いじめちゃ……駄目だよお……」
「フン、邪魔ばっかり入るよ……、けれど、漸く……、フ、フフフ……、
やっとお前を始末出来る時が来た……、お前だけは……」
闇の国の使者はにやりと笑うと……、静かに手をチビの首に掛けた。
「やめてよーーっ!やめろおおおーーっ!!」
「チビーーーっ!!」
「……嫌、嫌よ……、このままじゃチビちゃんが……
本当に殺されちゃう……、……助けてお願い……、
……ジャミルーーーっ!!」
「ジ……、エンドですね……、お疲れ様……でした……」
「……ジエンドは……てめえだああーーっ!!」
「が……、は……?っ……!!」
チビを絞め殺そうとした闇の国の使者が……突如蹴り倒され、
闇の国の使者はもんどりうって地面に倒れるが……、転がった
体制になろうとも、その手は強くチビの首を掴んだまま
放そうとしない……。
「ジャミルっ……!!」
アルベルト達が水晶の中から揃って歓喜の声を上げた。
「……くっ、き、貴様……、何処まで邪魔をする気だ……、
くそっ……!」
「……はあ、アリアハンまで飛んだつもりが……、焦って違う場所に
飛んじまった……、本当、アホだな、俺……、けど、どうにか間に合って
よかった……」
「……ジャミルっ!……遅いわよ、もうっ、バカバカバカっ!!
……ふえええ……」
「無事で良かった……、本当に……」
「全くもう、毎回毎回……、毎度毎度……、心配ばっかり掛けて……、
しょうがないなあ……、ぐすっ……」
ダウドが無事なジャミルの姿を見、安心した様に目頭を擦った。
「皆っ!遅くなってごめんな!待ってろ、すぐに此処から
出してやるからな!」
「僕らの事は大丈夫、それよりも、チビの事を……、どうか……」
「アル……、アイシャ……、ダウド……」
アイシャとダウドもジャミルの顔を見て、こくっと頷く。
「……信じてる、ジャミル……、絶対にチビちゃんを助けて……!!
そして、この世界の光を取り戻して……」
「……ジャミルう……、チビちゃんを必ず助けてあげて……、
お願いだよお……」
「分ってる!それにしても……、お前らのその恰好……、何だ?」
「チビちゃんが……、ルビス様から授かった聖なる力を私達に……」
「そうだったのか……、俺も……、ルビス様とチビの心が……、
俺に呼び掛けてくれ、力を送ってくれた……、もう一度……、
この姿になる事が出来たよ……」
「ねえ、ジャミル……、チビちゃんに魂を託してくれたって事は……、
ルビス様はもう……、死んでしまったの……?」
「ダウド、それについては……、全てが終わったら話すよ……」
「……フフフ、感動の再会などしている暇はありませんよ……」
「てめえ……、よくもチビを……、やっぱり、……迷ってる場合なんか
じゃなかったな……、……俺の悪い癖だ……、チビ、辛い思いさせて
ごめんな……、待ってろよ!!」
ジャミルはそう言うと、再び王者の剣を鞘から抜く。
「……ジャミル……、来てくれたよお……、チビの……大好きな……
ジャミルだあ……」
首を掴まれた体制のまま……、目線はジャミルの方を向き、チビが
小さく微笑んだ……。
「終わりです……、此処ですぐにこの光を消してしまえば……、全てが
終わるのです……、この世界からは永久に光が失われます……、よもや
光が戻る手段はもう無くなる……、ふ、ふ……、ふふふ、……何です?
その目は……、僕を馬鹿にしているんですか……?僕は本気ですよ……、
……今すぐその野蛮な剣を捨てなさい……、で、ないと……、殺すスピードを
速めますよ?もっとも、殺してしまう事には変わりないんですが……」
「や、やめろっ……!!てめええっ!!」
闇の国の使者の手が……チビの首を掴んだ手にぐっと力を込める……。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 光と闇 作家名:流れ者